交通事故の解決実績

14級 むち打ち・捻挫等 人身傷害保険 会社員 後遺障害等級変更 逸失利益 非該当

【自損事故】任意保険会社への再調査で後遺障害等級非該当⇒14級!

Jさん 30代・男性・会社員

人身傷害保険 後遺障害等級14級 異議申し立て 等級変更 自損事故

今回紹介するのはJさん(30代・男性・会社員)の事例です。

Jさんは自損事故を起こしてしまいましたが、人身傷害保険に加入していたので、

自身の契約している任意保険会社から保険金の支払を受けることができます。

治療ののち後遺障害等級認定の申請をしましたが、結果は非該当。

しかし、弁護士の介入により後遺障害等級14級の認定を受けることができました。

 

このように、自損事故の場合でも、人身傷害保険に加入していた場合は、任意保険会社から保険金の支払を受けることができます。

しかし、任意保険会社からの保険金の支払には、保険金請求特有の注意点があります。

実際の解決事例を元にその注意点を弁護士が解説します。

 

小杉法律事務所では後遺症被害者側専門弁護士による無料相談を実施しております。

後遺症や損害賠償などでお困りの方は、ぜひ一度小杉法律事務所にお問い合わせください。

後遺症被害者側専門弁護士への無料相談はこちらのページから。

 

任意保険会社への保険金請求と相手方保険会社への損害賠償請求の違い3つ

①請求する場面が違う

任意保険会社への保険金請求と、相手方保険会社への損害賠償請求の最大の違いは、

請求する場面です。

相手方保険会社への損害賠償請求は、相手方(加害者)から損害を受けた時にしかできません。

つまり、自分が被害者であるときにしか、相手方保険会社への損害賠償請求はできません。

なぜなら損害賠償請求権は、第三者の不法行為により自身の権利や利益を侵害されたときにしか発生しないからです。

 

一方で、任意保険会社への保険金請求(人身傷害保険金請求)は、場面を限られません。

相手方(加害者)から損害を受けた時にも使えますが、自分で起こした交通事故(自損事故)で、

自分に損害が発生してしまった場合にも使うことができます。

なぜなら人身傷害保険は、損害の発生原因にかかわらず、自分に損害が発生してしまった時の備えとして

自分が契約し、保険金を支払っている保険だからです。

 

このように、第一義的には任意保険会社への保険金請求は、自分に損害が発生してしまった時すべてに、

相手方保険会社への損害賠償請求は、相手方から損害を受けた時にのみ、行えると思って良いでしょう。

 

ただし、任意保険会社への保険金請求は、相手方保険会社への損害賠償請求を行う際に併せて行うことができます。

支払ってもらえる額が2倍になるわけではありませんが、上手く利用することで受け取れる金額を多くすることができます。

詳しくは、死亡事故の場合ですが、過失があっても人身傷害保険を使って満額の損害賠償金を勝ち取る方法を解説したこちらのページをご覧ください。

 

②支払基準が違う

任意保険会社への保険金請求と相手方保険会社への損害賠償請求との違いの2つ目は、

支払基準です。

 

実際の事例を見てみるのが最もわかりやすいと思いますので、

今回は東京海上日動火災保険株式会社の約款を実際に見ながら説明していきます。

今回参照するのは東京海上日動火災保険株式会社トータルアシスト自動車保険約款です。

 

第2章傷害保険 人身傷害条項第4条(お支払いする保険金)(1)

1回の人身傷害事故について、当会社は被保険者1名について次の算式によって算出される額を保険金として支払います。ただし、1回の人身傷害事故について当会社の支払う保険金の額は、被保険者1名について、保険証券記載の保険金額を限度とします。

算式:人身傷害条項の規定により決定された損害の額+諸費用

 

第1章賠償責任保険 賠償責任条項第4条(お支払いする保険金)(1)①対人賠償保険金

次の算式によって算出される額。ただし、生命または身体を害された者1名について、それぞれ保険証券記載の対人賠償保険金額を限度とします。

算式:対人事故により被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額+諸費用-自賠責保険等によって支払われる金額

