靭帯損傷/断裂 下肢
足首の靭帯断裂|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、足首(足関節)の靭帯断裂と後遺障害等級について解説いたしております。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしてもらっています。
足首の靭帯損傷・靭帯断裂とは?
⑴足首の靭帯にはどんなものがある?


足関節は、脛骨や腓骨をはじめとして、かかとの骨である踵骨や足首の土台となる距骨など、多くの骨が密集しており、それらを多くの靭帯がつなぎ合わせているような構造になっています。上図をみていいただけると分かるように(なおligamentは「靭帯」を意味する英単語です)、足首外側だけでも、前距腓靭帯や後距腓靭帯、前脛腓靭帯に後脛腓靭帯、踵腓靭帯などが存在しており、足首内側にもまた前脛距靭帯・後脛距靭帯・脛踵靭帯・脛舟靭帯(この4つを合わせて三角靭帯とも呼ばれる)があります。こうした複雑な構造が、柔軟かつ自由な足首の動きを可能にしているといえます。
⑵靭帯損傷の種類と症状
足首の靭帯断裂は、主に靭帯が引き伸ばされたりすることにより、部分的または完全に断裂することで発生します。前者を不完全断裂、後者を完全断裂と呼びます。前項で紹介した靭帯は、足首の安定性を保つ役割を果たしていますが、外傷や過度の動きなどで損傷・断裂することがあります。
靭帯損傷の主な症状には、痛み、腫れ、内出血、関節の不安定さなどが挙げられます。軽度の場合は足首の捻挫として認識されることもありますが、重度の損傷では明らかな関節の動揺や歩行困難がみられることも少なくありません。
⑶交通事故が原因となる靭帯損傷の典型例
交通事故による足首の靭帯損傷は、自動車との衝突や転倒時の衝撃によって引き起こされることが一般的です。特に、自動二輪車や自転車に乗車中の事故では、足首に大きな負荷がかかりやすく、靭帯断裂に至るケースも散見されます。
具体的には、交通事故の強い衝撃・外力によって足首が不自然な方向に曲げられることで、前距腓靭帯や三角靭帯等が損傷・断裂することが多いです。このようなケースでは、事故後すぐに足首が腫れ、関節を動かすことが困難になるため、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。
また、足首の靭帯損傷を軽視することは、大きなリスクを伴います。適切な治療を受けずに放置すると、関節の不安定性や機能障害、痛みなどの神経症状を引き起こし、日常生活にも大きな支障をきたします。ひどい場合には神経症状や可動域制限が長期間続き、後遺症として残存してしまう恐れもあります。特に交通事故が原因の場合は、損傷が複雑である可能性があるため、後遺症が残ってしまうリスクが幾分高まることとなります。
靭帯損傷の診断と治療の流れ
⑴医療機関での早期診断が重要な理由
交通事故による足首の靭帯断裂は、損傷の程度や種類を正確に把握するために早期診断が非常に重要です。早期に医療機関に相談することで、靭帯の状態を適切に評価し、MRIやエコー検査などで損傷の範囲を詳細に確認することが可能です。また、診察を遅らせると症状が進行し、保存療法では改善が難しくなる場合もあるため、事故後はできるだけ早く専門医を受診することが推奨されます。
⑵治療方法の選択肢
足首の靭帯損傷の治療には、大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2つの選択肢があります。保存療法は、軽度の靭帯損傷や部分的な断裂の場合に適用され、アイシングや弾性包帯、または装具を用いて患部を安静に保ちながら自然治癒を促します。一方で、靭帯の完全断裂や関節の不安定さが認められる場合には、靭帯縫合手術などの外科的治療が必要となるケースもあります。治療方法の選択は、靭帯の損傷部位や範囲、患者の日常生活への影響度などを考慮して決定されます。交通事故治療では医師と十分に相談し、適切な治療方針を選択することが極めて重要です。
⑶治療中の注意点とリハビリテーションの重要性
治療中は、靭帯や足関節を適切に保護しつつ、リハビリテーションを計画的に進めることが重要です。特に交通事故による損傷は、治療後も関節の柔軟性や筋力を取り戻すためのリハビリが不可欠です。リハビリの開始時期は損傷の程度によりますが、早期から無理のない範囲で関節の動きを回復させるトレーニングが推奨されます。治療中に無理をすると症状が悪化する可能性があるため、医師や理学療法士の指導を受けながら計画的に進めましょう。また、再発防止のために、サポーターの装着や足首を支える運動療法を取り入れることも有効です。このプロセスを怠ると、後遺障害のリスクが高まるため、慎重にリハビリに取り組む姿勢が大切です。
後遺症の可能性と後遺障害認定のポイント
交通事故で足首の靭帯断裂を負傷し、これが原因で後遺症が残った場合、自賠責に後遺障害等級の申請を行うことができるときがあります。後遺障害等級認定を受けることで、適切な賠償請求や補償を受けることができるようになります。
靭帯断裂の場合、慢性的な痛みなどの神経症状に加え、関節の可動域制限や足首の動揺関節といった後遺症が残る可能性があります。以下では、足首の靭帯断裂で認定される可能性がある等級について解説いたします。
⑴神経症状
靭帯断裂による足関節の痛みなどの神経症状が残存した場合、第12級13号もしくは第14級9号が認定される可能性があります。
①第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
