交通事故コラム

靭帯損傷

足指の靭帯損傷

2020.08.11

足趾は、趾節骨(末節骨、中節骨、基節骨)、中足骨及び足根骨から構成されていますが、各々の骨は、多くの場合、靱帯という繊維状の組織で互いに繋がっています。

ここでは、足趾の靱帯損傷のうち、交通事故による外傷で多く生じる一方で、傷害もしくは後遺障害として見逃されることもある「リスフラン関節靱帯損傷」を、紹介します。

なお、骨折や靱帯損傷などの傷病にかかわらず、足の損傷の大事な点は、「足の機能を害する程度の損傷か」です。足は、体重を支える機能、姿勢を維持する機能や、推進力を生みだす機能があるのですが、足の構造が、そういった機能を支持しているのです。足趾も、このような足の構造を支えているので、足趾の損傷も、やはり「足の機能を害する程度の損傷か」という観点でみていきます。

足は、「アーチ(足弓)」と呼ばれる構造を形成して、体重の分散や衝撃の吸収などの機能を果たします。

アーチは、内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチという3つのアーチから構成されており、このアーチが崩れると、姿勢を維持する機能、体重を支える機能、推進力を生みだす機能のいずれかもしくは全部が害されます。

足の傷害は、この「アーチの崩れ」が起こっているかの確認が重要なのです。

リスフラン靭帯損傷

(1)概要

リスフラン靭帯は足の甲にある靭帯で、リスフラン関節中足骨、立方骨、楔上骨を繋関節)を支えている靭帯です。

 

リスフラン靱帯は、第2中足骨と楔状骨を連結している靱帯で、アーチの頂点を構成します。

足がつま先立ちのような状態になり、強く踏ん張った場合などに損傷する靱帯です。この靱帯が損傷すると、第2中足骨と楔状骨が離れてしまう(「離開」といいます。)ので、アーチが崩れてしまうのです。

(2)症状

リスフラン靱帯が損傷すると、足の甲の痛み、腫れ、圧痛、体重をかけたときの痛みが主たる症状として生じます。

(3)認定されうる後遺障害等級

後遺障害等級第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
後遺障害等級第14級9号 局部に神経症状を残すもの

(4)必要な検査など

ア 体重をかけた状態でのレントゲン撮影

リスフラン関節靱帯が損傷すると、第2中足骨と楔状骨が離開するので、これをレントゲンで確認します。

ただし、目に見えて離開しているほど損傷していればレントゲンで確認できるのですが、離開するほどではないが損傷している、という状態があります。この場合には、レントゲン撮影だけでは不十分です。

イ MRI

足の甲に局所的な痛みがある場合など、リスフラン関節靱帯の損傷が疑われる場合には、主治医の先生にMRIを撮影していただくことをお勧めします。MRIは、骨だけでなく軟部組織を撮影するものですので、軟部組織の最たるものである靱帯が緊張性を維持して連続しているか、それとも損傷しているかが、判断できます。

ウ CT

リスフラン関節靱帯を直接確認するわけではないのですが、交通事故を原因とした場合、リスフラン関節靱帯だけがピンポイントで損傷することはあまり考え難く、近くの骨の骨折やヒビなどが一緒に生じていることがあります。リスフラン関節靱帯の近くの骨折は、その骨折の場所や転位の有無などによって、リスフラン関節靱帯の損傷を推認できることがあります。

(5)注意点

リスフラン関節靱帯損傷を原因とする痛みを理由に、後遺障害を申請する場合の注意点は、以下のとおりです。

① 受傷時に足の甲の腫脹などの外傷所見が認められるかを確認する。

リスフラン関節を構成する靱帯が損傷しているのですから、受傷時には腫れなどが生じていることが普通です。診断書や診療録などで、受傷時腫脹の有無を確認しましょう。外傷所見が認められない場合には、後遺障害等級が否定されることもあります。

② MRIなど必要な検査をお願いする。

上述のように、レントゲンだけではリスフラン関節靱帯の損傷が確認できない場合があります。足は、骨、靱帯や筋肉が入り組んでいる場所なので、軟部組織を確認できるMRIの撮影を、主治医の先生にお願いする必要があります。

③ アーチの崩れを確認する。

冒頭述べたとおり、足の傷害ないし障害とは、アーチがどれだけ崩れているか、という観点から確認するのが大切です。

そのため、症状固定時点や終診時に、主治医の先生に再度検査を行ってもらい、アーチが崩れているかを確認する作業を行いましょう。具体的には、終診時に多方向からのレントゲン撮影をお願いする場合が多いと思われます。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。