眼 神経症状
交通事故後のめまいに認められる後遺障害等級(弁護士法人小杉法律事務所監修)
交通事故により生じるめまいについて
めまいは、交通事故に限らず、心因性、メニエール病など、様々な原因で発現するとされています。
交通事故に限れば、脳損傷後の症状や、視神経などなんらかの神経が器質的に障害されるという場合ももちろんありますが、
頚椎捻挫、いわゆるむち打ち症に伴って副次的に生じる障害として発現するケースも多いです。
頚椎捻挫に伴い副次的にめまいや吐き気などが発現してしまう状態の患者に対しては、「バレ・リュー症候群」や「外傷性頚部症候群」という傷病名がつけられたりします。
そのため、脳損傷や神経損傷など器質的な傷害によってめまいが生じたという場合でない限り、頚椎捻挫の存在が、めまいの後遺障害認定の前提になります。
交通事故によるめまいに認められる後遺障害等級の認定基準
後遺障害認定基準には、「失調、めまい及び平衡機能障害」として以下のとおり認定基準が設けられています。
第3級3号 | 生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために労務に服することができないもの |
第5級2号 | 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの |
第7級4号 | 中等度の失調又は平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの |
第9級10号 | 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
第12級13号 | 通常の労務に服することができるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの |
第14級9号 | めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの |
以上のとおりとされていますが、(1)で述べたとおりその原因は様々ですので、「総合的に認定基準に従って障害等級を認定することになる」とされています。
交通事故によるめまいの後遺障害等級認定のポイント
少なくとも症状固定時には眼振検査及び平衡機能検査を行う
器質的損傷後のめまいの症状であれば当然検査はしていますが、頚椎捻挫に伴うめまいの場合には、
後遺障害等級の認定に必要な検査が行われていない場合もあります
(他方、医学的な観点からは、頚椎捻挫に伴うめまいは、頚椎捻挫に端を発しているのですから、整形外科のの先生がめまいの検査をしないのも無理からぬことです。)。
そのため、症状固定時には、主治医の先生に、めまいの検査(眼振検査及び平衡機能検査)をお願いすることが肝要です。
頚部の疼痛があるかを確認する
器質的損傷後のめまいの症状であれば、頚部の痛みがない場合もありますが、頚椎捻挫に伴うめまいは、頚部の痛みが併発しているのが通常です。
頚椎捻挫に伴うめまいであるのに、めまいの症状のみを訴えて、頚部の痛みが診断書に反映されていない場合も散見されます。
原因となる傷病があるか、きちんと訴えていて、診断書にも反映されているかは、確認しましょう。
念のため頚部のMRI撮影を依頼する
まれに、椎骨動脈という頚部にある動脈が、少し狭窄されている被害者の方もおられます。
そのような首をしている方の場合には、めまいの症状が発現し残りやすいと評価されるかもしれませんので、
頚部の痛みとともにめまいの症状が残存した場合には、MRIの撮影を主治医の先生に依頼することを考えてみてください。
めまいが初診時や事故から数日以内に発現していることを確認する
交通事故後のめまいの症状については、遅発するものもあるとされています。
しかしながら、賠償の世界、特に、後遺障害等級認定においては、めまいの発現時が事故後1週間以上経過していれば、経過として不自然と評価されることもあります。
そのため、後遺障害の申請を行う前には、きちんとめまいが初診時もしくは事故後間もない時期から訴えているかを確認しておきましょう。
仮に事故から数週間空いてめまいが発現していれば、事故とめまいとの因果関係が争われやすくなります。
そのような場合には、主治医の先生にめまいが遅発することもある旨の意見をいただいたり、めまい発現のメカニズムなどを聞いたほうが良いケースもあります。