まずは弁護士と法律相談を行って、受任手続を致します。
法律相談の段階で、現在認定を受けている後遺障害等級が妥当かどうか、妥当でないとした場合、適正な後遺障害等級は何級か、上位の後遺障害等級獲得のために必要な検査・画像所見などについて具体的にご説明致します。法律相談の流れについてはこちらをご覧ください。
受任手続を経た後は、後遺障害等級についての調査を開始します。
具体的には、存在する診断書、診療報酬明細書(レセプト)、診療録(カルテ)、画像(XP・MRI・CTなど)などを取り付け、獲得を目指す後遺障害等級に関して足りない医学的な証拠が何かという点を突き詰めていきます。
また、検察庁から捜査資料も取り寄せ、どのような交通事故からケガに至ったのかについての分析も行います。
その他、医学文献の調査や、主治医や専門医への医師面談の実施を行うことがあります。
なお、資料の収集は、基本的には当事務所において行いますが、画像撮影・検査実施などは被害者本人でなければできません。
従いまして、被害者ご本人に画像撮影や検査実施などのため通院していただくことがございます。
どのようにお医者さんに伝えたらいいかなどについては、当事務所からアドバイスを差し上げますし、必要な場合は当事務所の弁護士が同席させていただきます。
後遺障害等級の調査機関の目安は1か月ですが、医療機関によっては、カルテ入手に時間がかかる場合などもありますので、これより長く調査期間を頂くケースもございます。
2で記した調査実施後は、異議申立書の起案を行います。
この起案は当事務所の弁護士が行うものです。
この異議申立書によって、自賠責・損害保険料率算出機構に対して、後遺障害等級の何級に該当すると判断するのが正しいのかについてプレゼンを行うことになります。
従いまして、2の調査というのは、この異議申立書のプレゼン資料の収集という位置づけになります。
なお、形式的には後遺障害等級の要件を満たさないが、実質的には満たすというケースについては、異議申立てよりも紛争処理申請や裁判に馴染むと考えています。
当事務所の弁護士の解決事例には、形式的には後遺障害等級11級7号にしかならないが、実質的に考えると後遺障害等級8級相当になるものと考え、紛争処理申請によって8級相当を獲得した事例がございます。
異議申立てに対する判断期間の目安は4か月・紛争処理申請に対する判断期間の目安は6か月ですが、事案によって、これより早く判断がなされるケースもあれば、遅く判断がなされるケースもあります。
異議申立てを行うと、損害保険料率算出機構が後遺障害等級の再認定をしてくれます。
見立てどおりの後遺障害等級に上がった場合は、その後遺障害等級を前提に、示談交渉へと進みます。
見立てどおりの後遺障害等級に上がらなかった場合は、認定理由を分析し、紛争処理申請を行うか、示談交渉に進むか、裁判に進むかの方針検討をすることになります。
再度の異義申立てを行うこともできますが、これで判断が変わることはほとんどありませんので、再度の異義申立てというのは行うことは原則ありません。
なお、紛争処理申請は1回しかできないということになっていますので、紛争処理申請を行った後は、示談交渉に進むか、裁判に進むかの2択になります。
収集した証拠に基づいて加害者側の保険会社に対して示談提示を行います。
証拠や裁判例や文献から説明できる最高額の獲得を目指します。
他方で、こちらに有利とはいえない裁判例が多数存在する場合もあり得、そうしたリスク要因もあわせて分析しています。
民事裁判を起こした場合、リスクを考慮したとしても認められるであろう金額を設定し、その金額を参考に、示談交渉でいくら以上支払いがなされるのであれば示談解決とし、いくら以下であったなら裁判をするという方針を当事務所と依頼者の方との間で設定してから、示談提示を行います。
示談交渉期間の目安は1か月です。
ただし、事案により、保険会社の決裁に時間がかかり、2か月以上の交渉期間を要するケースもございます。
示談解決をしても良い水準の金額が保険会社から提示されたとしても、すぐには示談せず、それよりも高くなる可能性を探ります。
示談解決をしても良い水準の金額で、かつ、保険会社の出せる金額のいっぱいまで来たと判断できた場合に、示談をします。
示談は被害者側・加害者側双方が納得した上で行うものですから、示談が成立すると、今後は今回の交通事故に関して損害賠償請求をしてはならない旨の取り決めがなされたということになります。
