弁護士法人小杉法律事務所|交通事故被害者側損害賠償請求専門特化

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【死亡事故】

加害者側の示談提示0円⇒弁護士の交渉により1億4000万円。刑事裁判に被害者参加し、民事の過失割合0:100に。

Aさんは、同僚らと共に道路を横断していたところで、四輪車にはねられてしまいました。
四輪車の運転手の人が保険に入っていなかったことから、Aさんの奥様はどうしたらいいのか分からず、弁護士を探すことにしました。

解決事例のポイント
  1. 加害者側の示談提示0円⇒弁護士の交渉で1億4000万円の示談解決
  2. 刑事裁判に参加し、加害者の脇見運転を認定させ、民事の過失割合0:100に
  3. 遺族の悲しみ苦悩を刑事裁判で認定させ、民事で死亡慰謝料裁判基準以上の金額を獲得
  4. 加害者無保険のため保険金請求を駆使
  5. 刑事裁判の被害者参加で求刑どおりの判決獲得
  6. 被害者死亡前の慰謝料や休業損害なども獲得

相談前(交通事故の内容・加害者側無保険の事故)

Aさんは、同僚らと共に道路を横断していたところで、四輪車にはねられてしまいました。四輪車の運転手の人が保険に入っていなかったことから、Aさんの奥様はどうしたらいいのか分からず、弁護士を探すことにしました。

法律相談(加害者側無保険の場合の対応の仕方・人身傷害保険金請求)

加害者の方が保険に入っていなかったということなので、その場合の対処法について説明しました。
加害者無保険のケースで、もっとも効果的な被害者側の手段というのは、人身傷害保険金請求(無保険車傷害特約)の利用です。これは、加害者無保険のケースで、被害者の方に後遺障害等級の認定がなされた場合や、被害者の方が死亡してしまった場合に、被害者の方が付けている保険会社に対して、加害者の方が対人保険に入っていたのと同様の無制限の保険金請求をすることができるという内容のものです。

今回Aさんは歩行中の事故でしたが、車に乗っていなかったとしても、人身傷害保険が使えることはあります。
Aさんの奥様に、法律相談前に保険証券を持参するようお願いしておりましたので、法律相談の際に保険の対象となるかどうか確認してみたところ、対象となることが判明しましたので、人身傷害保険金の請求をしていくという方針で進むことにしました。
これで、治療費や休業損害が支払われますので、Aさんの奥様が治療費を立て替える必要もなくなりますし、Aさんが入院生活のためにお給料が入らなくなることに対しても休業損害で補填されることになります。

刑事裁判 佐賀地方裁判所(求刑どおりの判決)

1.Aさん死亡後の打合せ(刑事裁判への被害者参加)

Aさんは、入院生活を続けていましたが、交通事故から半年程度経ったところで、お亡くなりになられてしまいました。
Aさんの奥様は、会話もうまくできないほどに落ち込んでしまい、無気力の状態が続きましたが、コミュニケーションを取り続けたことによって、なんとか会話ができるようにはなりました。

捜査担当検察官と話したところ、起訴予定だということだったので、刑事裁判に参加するかどうかAさんの奥様と協議しましたが、どのような交通事故で夫を亡くすることになったのか真相を知りたいとのことでしたので、佐賀地方裁判所の刑事裁判に被害者参加するという方針を採ることにしました。

2.刑事裁判被害者参加前の準備

担当検察官から起訴状や証拠の開示を受け、被告人質問(刑事訴訟法316条の37)や論告意見(刑事訴訟法316条の38)作成の準備に取り掛かります。
また、Aさんの奥様には、心情意見陳述(刑事訴訟法292条の2)をしてもらいますので、Aさんと出会ったころの写真であったり、Aさんとの思い出の品を事務所にお持ちいただき、出会いから結婚、出産などAさんが交通事故に遭われるまでのエピソードについてお伺いしました。
また、現在の心境や、加害者への気持ちなどもお伺いしました。

お伺いしたエピソードや現在の心境、加害者への気持ちなどをこちらで文章にまとめ、細部を奥様と練って心情意見陳述書を完成させました。

3.刑事裁判

①被告人質問(刑事訴訟法第316条の37)Aさんの奥様は事故の真相を知りたいとおっしゃっておりましたので、どのような事故であったかの真相究明に力を注ぎました。被告人質問は通常は弁護人と検察官が行うものですが、刑事裁判への被害者参加を行う場合、遺族やその代理人弁護士も行うこともできます(刑事訴訟法第316条の37)。担当検察官は自由にやらせてくれる人だったので、こちらで主導的に被告人質問を行いました。

なお、証人尋問と異なり、情状に関する事項のみならず、犯罪事実に関する事項についても質問をすることができます(刑事訴訟法第316条の36第1項対照)。
被告人にとって前方の視界は良い事故現場でしたので、なぜ事故を起こすことになってしまったのかを丁寧に質問していったところ、事故の前は、エアコンパネルの操作をしていて、前方を見ていなかったということが判明します。