 

諸費用や、自賠責保険等によって支払われる金額は今回はあまり気にする必要はありません。

今回注目すべきポイントは、↓の部分です。

人身傷害保険(任意保険会社への保険金請求で適用される)支払基準 人身傷害条項の規定により決定された損害の額
対人賠償保険(相手方保険会社への損害賠償請求で適用される)支払基準 対人事故により被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額

 

人身傷害保険の支払基準は、身傷害条項の規定により決定された損害の額とされています。

人身傷害条項の規定は、保険会社(今回の場合は東京海上日動火災保険株式会社)の約款の規定によります。

特定の場合(※)を除いてこの人身傷害条項の規定は、必ず適用されます。

弁護士が介入したからといって、人身傷害条項の規定は変わりません。

裁判基準などを提示して争うこともできず、支払われる保険金の額も変わりません。

※特定の場合については、先ほどご紹介した人身傷害保険を使って満額の賠償金を勝ち取る方法を解説したページにてご紹介しています。

 

一方で、対人賠償保険(相手方保険会社への損害賠償請求で適用される)支払基準は、

法律上の損害賠償責任の額とされています。

この法律上の損害賠償責任の額については、大きく分けて3つの基準があります。

  1. 自賠責保険基準:自動車所有者が加入を義務付けられている自賠責保険における基準。3つの基準の中で最も低額。
  2. 対人賠償基準:対人賠償保険(相手方保険会社)の基準。自賠責保険より高くなるが、相手方保険会社はできるだけ支払額を低くしようとする。
  3. 裁判(弁護士)基準:裁判を経て裁判所が認定してくれる賠償金の基準。対人賠償基準より高く、最も適切な基準といえる。

法律上の損害賠償責任の額は、この3つの基準の間で決まります。

つまり、人身傷害保険の支払基準のように、確定的な基準がありません。

相手方保険会社は、支払う保険金が少なくなれば、その分自社の利益が増えるわけですから、できるだけ支払額は少なくしようとします。

一方で弁護士は、裁判を経て裁判所が認定してくれる賠償金の基準を元に支払われるべき金額を計算しますから、

当然両者の間には金額の差が生じます。

そこで、示談交渉を行い、お互いが納得できるまで金額のすり合わせが行われます。

 

このように、対人賠償保険支払基準は交渉によって変化します。

なお、余談ですが、被害者(損害賠償請求権者)が損害賠償請求について弁護士に依頼するということは、

相手方保険会社からすれば、裁判につながる可能性がちらつくことを意味します。

裁判になれば、事件解決までが長期化するだけでなく、裁判基準での支払いをする必要が生じる可能性があり、

さらには遅延損害金という利息まで支払わなければならなくなる可能性が生じます。

保険会社としてはできるだけ支払額は少なく、かつ事件は速やかに解決させたいですから、

裁判につながらないように示談交渉だけで事件を終えたいと考えます。

これが、弁護士が介入するだけで賠償金の額が上がるからくりです。

 

③後遺障害等級認定の判断をしてくれる機関が違う

任意保険会社への保険金請求と相手方保険会社への損害賠償請求との違いの3つ目は、

後遺障害等級を認定の判断をしてくれる機関です。

任意保険会社への保険金請求の場合、後遺障害等級の認定の判断をしてくれるのは、

基本的には任意保険会社です。

ただし、事案によっては任意保険会社が後遺障害等級の認定の判断のみを、

被害者の方が契約している自賠責保険(自賠責損害調査事務所)に委託することもあります。

Jさんの事例では、任意保険会社が1回目の後遺障害等級認定の判断を自賠責損害調査事務所に委託していました。

なお、今回の再調査では任意保険会社の顧問医による判断がされています。

 

一方で、相手方保険会社への損害賠償請求の場合には、後遺障害等級の認定の判断をしてくれるのは、

相手方(加害者側)の自賠責保険です。

相手方の自賠責保険への後遺障害等級の認定の申請には、被害者が自分で書類を用意して行う被害者請求と、

相手方保険会社が書類を用意して行う事前認定とがあります。

 

