脊髄損傷
脊髄損傷のレベルと症状の覚え方|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

こちらのページでは、脊髄損傷のレベルと症状の関係を、その覚え方とあわせて解説しております。
そもそも脊髄損傷とは?
まず、脊髄についてご説明します。上図も見ながらお読みいただけると、より理解が深まるかと思います。
人間の背中には、脊髄という太い神経の束が通っています。脊髄は脳と並ぶ中枢神経の一つであり、脳と身体各部組織との信号伝達経路として非常に重要な役割を担っています。具体的には、運動神経や感覚神経を司るのみならず、自律神経や、呼吸機能、そして排泄機能とも密接なかかわりがあります。
このように脊髄は非常に重要な存在であるため、簡単に傷ついたりしないように、脊椎(一般的に背骨と呼ばれる骨)によって頑丈に守られています(右上図参照。「Spinal Cord」と添え書きされているものが脊髄、「Body」と添え書きされているものが脊椎です。)。ここから脊髄は身体各部に神経を張り巡らせており、これを末梢神経といいます。いわば脊髄は木の幹のような存在なのです。
しかし、何らかの原因で脊髄損傷を負ってしまうことがあります。代表的な例としては、交通事故やスポーツ事故、転倒事故などが挙げられます。こうした急激な外力によって脊髄自体に傷が入ったり、また脊髄自体には傷はないものの脊椎を骨折したことによって脊髄が圧迫されたり、また脊髄周辺の組織が出血してしまうことにより脊髄にもダメージが入ることがあります。一般に、骨折を伴う場合を骨傷性脊髄損傷、伴わないものを非骨傷性脊髄損傷といいます。
脊髄損傷のレベルと症状の関係に覚え方はある?

脊髄損傷は、損傷した高位(レベル)や損傷の程度により、現れる症状も多彩なものになってきます。そのため、どのレベルを損傷したらどういう症状が現れるのか、いまいち覚えるのが難しいところもあるかと思います。
分かりやすく言うならば、「損傷高位(レベル)が脳に近ければ近いほど、症状も重篤になる」と覚えておくのがよいかと思います。以下、見ていきましょう。
⑴頚髄損傷の症状
一般的に、頚髄のレベルは第1頚髄~第8頚髄(C1~C8とも表記されます。)の8つの髄節があり、数字が小さいほど脳に近い髄節を指します。
①C1~C3の場合
呼吸筋群(横隔膜)が麻痺し、自発呼吸が困難になる場合があります。また殆どの場合で四肢麻痺が生じます。
②C4の場合
呼吸機能は残るものの、四肢麻痺がみられます。
③C5の場合
呼吸機能への影響は殆どありませんが、体幹や下半身の麻痺が生じます。上肢については、肩や肘の屈曲が可能になる一方で、手指の細かな運動は難しい状態になります。
④C6~C8の場合
体幹や下半身に麻痺が生じます。上肢については一部の機能が残存するので、車椅子操作や日常動作が可能になるケースもあります。
⑵胸髄損傷と下肢機能への影響
胸髄が損傷された場合、損傷レベルに応じて下肢機能や体幹の安定性に影響が及びます。
①T1~T6の場合
体幹の筋群(主に腹筋)が弱体化し、座位の安定性が低下します。これは、呼吸にも負担を及ぼすことがあります。また、下半身にも麻痺が生じます。
②T7~T12の場合
上半身の支えがより強化され、バランスをとる能力や部分的な自立が期待できることがあります。ただし、下肢の麻痺や運動制限はやはり生じることとなります。
⑶腰髄損傷と日常動作への影響
腰髄が損傷されると、下肢の機能や膀胱直腸機能に影響がでることが一般的です。
①L1~L2の場合
股関節の運動が制限され、膝関節や足関節に麻痺が生じます。
②L3~L4の場合
膝の伸展が可能な一方で、足首や足趾の動きには著しく制限があります。この部分の損傷では、装具を利用することで歩行可能となるケースも多く見受けられます。
⑷レベルと症状の関係のまとめ
表は、横列に脊髄の高位(レベル)を、縦列に主要な症状及び現れる反射異常をまとめた形になります。
表のとおり、損傷レベルが脳に近ければ近いほど、運動麻痺や感覚障害が現れる範囲が広くかったり、呼吸障害や神経因性膀胱障害、自律神経障害が生じるなど、症状が重くなる傾向にあります。麻痺の範囲は、頚髄損傷のときは首から下の全身、胸髄損傷のときは胴体から下全体、腰髄損傷のときは下半身、といったざっくりな覚え方もできるのではないでしょうか。
表における○、△、×印の意味合いは以下のとおりです。
○:症状が現れる可能性が高い
△:症状が現れる可能性がある
×:症状が現れる可能性がない

おわりに

本稿では、脊髄損傷のレベルと症状の覚え方について解説しました。
交通事故による脊髄損傷の場合、相手方が自動車やバイクなどで自賠責に加入していれば、自賠責に対して後遺障害の等級認定や保険金の申請ができます。
しかし、自賠責での後遺障害の調査は書類の記載が特に重視されることから、自賠責に申請する段階から、等級獲得に向けて押さえるべきポイントを把握したうえで用意を行うことが非常に望ましく、そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠だといえます。
お悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
また、脊髄損傷の症状や治療・リハビリ、後遺障害等級、損害賠償請求とのかかわり等、脊髄損傷全般に関する詳しいことは以下のページで解説いたしておりますので、こちらも合わせてご覧ください。
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