足関節の痛みの残存について、画像所見や神経学的所見などにより他覚的に立証できる場合に認定されます。認定にあたってはMRI等の画像所見は必要不可欠であり、画像によって足関節の靭帯断裂の外傷性異常所見が認められ、その他靭帯断裂に係る徒手検査などの神経学的所見からも足関節の神経症状の残存を証明できることが要求されます。靭帯は軟部組織であるため、XPやCT画像では確認が難しく、軟部組織の撮影に適した撮影方法であるMRI検査を受けることは不可欠といってよいでしょう。万が一、靭帯損傷や靭帯断裂が疑われるようなケースでMRIの撮影が行われていない場合は、一度主治医に相談してみてもよいかもしれません。
②第14級9号 局部に神経症状を残すもの
画像所見や神経学的所見などによって他覚的に症状の残存を立証することはできないものの、事故態様や治療状況、症状経過などによって症状の残存につき説明可能である場合に認定されます。具体的には、靭帯断裂が交通事故によって生じたものであることが認められる上で、受傷後の初期段階から一貫・継続して足関節の神経症状についての自訴があり、相当程度に通院し治療を行ったことが確認できる必要があります。そのため、初診時にはきちんとすべての症状を伝えておくこと、そして治療で症状が軽くなってきたとしても、少しでも症状の影響があるようならばきちんと主治医に伝え、医療記録に残してもらうことが重要となります。
等級認定を受けるためには、「医師の診断書」や「後遺障害診断書」を準備する必要があります。必要な書類には、治療記録、レントゲンやMRI画像、関節可動域の検査結果などが含まれます。また、痛みや不快感が継続していることを証明するためには、日々の症状を詳細に記録したメモや写真も有効です。これらを的確に揃えることで、認定手続きがスムーズに進む可能性が高まります。
⑵機能障害
靭帯断裂を原因として、足関節に可動域制限が残存する可能性があります。このとき、患側(怪我をした側)と健側(怪我をしていない側)の可動域角度の比較し、患側の可動域制限の程度に応じて第8級7号、第10級11号もしくは第12級7号が認定されることとなります。
機能障害の認定にあっては、器質的損傷があることと画像等でその器質的損傷を確認できること、そして器質的損傷と可動域制限の残存との間に医学的な相当因果関係が認められることが要件となります。今回のケースですと、MRI等の画像によって靭帯断裂が確認でき、これが原因で可動域制限が残存したことを立証できれば、あとは可動域角度に応じて等級認定がなされることとなります。なお、機能障害は器質的に可動域制限が残存してしまったことに関する後遺障害ですので、痛みやしびれなど神経症状のために動かすことができないようなケースでは生憎ながら認定対象とはなりません。
①第8級7号 下肢1関節の廃用
「一下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に該当する場合に認定されます。
「1関節の用を廃したもの」とは、具体的には以下のものをいいます。
a 関節が強直したもの
b 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
なお「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下になったものをいいます。
c 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの
②第10級11号 下肢1関節の著しい機能障害
「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当する場合に認定されます。具体的には、次のいずれかに該当するものをいいます。
a 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの
b 人工関節・人工骨頭を挿入置換したもの(ただし、挿入置換した関節の可動域角度が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合を除く)
③第12級7号 下肢1関節の機能障害
「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」に該当する場合に認定されます。具体的には、患側の足関節の可動域が健側の足関節の可動域角度の4分の3以下に制限されているものに該当することが要件となります。
⑶動揺関節
足関節に動揺関節(動揺不安定性)が残存したときは、それが他動的であるか自動的であるかにかかわらず、硬性補装具の必要の程度に応じて等級認定がなされます。常に硬性補装具を必要とするものは第8級に準ずる関節の機能障害として、時々硬性補装具を必要とするものは第10級に準ずる関節の機能障害として、重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないものは第12級に準ずる関節の機能障害として認定されます。
動揺関節の認定についても、機能障害と同様に、器質的損傷の存在と、器質的損傷と動揺関節との相当因果関係が認められることが要件となります。動揺関節については、ストレスレントゲンや引出しテスト等の他覚的所見によって動揺不安定性を立証できるかどうかが肝要となります。
おわりに

本稿では、足首(足関節)の靭帯断裂と後遺障害等級について解説いたしました。
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交通事故により足首の靭帯損傷・靭帯断裂を負い、賠償請求や今後のこと等でお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
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