精神障害
転換性障害|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、転換性障害と自賠責の後遺障害等級の関係について解説しております。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしてもらっています。
転換性障害とは?
⑴転換性障害の定義と原因
転換性障害とは、心理的ストレスや心の葛藤が無意識のうちに身体症状として現れる障害のことを指します。
多大な心理的負担から自分を守るため、ストレスや精神的苦痛が無意識のうちに別の症状に「転換」されることにより、様々な症状が現れているものと考えられています。また、心理的ストレス等がトリガーである転換性障害自体は、いわば発症について器質的な原因がないため、レントゲンやCT、MRI画像のような画像検査で所見を確認できるものではなく、また神経学的検査等の医学的検査を行っても異常が見つからないことが非常に多いです。
⑵転換性障害で現れうる症状
転換性障害では、心理的ストレスが身体的症状に「転換」されて現れます。
しばしば確認される症状としては、体の痛みやしびれ、吐き気が挙げられます。
このほか、身体機能に影響が生じるケースも確認されており、心因性運動障害(麻痺)、咽喉頭異常感症、心因性視力障害、失声、心因性非てんかん性発作など、手足の動きや感覚、視力、発語等にも変化が認められることがあります。
主な特徴として、運動機能や感覚機能に影響を及ぼす症状が挙げられます。たとえば、突然の麻痺や失声、さらにはけいれんや視覚障害などが典型的な例です。
この障害は、ICD-11(国際疾病分類第11版)では解離性障害の一部として分類されています。被害者は多くの場合、自分が心理的なストレスを原因としていることに気付いていないため、医療者が患者の症状を丁寧に受け止め、心理と身体の関係性を正しく理解することが重要です。
⑶交通事故で転換性障害が起きることはある?
これまで述べたように、転換性障害は心理的負担が身体的症状に転換されたものになります。
交通事故の被害に遭うことで、捻挫や打撲、骨折などの器質的損傷があればその痛みに苦しむこととなりますし、治療のために通院をするのもストレスになることがあります。
治療等を行うために、日常のスケジュールが交通事故前とは大きく変わってしまうこともあるでしょうから、そうなると生活のリズムが乱れたことによるストレスを感じる可能性もあります。
くわえて、弁護士等を入れない場合には、加害者や加害者側の保険会社等ともやり取りをしなければならなくなったり、
事故による症状等が原因で出勤することが難しくなって休業せざるを得ないとなれば、経済的不安等が生じることも考えられるでしょう。
交通事故は、単に負傷するのみならず、それまでの生活の平穏や心の安定を乱しうるものなのです。
こうして蓄積する心理的負担やストレスが、身体的症状として「転換」され、転換性障害として発現することも十分ありえます。
転換性障害の後遺障害等級
転換性障害は、交通事故後に発生する可能性がある症状の一つとして挙げられており、治療を行った結果として転換性障害が残存してしまった場合には、自賠責に後遺障害等級の申請を行うことができるときがあります。
⑴非器質性精神障害の等級認定基準
転換性障害をはじめとする非器質性精神障害の後遺障害が残存しているというためには、非器質性精神障害を原因として①の a ~ f の精神症状のうち1つ以上の精神症状を残し、かつ、②の能力に関する判断項目のうち1つ以上の能力について障害が認められることが必要となります。
①精神症状
a 抑うつ状態
持続するうつ気分(悲しい、寂しい、憂鬱である、希望がない、絶望的である等)、何をするのも億劫になる(億劫感)、それまで楽しかったことに対して楽しいという感情がなくなる、気が進まないなどの状態。
b 不安の状態
全般的不安や恐怖、心気症、強迫など強い不安が続き、強い苦悩を示す状態。
c 意欲低下の状態
全てのことに対して関心が湧かず、自発性が乏しくなる、自ら積極的に行動せず、行動を起こしても長続きしない。口数も少なくなり、日常生活上の身の回りのことにも無精となる状態。
d 慢性化した幻覚・妄想性の状態
自分に対する噂や悪口あるいは命令が聞こえる等実際には存在しないものを知覚体験すること(幻覚)、自分が他者から害を加えられている、食べ物や薬に毒が入っている、自分は特別な能力を持っている等内容が間違っており、確信が以上に強く、訂正不可能でありその人個人だけ限定された意味付け(妄想)等の幻覚、妄想を持続的に示す状態。
e 記憶又は知的能力の障害
記憶障害としては、解離性(心因性)健忘が代表例。自分がだれであり、どんな生活史を持っているかをすっかり忘れてしまう全生活史健忘や、生活史の中の一定の時期や出来事のことを思い出せない状態。
知的能力の障害としては、解離性(心因性)障害が代表的。日常身辺生活は普通にしているのに、改めて質問すると自分の名前を答えられない、年齢は3つ、1+1は3のように的外れの回答をするような状態。
f その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)
多動症、衝動行動、徘徊、身体的な自覚症状や不定愁訴といったa~eに分類できない障害。