②心情意見陳述(刑事訴訟法第292条の2)事前に打ち合わせた内容の心情意見陳述書を奥様に法廷で読み上げてもらいました。Aさんがお亡くなりになられた後は、会話ができるような状態ではなかった奥様ですが、法廷では証言台の前に立って、しっかりと意見陳述をしてくださいました。

③論告意見(刑事訴訟法第316条の38)被告人が前方を見ずに走行していた距離などを丁寧に説明し、被告人の過失の重大さや、被害者であるAさんに落ち度がなかったことを中心に意見陳述を行いました。

④判決(求刑どおり)以上の被告人質問や論告意見を踏まえ、被害者側に落ち度がなかったことや、被告人に脇見があったことを認定してもらうことができました。
また、心情意見陳述の内容を踏まえ、遺族の悲しみや苦悩は想像を絶するとの認定を受けることができました。

示談交渉(人身傷害保険金請求で1億4000万円の示談解決)

人身傷害保険の保険会社の担当者からは、以前より示談交渉の話がありましたが、刑事裁判の被害者参加が終わるまで待つように伝えていました。
刑事裁判の被害者参加が無事終わったことから、刑事裁判の判決内容や証拠に基づいて、示談交渉を開始しました。

なお、人身傷害保険金請求の場合、慰謝料や休業損害が定額となってしまうのが原則なのですが、今回のケースでは、加害者側が無保険ですので、無保険車傷害特約により、対人賠償と同様の水準で示談交渉を行うことができます。

死亡慰謝料(裁判基準上限を超える3100万円)

示談交渉の場合、裁判をしているわけではないので、保険会社の担当者から裁判基準の慰謝料額の7割や8割など言われることが多いですが、裁判基準上限額と同様の2800万円を認めてもらうことができました。

これに加えて、Aさんが家族のために懸命に生きようとして、約半年間闘病生活を続けたことを考慮させて300万円の上乗せに成功し、死亡慰謝料額としては裁判基準を超える3100万円の獲得に成功しました。

死亡逸失利益(約1億円)

これも裁判基準満額の約1億円の獲得に成功しました。
入院中の付添費用や休業損害などその他(900万円程度)Aさんが入院生活をしていた時の休業損害やご家族の付添費用も獲得することに成功しました。

過失割合(Aさんの過失0)

東京地裁民事交通訴訟研究会編の別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」【41】図によると、夜間、歩車道の区別のある道路を通行する歩行者を四輪車がはねてしまった場合、歩行者25:四輪車75の過失割合になると定められていますが、本件事故現場が住宅街であったこと、Aさんが同僚らと共に集団通行していたことを立証し、また、刑事裁判の被告人質問で明らかにした加害者の脇見運転の事実を説明し、人身傷害保険の担当者を説得しました。

そうしたところ、過失割合はAさん0:加害者100での示談成立ということになりました。

1億4000万円の示談成立

弁護士小杉晴洋のコメント

死亡事故の民事の損害賠償額は刑事裁判の被害者参加によって変わります。刑事裁判に被害者参加しましたが、被告人質問・心情意見陳述・論告意見陳述ともに上手くいったケースと言えます。過失割合については、別冊判例タイムズ38号の考え方に従うと、歩行者25:四輪車75になるケースなのですが、被告人質問において加害者の脇見運転の事実が明らかになりましたので、それが奏功し、民事の示談交渉では過失割合0:100で解決することができました。
また、刑事裁判におけるご遺族の心情意見陳述が奏功し、交通事故で奪われてしまった幸せな家庭生活がどのようなものであったのか、Aさんが家族を残して死ぬことができず交通事故後も半年間の闘病生活を続けたことなどを立証することができ、死亡慰謝料額の上限が2800万円とされているのに対して、示談交渉によって3100万の慰謝料額を獲得することに成功しました。

そして、加害者側無保険のケースというのは自賠責保険金の3000万円しか得られないことが多いですが、本件のように、歩行者の被害事故であっても、使える保険というのはありますから、加害者側無保険で死亡事故に遭われてしまったご遺族の方は、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
Aさんの奥様は、事故の真相を確かめたいという動機で、刑事裁判への被害者参加を決意されました。
結果、事故の真相が判明しましたので、Aさんの奥様からは感謝の言葉を頂きました。

弁護士の立場からすると、お亡くなりになられた方は、なぜ死亡するに至ってしまったのかの真相を解明するとともに、民事の損害賠償請求も意識しなければなりません。
刑事裁判への被害者参加も民事の示談交渉も、上手くいったケースだと思います。

被害者Aさんのご家族の声

加害者のウソを前提に解決してしまっていたら、主人に申し訳が立たなかったです。

加害者のウソの供述が通らなくて、本当に良かったです。加害者のウソを前提に解決してしまっていたら、主人に申し訳が立たなかったです。刑事裁判でこちら側の主張が認められたので、民事裁判でもそれが反映されて、良い結果となりました。最初に依頼していた弁護士さんは、刑事手続に参加するという思考がありませんでしたが、依頼する弁護士さんを変えて、小杉弁護士と一緒に闘ってよかったと思っています。