弁護士法人小杉法律事務所|交通事故被害者側損害賠償請求専門特化

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【死亡事故】

学生の死亡事故で、刑事裁判に被害者参加し禁固1年の実刑判決を獲得、民事裁判では被害者過失を5割→2割にし、約9600万円の賠償を獲得。

Aさんが夜間に片側2車線の幹線道路にしゃがんでいたところ、制限速度を時速70km以上オーバーしたタクシーにはねられてお亡くなりになりました。

タクシー会社からは謝罪の連絡がありましたが、加害者本人からは何の連絡もありませんでした。

Aさんはそれまで充実した生活を送っており、ご両親様だけでなくご親族様からも非常に愛されている方でした。大切な家族を奪われたご遺族様は非常に憔悴しており、突然のことで今後どうしたらよいかわからない状況でした。

ご遺族様は、「一般道路を時速100km以上で走行するなどありえない。できるだけ重い刑事処分と、できる限り多くの賠償金の獲得をしてほしい。」とのお気持ちで、弊所にご相談くださいました。

解決事例のポイント
  1. 刑事裁判に被害者参加し、加害者の重大な過失を強調、遺族の精神的苦痛を法廷で供述することで、裁判官の加害者に対する心証を悪くさせるとともに、民事の慰謝料請求においても刑事裁判の結果を利用する
  2. 刑事事件では加害者前科なしにもかかわらず、禁固一年の実刑判決を獲得
  3. 民事では過失割合が問題となったが、裁判を行い被害者過失を5割→2割へ減少させ、約9600万円の賠償を獲得
  4. 人身傷害保険も約2000万円獲得

弁護士木村治枝の法律相談(刑事事件の被害者参加、民事の過失割合)

ご遺族様は、刑事裁判と民事裁判の両方を対応してくれる弁護士を探していらっしゃいました。
そこで、弁護士は以下の方針をご説明しました。

刑事裁判について

本件では、すでに加害者は起訴されており、公判期日が決まっていました。

刑事事件手続きでは、被害者参加をして刑事記録の確認や公判期日における被告人質問などを行い、加害者の供述の不自然な点を追及するとともに、被害者としての意見を述べることになります。

こういった活動を通して、できる限り量刑に被害者側の意見を反映してもらえるように動いていきます。

併せて、民事事件で過失割合が争われた場合に備えて、刑事事件手続きの中で有利な事実関係の取得を試みたいと考えました。

民事事件について

今回は、Aさんが車道上にしゃがんでいたという事情があるため、どうしても過失割合は争点となりそうでした。

過失割合の類型を定めている判例タイムズという書籍を参照すると、夜間に道路で横になっている人を轢いた場合の基本過失割合は5:5となってしまいます(48図)。
そこで、まずは刑事事件手続きを通して、加害者側の過失が重大であったことを立証できる有利な証拠を取得していきたいと考えました。

加害者の運転はあまりにもひどく、交通違反も多数あったため、ご遺族様も過失割合は特に気にされており、「過失0は難しいかもしれないが、Aさんの過失が高くなるのは許せない」とお考えでした。

ご依頼いただいた弁護士としても、加害者の運転がありえないというご遺族様の思いはごもっともだと思っており、できるだけAさんの過失を低く解決できるように尽力したいと考えておりました。

以上のとおり、まずは電話で方針等のご説明をさせていただいたのち、何度か対面でのお話もさせていただいた上で、弊所にご依頼いただくことになりました。

お話を伺った弁護士は、まずは刑事事件で判決にご遺族の思いを反映したい、そして民事事件でも、突然命を奪われたご本人様や大切な家族を奪われたご遺族様の悲しみを賠償に反映したいと決意し、ご依頼を受けました。

刑事裁判に被害者参加し、禁固1年の実刑判決を獲得

弁護士はご依頼後すぐに検察庁に連絡して被害者参加をする旨お伝えし、刑事記録を取得して分析を始めました。

また、Aさんが座り込んでいた理由が不明でしたので、事故前数時間分の周辺の防犯カメラなどを取得し、Aさんが事故現場に来るまでの足取りを調査しましたが、それでも原因はわかりませんでした。

第1審

第一審では、以下のような対応をしました。

  • ご遺族様と協議して心情意見書を作成、裁判にてご遺族様に陳述をしていただいた。
  • 被告人質問で、加害者の運転行為の危険性を追求。
  • 弁護士が意見書を作成し、量刑に関する意見を述べた。

検察側は過失運転致死で1年半の求刑をしました。

その結果、前科なしで実刑判決が出ることは通常ほぼありませんが、本件では前科なしで執行猶予なく禁錮1年の実刑判決が下りました。

控訴の検討、検事との面談

ご遺族様としては、禁錮1年は短いという思いをお持ちでしたが、検察側は控訴はしないという考えでした。
弁護士も、他の事件との均衡の問題はあるかもしれないが、ご遺族様の思いは当然だと考え、検察官に対して意見書を提出し、控訴を求めました。

すると、検事が直接説明の場を設けてくださり、検事・ご遺族様・弁護士で面談が行われることになりました。
結論として控訴はされなかったものの、なぜ過失運転致死になるのか、求刑や量刑について、実務の状況や検察の見解を検事が詳しく説明してくださいました。

以上の経緯で、被告側のみ控訴ということで控訴審に進みました。

控訴審

控訴審では、被告人は、「走行時には被害者の存在を認識できず、衝突を予見できなかった」と述べて無罪を主張し始めました。控訴審においても、被告の主張に対するご遺族の心情意見書や、量刑に関する意見書を提出しました。