認定された後遺障害等級は支払う保険金の額に大きく影響しますから、相手方保険会社とすれば、

できれば認定される後遺障害等級は低い方が良いです。

事前認定の場合には、高い後遺障害等級が認定されないように、

被害者に不利な意見書を取り付けて提出したりすることもあります。

ですので、小杉法律事務所では損害賠償請求の際には原則必ず被害者請求を行っています。

 

ですが、ここで重要なのは認定された後遺障害等級は支払う保険金の額に大きく影響するということです。

先ほど、任意保険会社への保険金請求の場合、後遺障害等級の認定の判断をしてくれるのは、

基本的には任意保険会社だとご説明しました。

そして、その等級の認定に基づいて保険金を支払うのも任意保険会社です。

任意保険会社とすれば、等級認定がされると支払う保険金が多くなるため、ボーダーラインであれば非該当の判断を出したいものです。

 

つまり、任意保険会社への後遺障害等級の申請は、損害賠償請求時の相手方保険会社への後遺障害等級の認定の申請に比べて難易度が高いと言えます。

 

このように、任意保険会社への保険金請求と、相手方保険会社への損害賠償請求は様々な違いがあります。

任意保険会社への保険金請求の特徴を確認できたところで、実際のJさんの事案についてみていきましょう。

 

交通事故&治療の状況

Jさんは自宅の駐車場から道に出ようとしているところでした。

そこで、誤ってアクセルを踏み込んでしまい、向かいの壁に衝突してしまいました。

今回は加害者といえるような第三者がいませんから、自損事故ということになります。

 

フレームが損傷して廃車になってしまうほどの衝撃で、頚椎捻挫・腰椎捻挫等の怪我を負い、

約半年の通院を余儀なくされました。

 

幸いJさんは任意保険に加入していましたので、治療費は任意保険が支払ってくれました。

約半年間の通院での治療を続けましたが、首の痛みが治らず、後遺症として残ってしまいました。

 

任意保険会社からのすすめで、後遺障害等級の認定の申請をすることになりました。

しかし、結果は非該当

Jさんは、後遺症が残っているにもかかわらず、後遺障害等級が認定されなかったことに納得がいかず、

弁護士に依頼することにしました。

 

弁護士木村治枝の介入

木村治枝弁護士法律相談(小杉法律事務所)

弁護士費用特約がないと損をする可能性もあるので注意

これまで見てきたように、任意保険会社への保険金請求の場合は基本的には基準が厳格に適用されるため、

弁護士が介入することによって変わる部分はほとんどありません。

Jさんの事例でも、弁護士が介入することによって変わるのは、後遺障害等級認定に対する判断だけです。

したがって、後遺障害等級認定に対する判断が変更にならなければ、弁護士費用分の損をすることになってしまいます。

弁護士費用特約がある場合には、損をすることはありませんが、自損事故の場合には弁護士費用特約は使えないことが多いため、

一度保険会社担当者に確認してみることをお勧めします。

 

Jさんの事例でも、Jさんは弁護士費用特約をご自身の保険に付けていたものの、保険会社担当者から自損事故の場合は使えませんと言われてしまいました。

弁護士費用特約がないと損をする可能性もあるので、法律相談時にしっかりその点を協議しましょう

しっかり事情を把握したうえで、見立てを提示し、依頼した方が得かどうかを丁寧に教えてくれる弁護士に依頼すべきです。

弁護士木村治枝はJさんに損をさせることがないよう、後遺障害等級非該当の認定を覆せるかを十分に検討するため、

詳しく事故や通院の状況や、非該当理由、医師の診断内容を聞きました。

 

弁護士木村治枝は、Jさんから伺った内容から、十分に後遺障害等級の変更の可能性があると思いましたが、

念のため、Jさんにも、後遺障害等級が変更にならなかった場合には損をすることも伝えました。

Jさんから、その了承を得ることもでき、依頼していただくことになりました。

 

①まずは非該当判断の理由をチェック!

