後遺障害等級の解説

醜状障害

瘢痕と線状痕|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、瘢痕と線状痕とは何なのか、また自賠責保険における醜状障害について解説いたします。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしていただいています。

瘢痕・線状痕とは?

瘢痕」とは何か、端的に答えるならば「傷跡」のことです(「瘢」の字は「きず」や「きずあと」と訓読でき、訓読のとおり傷や傷跡を意味する。)。

より詳しく言いますと、交通事故等による皮膚の損傷や、又は潰瘍等の病変によって破壊された皮膚の線維組織について、治癒の過程において肉芽組織が形成され、やがて膠原線維(主にコラーゲン等のタンパク質からなる線維。骨や靭帯、腱等の組織にも含まれる。)や線維結合組織に置き換わり修復がなされたものをいいます。特に見られるのは肥厚性瘢痕であり、これはミミズ腫れのようなぷっくりと盛り上がった形状の瘢痕をいいます。また、損傷した範囲を超えて赤く盛り上がり、広がりを見せるものはケロイドと呼ばれています。

そして線状痕とは、線状の瘢痕をいいます。

つまり線状痕も瘢痕の一種であり、特徴的な形状をしていることから特に線状痕と呼んでいるわけですね。

自賠責保険における醜状障害の後遺障害等級

自賠責は、自動車損害賠償保障法施行令において、自賠責保険の補償対象となる後遺症について定めています。

この自賠責保険の補償対象となる後遺症のことを後遺障害と呼びますが、交通事故で瘢痕や線状痕等が残存してしまった場合には醜状障害という後遺障害が認定される可能性があります。そのため、自賠責保険で醜状障害と認定されれば、等級に応じた保険金を受け取ることができます。

醜状障害は、傷痕が残ってしまった部位に応じて認定基準や認定される後遺障害等級が異なっています。この部位は大きく3つに分けることができ、下図のとおり、外貌・露出面・露出面以外(日常露出しない部位)となります。以下では、それぞれ部位別に後遺障害等級や認定基準を見ていきましょう。

⑴外貌醜状

「外貌」とは、頭部・顔面部・頚部といった日常露出している部分をいいます。頭部は通常髪の毛が生えている部分を指します。顔面部はいわゆる顔の部分を指し、下顎の骨の稜線と髪の毛の生え際で囲まれた部分をいいます。頚部は顔面部より下の日常露出している部分を指し、顎の下の部分は頚部に含まれます。

①別表第二第7級12号

外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。

具体的な基準については、傷痕の残存箇所が頭部・顔面部・頚部のいずれかによって異なっています。

まず頭部については、てのひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損が残った場合に該当します。

次に顔面部については、鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨大以上の組織陥没が残った場合に該当します。

そして頚部については、てのひら大以上の瘢痕が残った場合に該当します。

なお、てのひらの大きさは個人差がありますので、通常、被害者本人のてのひらを目安にします

②別表第二第9級16号

外貌に相当程度の醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。

ここでいう外貌の相当程度の醜状とは、顔面部に5㎝以上の線状痕が残った場合が該当します。

③別表第二第12級14号

外貌に醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。

具体的な基準については、傷痕の残存箇所が頭部・顔面部・頚部のいずれかによって異なっています。

まず、頭部については、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損が残った場合に該当します。

次に顔面部については、10円硬貨大以上の瘢痕又は3㎝以上の線状痕が残った場合に該当します。

そして頚部については、鶏卵大面以上の瘢痕が残った場合に該当します。

⑵露出面の醜状障害

①別表第二第14級4号

上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」に該当する場合に認定されます。

ここでいう「上肢の露出面」とは、肩関節以下(手部を含む)を指します。なお、労災では「上肢の露出面」の解釈について肘関節以下と定めており、自賠責と労災とで露出面の範囲に差異がある点に注意が必要です。

②別表第二第14級5号

下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの」に該当する場合に認定されます。

ここでいう「下肢の露出面」とは、股関節以下(足背部を含む)を指します。なお、労災では「上肢の露出面」の解釈について膝関節以下と定めており、自賠責と労災とで露出面の範囲に差異がある点に注意が必要です。

③別表第二第12級相当

上肢又は下肢の露出面に、てのひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残した場合には、別表第二第14級4号又は第14級5号ではなく別表第二第12級相当が認定されます。複数の瘢痕や線状痕が残存する場合にはそれらの面積を合計して認定しますが、この場合、少なくともてのひら大以上の瘢痕に該当する程度の瘢痕や線状痕が1個以上残存している必要があります。裏を返すと、てのひら大に満たない瘢痕や線状痕のみが複数残存している場合は、仮にその合計がてのひら大の3倍程度以上であったとしても、第12級相当は認定されません。

⑶日常露出しない部位の醜状障害

自賠責において日常露出しない部位とは、図のとおり、胸部・腹部、背部・臀部を指します。これらの部位の醜状については、別表第二備考6を適用し、相当等級が定められることとなります。

①別表第二第14級相当

胸部及び腹部、又は背部及び臀部の全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すものは、別表第二第14級相当が認定されます。

②別表第二第12級相当

胸部及び腹部、又は背部及び臀部の全面積の2分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すものは、別表第二第12級相当が認定されます。

⑷等級認定に関する留意点

等級認定を行うに際し、2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又は相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級が認定されます。ここでいう「相隣接」は、複数の醜状間の距離がおおむね1㎝以下であることとされています。つまり、1つ1つの瘢痕の大きさでは認定基準の大きさに届かなくても、それらが1㎝以下の距離で近接していれば、大きさを合算して等級認定判断がなされるため認定される可能性も出てくるということです。

また、眉毛や頭髪等に隠れ、人目につかない部分については、醜状として取り扱われません。

おわりに

本稿では、瘢痕と線状痕とは何か、そしてこれらの後遺症と自賠責の後遺障害等級について解説いたしました。

弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております

交通事故により瘢痕や線状痕の醜状を残してお悩みの方や、賠償請求のこと等でお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。