その結果、控訴審でも禁錮1年の実刑判決を維持することができ、上告もなかったため判決が確定しました。

民事事件

示談交渉するも、到底納得できる回答ではなく訴訟へ

刑事裁判の判決が出た後は、加害者とタクシー会社に対する損害賠償請求に進みました。

双方の主張は以下の通りでした。

●弁護士の主張

  • 逸失利益:社会人となった後の収入に加えて、学生時代のアルバイトに関する逸失利益を主張
  • 慰謝料増額:運転行為の悪質性を指摘し、慰謝料の増額を主張
  • 過失割合:0対10

●加害者側主張

  • 逸失利益:アルバイトに関する逸失利益は認められない
  • 慰謝料:2250万
  • 過失割合:5対5
  • 合計約4600万円支払う

相手方の主張は到底納得できるものではなかったため、訴訟に進むことになりました。

裁判|過失2:8、賠償額約9600万円で解決

●1審

裁判では、①逸失利益・慰謝料等の損害額と、②過失割合の2点が争点となりました。

特に過失割合については、加害者の運転の悪質性や、適切な運転をしていれば回避可能な事故であったことなどを、証拠や刑事裁判の判決などを踏まえて強く主張しました。

その結果、判決では、
①社会人となった後の収入に加えて、アルバイトに関する逸失利益も一定の範囲で認める
慰謝料は、本人及び親族ら合計で2600万円
②過失割合は被害者2割:加害者8割
となり、合計約8600万円の賠償が認められました。

●控訴審

被告が控訴してきたため、原告側も控訴をすることになりました。

控訴審でも1審と同じ内容が争われた結果、過失割合は2:8で変わらず、賠償額は一審よりさらに慰謝料が増額した約9600万円の和解案が提案され、和解となりました。

また、ご遺族様が人身傷害保険に加入していたため、人身傷害保険からも約2000万円を受け取りました。

弁護士木村治枝のコメント

刑事事件の当初から関わらせていただき、刑事事件も民事事件も高裁まで進むという長期に渡る事案でした。ご遺族も、人生をかけての手続きだったと思います。そんな手続を信頼してお任せいただけたことは、大変光栄でした。弁護士人生の中でも、大きな意味をもつ事件です。

刑事事件では、前科がない中でも実刑を獲得し、民事事件でも通例の判例タイムズの基準を大きく下回る2割にとどめることができました。内容としても、自信をもってやり切ったといえると思います。

依頼者の声

刑事事件では、被告人質問で加害者を追及してくれたときは、自分たちの気持ちを代弁してくれているようだった。
実刑であっても禁錮1年は短いというのが正直な気持ちではあるが、前例からすれば珍しい判決だということも理解している。
民事事件についても、過失5割では到底納得できなかったので、2割にとどまったことは、本当によかった。

弁護士小杉晴洋のコメント

死亡事故は刑事裁判への被害者参加が民事の損害賠償請求でもキーになります

刑事裁判・民事裁判ともに非常にハードな訴訟でした。
ご遺族の感情の強いケースでしたが、加害者の言い分や態度が不合理な事案であったため、当然と言えます。
このケースでは、まず、民事のことには手を付けずに、刑事裁判の被害者参加に注力したのが成功だったと思います。
最愛のご家族を亡くしていますから、いくら賠償金をもらっても納得いくはずがなく、このケースで民事の損害賠償請求から手を付けるのは弁護士として愚手といえます。
刑事裁判では、捜査担当検察官、公判担当検察官及び検察事務官との連携が上手くいきました。打合せ回数も多く重ね、頻繁に連絡を取っていたこともあり、信頼関係が築けたのだと思います。

被害者参加されたご遺族のほかにも、傍聴希望者の親族やご友人の多いケースだったのですが、検察庁及び裁判所にそれぞれご遺族サイドの待合室をつくってもらい、刑事裁判の前後にその待合室で打合せや振り返りを行うことができました。また、検察事務官や裁判所書記官の配慮により、多くの傍聴席も事前に確保していただきました。
証人尋問、被告人質問、心情意見陳述、論告意見陳述もうまくいったケースと評価できます。
民事の損害賠償請求訴訟では、死亡慰謝料額、逸失利益の基礎収入額、葬儀費用、遺族の休業損害、過失割合など多くの争点が形成されましたが、どれも遺族サイドの主張を認めてもらえました。これは、刑事裁判での活動が功を奏した結果といえます。刑事裁判自体の重要性や、刑事裁判が民事裁判に与える影響の大きさについて実感する裁判となりました。

裁判が終わり、ご遺族のおうちにお線香をあげに伺いましたが、ご遺族の笑顔を見ることができました。
刑事裁判の前や最中では、ある時は呆然とし、ある時は怒りに満ち溢れ、ある時は悲しみに暮れるなど感情のコントロールがきかない状態になっていましたが、刑事裁判を共に乗り越え、民事裁判も無事に解決することができたので、少し精神を回復することができたように感じられました。もちろん最愛の被害者が亡くなってしまった悲しみが消えることはありませんが、多少の笑顔を取り戻すことができ、私としても少し嬉しい気持ちになりました。

被害者Aさんのご家族の声

主人の落ち度が否定され、遺族の苦しみも認定していただけたので、結果には満足しています。

主人が亡くなってから、ずっと時が止まったようでした。事実を受け止められない日が続きました。刑事裁判・民事裁判と参加させていただき、主人の死や主人という人と向き合うことができました。刑事裁判の刑は軽すぎると思いましたが、求刑どおりなのでしょうがありません。民事裁判では、主人の落ち度が否定され、遺族の苦しみも認定していただけたので、結果には満足しています。