従いまして、当該交通事故に関する損害賠償請求は解決ということになります。
逆をいうと、今後二度と損害賠償請求をすることが原則としてできなくなりますので、示談成立後に民事裁判を提起するなどしても、示談金以上の損害賠償請求は認められません。
過失割合に争いがあるとか、裁判基準の慰謝料額を出さず金額に折り合いがつかないといった場合、示談交渉は決裂となり、示談不成立となります。
この場合、民事訴訟に移行することになります。
民事訴訟の提起に多少の時間は頂戴しますが、基本的には、示談交渉の準備によって、民事訴訟の準備もほとんどできておりますので、示談交渉決裂となった場合には、なるべく速やかに民事訴訟の提起を行います。
民事訴訟の提起は、訴状を提出することによって行います(民事訴訟法第133条1項)。
なお、民事訴訟を提起した場合、示談交渉では通常認められない、年3%の遅延損害金(令和2年3月31日以前の交通事故の場合は年5%)や損害額の10%分の弁護士費用が加算されます。
裁判では、訴えた人を原告といい(通常ご被害者側が原告となります。)、訴えられた人を被告といいます(通常加害者側が被告となります)。
原告の提出した訴状に対して、ここは認める、ここは知らない、ここは認めないなどを記した答弁書や準備書面が被告から提出されます。
こうした被告提出の書面に対して、原告側(被害者側)が反論をし、それに対して被告側(加害者側)が再反論をする、こうした書面のラリーが続きます。
書面のラリーは、短いケースだと半年以内、長いケースだと1年以上続きます。
書面のラリーの内容としては、被害者の精神的苦痛は甚大である⇔慰謝料が高すぎる、被害者が交通事故に遭っていなければこのくらいは稼いでいた⇔証拠からするとそこまで稼いでいなかったと予想される、今回の交通事故で被害者に落ち度はない⇔被害者に落ち度がある、などといったやりとりがなされます。
なお、民事裁判に被害者の方が出廷する必要はなく、当事務所の弁護士が代わりに出廷します(出廷ではなく電話での裁判やWEBでの裁判で参加することもあります。)。
書面のラリーが終わると、双方の書面上の主張や証拠を読んだ上での意見として、裁判所から和解案が示されることが多いです。
具体的に、慰謝料はいくら、逸失利益はいくら、休業損害はいくら、といった感じで、裁判所が考える損害賠償額が提示されます。
これを原告・被告双方持ち帰って、この和解案に応じるか否かの検討を行います。
なお、交通事故関係訴訟は和解率が高い訴訟類型とされていて、東京地方裁判所民事27部(交通専門部)の場合、概ね70%が和解によって解決しています。
裁判所和解案に原告・被告双方が応じるとなった場合には、和解成立となり、解決となります。
逆をいうと、今後二度と損害賠償請求をすることが原則としてできなくなるというのは示談の場合と同様です。
示談と異なるのは、裁判上の和解は判決と同等の効果を持ちますので(民事訴訟法第267条)、加害者側が和解金の支払いをしなかった場合には、強制執行をすることができます。
ただし、交通事故の場合、通常は、加害者側に対人賠償無制限の任意保険が付いていますので、和解金が支払われないという事態はあまりありません。
裁判所和解案に原告・被告双方が応じないとなった場合や、原告と被告のいずれか一方は応じるとしたもののもう一方が応じないとした場合は、和解不成立となり、裁判は続行されます。
和解案提示までの段階で、書面での主張や証拠の提出はほとんどなされていますので、補足の書面がない限りは、あとは人の話による証拠の提出ということになります。
これを尋問と言います。
尋問は行われるケースと行われないケースとがありますが、交通事故の内容や過失割合に争いのあるケースでは、尋問が行われることが多いです。
尋問が行われない場合は、和解決裂となった後、そう時間を置かずに判決に移行します。
尋問が行われる場合は、和解決裂となった後、2回程度先の期日で尋問が行われ、その後判決に移行します。
なお、尋問終了後にも和解案が示されることもあります。
判決に対しては、判決書を受け取った日から14日以内に控訴をすることができますが(民事訴訟法258条)、この14日以内に原告からも被告からも控訴がなされなかった場合には、判決が確定します。
判決が確定すると、原則として、二度と争うことはできなくなり、解決となります。
控訴まで至るケースは多くはありませんので、ここでは割愛します。詳細は「控訴について」をご覧ください。