示談 弁護士費用特約 追突 四輪車vs四輪車 手・手指 役員 靭帯損傷 10級 医師面談
【左母子MP関節尺側側副靭帯損傷】追突事故の際、ハンドルを強く握ったことにより親指を負傷したケースで、医師の意見書により後遺障害等級10級を獲得した事例
Aさん 横浜市・40代・男性・会社役員
【左母子MP関節(中手指節関節)尺側側副靭帯損傷】追突事故の際、ハンドルを強く握ったことにより親指を負傷したケースで、医師の意見書により後遺障害等級10級を獲得した事例(約3500万円で示談解決)
解決事例のポイント
① 指の痛みについて医師面談を実施し、靭帯損傷の診断を新たに得たこと(追突事故で後遺障害等級10級獲得)
② 会社役員であったが実働状況を示し、逸失利益を認めさせたこと
③ 複数の弁護士費用特約を使い、被害者本人の弁護士費用負担を完全0円としたこと
相談前
Aさんは、赤信号停止中、後方から進行してきた車に追突されてしまい、むち打ちとなってしまいます。
Aさんは、仕事が忙しく、保険会社の担当者との対応が億劫であったことから、弁護士費用特約に入っていたこともあり、弁護士に交通事故の処理をお願いすることにしました。
法律相談
赤信号停止中の追突むち打ち事案というのは、交通事故の中で最も多い事故類型です。
リハビリは整形外科に週2~3回通った方が慰謝料算定上も後遺障害等級認定上も有利となることなど追突むち打ち事案の一般的な説明をし、また、6か月程度治療をしても首の痛みがとれなければ、後遺障害等級の申請を行うこと、後遺障害の申請を行ってから結果が出るまで2~3か月かかること、その後示談交渉を行い期間としては1か月程度かかること、裁判となる可能性は低いケースだが仮に裁判となった場合には追加で1年程度かかることなどを説明しました。
また、むち打ちで後遺障害等級を取るためのポイントや、後遺障害等級が取れなかった場合は100万円程度の賠償額が見込まれること、むち打ちで後遺障害等級が取れた場合は500万円程度の賠償額が見込まれることについてホワイトボードを使って説明をしました。
以上のようなむち打ちの一般的処理で解決できる事案とも評価できたのですが、Aさんの様子を見ていると、左の親指を強く痛がっている様子が窺われました。
追突の際にハンドルを強く握ってしまったことにより痛めたとのことですが、診断名は打撲であり、打撲というは時の経過によって完治するものですので、後遺症にはならないであろうと思っていましたが、念のため、今後も症状の経過を報告するようAさんにお願いをしておきました。
親指の痛みがひかないため医師面談を実施することに
受任した後もAさんの親指の痛みはひかず、完治に向かいませんでした。
これは打撲ではないのではないかとの疑念が生まれます。
そこで、主治医の先生の元へ行き、医師面談を実施することにしました。
お忙しい先生でしたので、約束の時間から3時間ほど待たされましたが、その間、Aさんが車好きであることなど雑談をして待っていました。
ようやく先生の時間が取れ、医師面談が実施できました。
打撲診断の根拠ついて尋ねたところ、レントゲン撮影で特に異常がなかったので打撲診断としたとのことでした。
Aさんの親指の痛みがひかないため、靭帯損傷が考えられるので、MRI撮影をお願いしたところ、先生からは快諾いただきくことができました。
左母子MP関節(中手指節関節)尺側側副靭帯損傷の判明
そうしたところ、Aさんの親指はMP関節(中手指節関節=指の付け根の関節)の尺側(内側=人差し指に近い方)の靭帯が損傷していることが判明しました。
また、これによる親指の動きづらさも生じているとのことでした。
この靭帯損傷の判明ため治療期間が延び、交通事故から10か月経って症状固定となりましたが、上記の内容を後遺障害診断書に盛り込んでもらうことにしました。
そうしたところ、「1手の母指の用を廃したもの」として後遺障害等級10級の認定がなされることになりました。
示談交渉(約3500万円獲得)
Aさんは会社役員で高給取りであったことから、逸失利益の計算だけで3000万円程度の高額賠償になります。
保険会社というのは営利企業ですから、なるべく支払う賠償金は低く抑えたいわけですが、会社役員の場合は逸失利益は認められないという主張を行ってきました。
会社役員というのは、仮に交通事故に遭って入院していたとしても、労働者ではないので、会社のオーナー的ポジションとして変わらず給料が支払われることがあります。
そう考えると、保険会社の反論も一理あることになります。
しかしながら、Aさんは、役員でありながら、お客さん対応や、新規顧客の獲得に努めていて、Aさんの報酬は労働の対価として得ているものと評価することが可能な状況にありました。
そこで、Aさんの協力を得て、Aさんの業務内容を説明し、Aさんの給与の実態は利益配当ではなく、労働の対価であることを立証しました。
そうしたところ、無事保険会社の決裁が降り、約3500万円での示談解決に至りました。
複数の弁護士費用特約利用で依頼者の弁護士費用負担なし
保険商品にもよりますが、ほとんどの弁護士費用特約は上限300万円と設定されています。
Aさんのケースでは獲得した賠償額が約3500万円になっていますので、弁護士費用は着手金・報酬金込みで上限の300万円を超えてしまいます。
300万円を超えた分というのは、獲得した賠償額から精算しますので、Aさんに弁護士費用の手出しが生じることはないのですが、医師面談を待つ際にAさんが車好きという話をされていたので、他にお持ちの車でも弁護士費用特約に加入しているかどうかを調べてもらうことにしました。
そうしたところ、他の車でも弁護士費用特約に入っていることが判明し、また、その車での交通事故でなかったとしても弁護士費用特約が使えるとのことでした。
そこで、2つの弁護士費用特約を使うことにし、Aさんの負担を完全に無しにすることができ、獲得した賠償金額の約3500万円を全額Aさんにお返しすることができました。
弁護士小杉晴洋のコメント:精密検査により医師の診断が変わることがある
このケースは、一見すると、よくある追突によるむち打ち事故と思いがちです。
主治医の先生も、そのように判断していたように思います。
しかしながら、追突の際にハンドルを強く握りしめてしまい左手の親指を痛めてしまったという特殊事情がありますから、その点について医学的な原因を解明する必要があります。
単純な追突むち打ち事案であるからということで、被害者の症状を無視してはいけません。
もちろん、医学的な原因解明に動いたとしても何らの所見が見つからないケースもありますが、AさんのようにMP関節(中手指節関節)尺側側副靭帯損傷といった靭帯損傷が判明することもあります。
賠償額の観点でも重要なことではありますが、お身体のことですので、気にある箇所はきちんと調べてもらうようにしましょう。
当事務所では、他にも弁護士の指摘によって靭帯損傷が判明したケースが複数あります。