再調査依頼を行う際にまずやるべきことは、なぜ前回の申請が非該当という判断になったのかという理由をチェックすることです。

当然ですが、前回の申請と同じ証拠を提出して、同じ主張をしても判断が覆るわけがありません。

判断を覆すためには、非該当判断が下された理由をしっかりチェックして、的確な反論をしていくことが何より重要です。

 

Jさんの首の痛みについて、後遺障害には該当しないと判断された理由は以下のとおりです。

  1. 本件事故による骨折や脱臼等の外傷性の異常所見、脊髄・神経根の圧迫所見がいずれも認められないこと
  2. 有意な神経学的異常所見に乏しいこと
  3. 1・2より、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることが困難なこと
  4. 症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いこと

それぞれの理由について詳しく見ていく前に、Jさんの首の痛みに認められる可能性がある後遺障害等級についてみていきます。

自動車損害賠償保障法施行令に定める後遺障害別等級表より引用)

  • 後遺障害等級第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 後遺障害等級第14級9号 局部に神経症状を残すもの

頚部捻挫等の診断名を受け、痛み(疼痛)が残った場合に認定される可能性がある後遺障害等級はこの2つです。

この第12級13号と第14級9号の違いは、「頑固な」神経症状かどうかという点です。

では、この「頑固」な神経症状かどうかをどうやって区別しているかというと、自賠責調査事務所は、

他覚的所見」があるかどうかで判断しています。

 

「他覚的所見」とは、文字のとおり「他覚」的な「所見」です。

「所見」とは、見た結果や、見た結果に基づく医師の判断をいいます。

「他覚」は「自覚」の反対です。「他覚的」は「客観的」とも言い換えられるでしょうか。

つまり、「他覚」的な「所見」とは、客観的に見た結果や、見た結果に基づく医師の判断をいい、

この有無によって「頑固な」神経症状かどうか、ひいては第12級13号か第14級9号かの区別がされているということです。

「他覚的所見」の典型例は、ヘルニアが分かる画像や、神経に異常をきたしていることが分かる検査結果などです。

 

最近この「他覚的所見」と似たような言葉を目にしましたよね?

そうです。Jさんの後遺障害が非該当とされた理由の3「他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることが困難なこと」です。

つまりこの理由の3、そして3につながる1と2は首の痛みを客観的に証明する画像や検査結果がないですよと言っているわけです。

ということは、この1・2・3の理由は、すべてJさんの首の痛みが後遺障害等級第12級13号の要件を満たさない理由になります。

 

逆に言えば、この客観的に証明する画像(MRIやCT)、神経学的検査結果があれば第12級13号が認められるわけですが、

Jさんの事例では、有意な証拠となり得る画像や検査結果がありませんでした。

 

そこで、理由の4「症状経過、治療状況等も勘案した結果、将来においても回復が困難と見込まれる障害とは捉え難いこと」について検討します。

この理由の4は、第12級13号の認定にも必要な要件ではありますが、

最低限これを満たしていれば第14級9号は認められるという要件でもあります。

 

理由の4の構成は、「症状経過、治療状況等」を勘案⇒「将来においても回復が困難と見込まれる障害」とは捉え難いとなっていますから、

「将来においても回復が困難と見込まれる障害」と捉えられるような、「症状経過、治療状況等」であったと証明すれば良いわけです。

 

より具体的には、次のような要件が挙げられます。なお、詳細についてはむち打ち徹底解説のページで解説していますので、ご興味がございましたらご覧ください。

  1. 常時痛であること(※)
  2. 事故による衝撃が軽微でないこと
  3. 症状が一貫しており、かつ経過が自然なこと
  4. 所見がないとはいえないこと
  5. 治療が一定期間継続して行われていること
  6. 通院先の病院の選定を間違っていないこと

 

Jさんの事故態様、そしてその後の治療経過がこの6つの要件を満たしますよということを、新たな証拠を持って主張・立証することができれば、

後遺障害等級第14級9号は認定されることになります。

実際に見ていきましょう。

 

②要件を満たす証拠を収集&主張・立証!

