物損
当て逃げで慰謝料は請求できる?弁護士解説
2024.12.24
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 当て逃げとは?
- 当て逃げで損害賠償請求をするための条件
- 当て逃げで慰謝料の請求はできる?
などについて解説します。
当て逃げとは?
当て逃げとは、加害者が物損事故を起こしたにもかかわらず警察に対する報告をせずに立ち去るような事案をいいます。
道路交通法第72条1項後段で、交通事故を起こした車両の運転手等は直ちに警察に報告する義務がありますが、
当て逃げはこの義務を果たしていないということになります。
駐車場内における車対車の当て逃げがイメージしやすいですが、
建造物や設置物などのに対する当て逃げもあります。
加害者の側からの通報がないため、加害者の特定が困難な場合もあります。
当て逃げで損害賠償請求をするための条件
当て逃げで損害賠償請求をするためにはどうしたら良いのでしょうか。
損害賠償請求は民法709条によります。
民法709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
ここで注目すべきなのが法律上保護される利益を「侵害した者」は、となっている点です。
つまり、そもそも当て逃げの加害者を特定しなければ損害賠償請求はできません。
当て逃げされた損害箇所を発見した時点で速やかに、警察に連絡することが必要です。
そのうえで弁護士に依頼するなどして、近隣の監視カメラを確認したりといった手段をとることで、当て逃げの加害者を特定する必要があります。
加害者の特定ができた場合には、加害者や加害者側保険会社に発生した損害を提示することで、賠償請求をすることができるようになります。
残念ながら加害者が判明しなかった場合には自身の車両保険などを利用せざるを得なくなります。
この際、請求できる損害は以下のようなものになります。
- 車両修理費か(車両時価額+買替諸費用)のどちらか高い方
- 家屋、店舗、設備等の修理費や営業損害など
ただし、発生した損害が「その当て逃げ」により発生したということを証明しなければなりません。
ですから、当て逃げが発覚してすぐに損害箇所の写真を撮ったり、修理見積もりを取ったりする必要があります。
なお、被害者が人的損害を負ったいわゆるひき逃げの場合には、「政府保障事業」の利用により一定程度の補償を受けることができます(国土交通省ホームページより)。
当て逃げで慰謝料の請求はできる?
当て逃げで慰謝料の請求はできるのでしょうか?
結論から言うと、ほぼ難しいと言えます。
当て逃げはここまで見てきたように物的損害が発生した場合を言います。
物的損害に関連する慰謝料の請求は「原則として、認められない」とされています(『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)』(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編)参照)。
ペットや動物が損害を受けた場合には一部慰謝料の請求が認められることも多いですが、
車や家屋の損害はほとんど慰謝料は認められず、原状回復費用に留まることが多いです。
その中でも慰謝料が認められた事例には以下のようなものがあります。
京都地方裁判所平成15年2月28日判決(自保ジャーナル1499号2頁)では、
加害者が飲酒運転により駐車車両に衝突し、そのまま現場から当て逃げした事案につき、
被害者が現場付近を探索し、数百メートル離れた駐車場で加害車両を発見したこと等から、10万円の慰謝料が認められています。
この判例に基づいて考えれば、当て逃げの犯人を捜すことに被害者自身が苦慮したような事情が認められるような場合には、
慰謝料の請求が可能と言えるかもしれません。
いずれにせよ、当て逃げで慰謝料の請求をすることは難しいため、
その他の修理費をはじめとする物的損害の賠償請求を適切に進めていく必要があります。
なお、お怪我が発生しているような場合には入通院慰謝料や後遺症慰謝料の請求が可能です。
当て逃げで弁護士に依頼するメリットはある?
当て逃げで弁護士に依頼するメリットはあるでしょうか?
加害者が判明しなければ損害賠償請求をすることが難しいことや、
請求が可能だったとしても原状回復のための費用の請求に留まることを考えると、
弁護士に依頼したとしても、弁護士費用分損をしてしまう可能性が大きいかもしれません。
ただし、弁護士費用特約の利用が可能な場合には、手出しなしで弁護士に依頼することができますので、
加入している保険に弁護士費用特約が付帯されているかを確認しておきましょう。