②能力に関する判断項目
次の a ~ h の能力の有無及び必要となる助言・援助の程度に着目して評価が行われます。
a 身辺日常生活
入浴や更衣など清潔保持を適切にすることができるか、規則的に十分な食事をすることができるかについて評価。
b 仕事・生活に積極性を・関心を持つこと
仕事の内容、職場での生活や働くことそのもの、世の中の出来事、テレビ、娯楽等の日常生活等に対する意欲や関心があるか否かについて評価。
c 通勤・勤務時間の厳守
規則的な通勤や出勤時間等約束時間の遵守が可能かどうかについて評価。
d 普通に作業を持続すること
就業規則に則った就労が可能かどうか、普通の集中力・持続力をもって業務を遂行できるかどうかについて評価。
e 他人との意思伝達
日常生活や職場等において他人とのコミュニケーションが適切にできるかを評価。
f 対人関係・協調性
日常生活や職場等において、円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうかなどについて評価。
g 身辺の安全保持、危機の回避
危険等から適切に身を守れるかどうかを評価。
h 困難・失敗への対応
ストレスを受けた時に、ひどく緊張したり混乱することなく対処できるか等どの程度適切に対応できるかについて評価。
⑵転換性障害で認定される可能性がある後遺障害等級
身体表現性障害は非器質性精神障害の一つとして後遺障害等級認定が行われ、認定される可能性がある等級は以下の3つになります。
別表第二第9級10号
「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの」に該当する場合に認定されます。
具体的には、次のアまたはイに該当する場合に認められます。
ア 就労している者又は就労の意欲のある者の場合は、②の判断項目のうち b ~ h のいずれか1つの能力が失われているもの又は4つ以上についてしばしば助言・援助が必要とされる障害を残しているもの
イ 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者の場合は、②の判断項目のa(身辺日常生活)について時に助言・援助を必要とする程度の障害が残存しているもの
別表第二第12級13号
「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」に該当する場合に認定されます。
具体的には、次のアまたはイに該当する場合に認められます。
ア 就労している者又は就労の意欲のある者の場合は、②の判断項目の4つ以上について時に助言・援助が必要とされる障害を残しているもの
イ 就労意欲の低下又は欠落により就労していない者の場合は、②の判断項目のa(身辺日常生活)を適切又は概ねできるもの
別表第二第14級9号
「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの」に該当する場合に認定されます。
具体的には、②の判断項目の1つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残しているものが該当します。
等級の認定要件について、表にまとめると次のとおりとなります。

⑶自賠責への申請にあたっての注意点
身体表現性障害をはじめとする非器質性精神障害は、「どの時点をもって症状固定とするか」の判断が難しい症状とされます。切り傷や骨折などのように、外見で回復の程度が判断できるものではないからです。
そのため、療養を継続して十分な治療を行ってもなお症状に改善の見込みがないと判断され、症状が固定しているときには、症状固定の状態にあるものとして後遺障害等級の認定が行われます。この目安としては2年が妥当であると考えられ、つまり事故後に身体表現性障害を発症してから2年治療を続けてもなお症状が残存してしまった場合には、その時点をもって症状固定を行い、その時点での症状に基づいて後遺障害等級の認定判断を行う、ということです。
もちろん、治療開始から2年が経過する前に症状固定を迎えることもあるでしょうから、その場合は基本どおり、その時点の症状をもって症状固定として自賠責に申請することとなるでしょう。
また、非器質性精神障害として評価するにあたっては、精神科専門医による診断および治療がなされていることが必要不可欠となります。そのため、精神科専門医による精神科的治療がなされていない場合は、自賠責保険における後遺障害としての非器質性精神障害として取り扱うことはできないとされています。なお、ここでいう「精神科専門医」とは、たとえば精神科や精神神経科、心療内科、メンタルクリニック等があります。
おわりに

本稿では、交通事故と転換性障害の関係、そして自賠責保険における転換性障害の後遺障害等級について解説いたしました。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております。
交通事故を原因とする非器質性精神障害にお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
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