改めて、後遺障害等級第14級9号が認定されるための6つの要件と、それを示すための証拠を整理します。

1.常時痛であること(※) 後遺障害診断書の自覚症状欄に常時痛と記載があること

なお、首などの日常生活で頻繁に動作が必要な部位は可動時痛でも可

2.事故による衝撃が軽微でないこと 刑事記録・車両損害写真・修理見積など
3.症状が一貫しており、かつ経過が自然なこと 事故直後から同じ症状を訴えていること

事故直後が最もひどく、治療を続けていくうちに徐々に緩和したが固定していること

診断書・カルテなど

4.所見がないとはいえないこと 画像上痛みの原因がないことが証明できるほどに所見がないわけではないこと

MRI・CTなど

5.治療が一定期間継続して行われていること 事故直後に通院し、かつ約半年、週2~3回の通院を継続していること

診療報酬明細書・カルテなど

6.通院先の病院の選定を間違っていないこと 整骨院だけでなく、整形外科にも通院していること

診断書など

 

1.常時痛であること(※)

常時痛であることの証明は、後遺障害診断書の自覚症状欄で行います。

この自覚症状欄にそもそも首の痛みがあると書いていない場合には、後遺障害等級認定の判断に立ち入ってすらもらえません。

したがってこの後遺障害診断書の自覚症状欄は、後遺障害等級認定において非常に重要な場所ということになります。

(小杉法律事務所では、この後遺障害診断書の記載を医師に訂正していただくことで後遺障害等級を獲得した事例が多くございます。)

 

今回のJさんの事例では、弁護士の介入前に既に後遺障害診断書が作成されていましたが、幸い自覚症状欄には「頚部痛」と簡潔な記載がされていたのでこの要件はクリアです。

なお、首や腰のように、日常生活動作において頻繁に可動しなければならない部位については、

可動時痛(○○した時に痛む)といった記載であっても、後遺障害等級認定判断の対象となります。

 

2.事故による衝撃が軽微でないこと

これは主に、刑事記録や車両損害写真、修理見積などから証明することが多いです。

事故によって被害者の身体にかかった衝撃が軽微でなければ、後遺症が残ることも自然だと考えられます。

ただし今回のJさんの事例は私有地内で発生した自損事故です。

例えば公道を走っていてガードレールに衝突したような自損事故の場合には、起こしてしまった人は交通事故として届出をする義務がありますが、

Jさんは私有地内で事故を起こしていますから、警察に届出をしていませんでした。

警察に届出をしていないので、交通事故証明書や、刑事記録の作成は当然されていません。

 

つまり、今回事故による衝撃が軽微でないことを証明するために提出できる証拠は、車両損害写真と修理見積になります。

Jさんの事例では、車両写真からエアバッグが作動しており、車両前部がおおきく凹んでいることを示し、

修理見積から、修理箇所の多さや修理費用の高さを示し、併せて事故による衝撃が軽微でないと主張しました。

 

3.症状が一貫しており、かつ経過が自然なこと

むち打ちによる頚部痛などの症状は、事故直後が最も重く、治療を続けていくにつれてだんだんと良くなっていくのが通常です。

つまり、事故直後からその症状を訴え続けているという一貫性と、徐々に良くなっている(もしくは変わっていない)という経過の自然さが必要です。

良くなったり悪くなったりしていると、経過が不自然なため後遺障害等級判断は非該当とされることが多いです。

 

この、症状の一貫性及び経過の自然さを示すために最も有効な証拠となるのはカルテです。

Jさんの事例でも、カルテを新たに取り付けて、この要件を満たすことの主張を行いました。

 

4.所見がないとはいえないこと

この要件は、若干あいまいな要件です。

10代・20代の若い方の場合、変性所見が全く見られないようなきれいなMRIやCTが写ることがあります。

こういった画像を提出してしまうと、痛みの原因が全く無いではないかと言われてしまい、非該当の判断がされることがあります。

Jさんは30代ですので、この要件はあまり気にしなくて良い要件と言えるでしょう。

なお、Jさんの事例では、後遺障害等級第12級13号が認められるほどの有意な証拠とは言えないまでも、変性所見があるとは言えるようなMRI画像がありました。

この画像を、後遺障害等級第12級13号を満たす他覚的所見があるとの主張に使うのではなく、

変性所見が認められるため、変性所見が全くない健康な方よりも後遺症が残りやすいという、症状回復の阻害要因の主張に利用しました。

こういった主張は、後遺障害等級認定を熟知している後遺症被害者専門弁護士にしかできない主張だといえるでしょう。

 

5.治療が一定期間継続して行われていること

この要件は、事故直後に通院し、かつ約半年間、週2~3回の通院を続けていることと具体化できます。

  • 後遺症が残るような事故なら、事故直後に辛くて通院しているはず。
  • むち打ちで後遺症が残るかどうかの判断の為には約半年間は継続して観察する必要がある。
  • 後遺症が残るほど辛いなら、週2~3回は通院するはず。(最低でも2週間以上間が空いたりはしない)

といった理由からこの要件が設けられています。

この要件を満たすことを示す証拠として最も有意な証拠は、カルテですね。

事故直後から弁護士が介入する場合には、こういった要件があることをお伝えした上で、

できるだけこの要件を満たす通院をしていただくようお願いしています。弁護士が早期に介入した方が良い理由の1つです。

ただ、Jさんが弁護士に依頼したのは症状固定後でしたから、ここはもう変えようがありません。

幸い、Jさんは約半年間の通院を続けられていましたから、この要件はクリアしていました。

 

6.通院先の病院の選定を間違っていないこと

自賠責損害調査事務所は、整骨院よりも、病院(整形外科)での通院を重視しています。

整骨院の方が施術が丁寧で、夕方以降も通院が可能という場合もありますので、整骨院通院をしてはいけないというわけではありません。

ただ、最低月1回は整形外科に通うようにしましょう。

Jさんは整形外科に通院されていたので、この要件もクリアです。

 

1~6について、それぞれ新たな証拠を提出し、Jさんの首の痛みが後遺障害等級第14級9号に該当するため再調査してほしいという依頼を出しました。

 

再調査の結果、後遺障害等級第14級9号が認定!

再調査の結果、Jさんの首の痛みについて後遺障害等級第14級9号が認定されました!

任意保険会社での後遺障害等級認定に再調査依頼を出し、それによって判断が覆るというのは稀です。

丁寧な分析と証拠収集が功を奏した例だといえるでしょう。

 

後遺障害等級第14級9号が認定されていなかったら?

後遺障害等級第14級9号が認定されていなかった場合、後遺症が残ったことによって将来にわたって働けなくなることによる損害である逸失利益と、

後遺症が残ったことに対する慰謝料である後遺症慰謝料は発生していなかったことになります。0円です。

残念ながら逸失利益や後遺症慰謝料の算定方法についての交渉は、人身傷害保険の支払基準が明確に適用される以上あまりできませんでしたが、

弁護士の介入で後遺障害等級第14級9号が認定されたことにより、Jさんの事例では約100万円の増額に成功しました。

 

依頼者の声(Jさん・30代・男性・会社員)

 

自損事故ということもあり、他の弁護士事務所はどこも依頼を受けてくれませんでした。

しかし、小杉法律事務所の木村弁護士は、親身になって話を聞いてくださり、損をするリスクがあることも十分に説明してくださいました。

結果的に後遺症も認められたので、木村弁護士に依頼して本当に良かったです。

 

弁護士木村治枝のコメント:自損事故の場合でも、弁護士に依頼することで得になる場合があります。

自損事故による任意保険会社に対する保険金請求は、弁護士の介入にあまり意味が無いように思われがちです。

しかし、今回のJさんの事例のように、後遺障害等級認定の判断については弁護士の介入が大きな意味を持つこともあります。

今回は一度事前認定で非該当の判断が出た後の受任でしたが、事故直後からの受任であれば、後遺障害診断書の作成などから弁護士が介入できるので、

更に効果は大きいものになるでしょう。

一方で、自損事故の場合は弁護士費用特約が使えないことも多く、場合によっては損をする可能性もあります。

任意保険会社に対する保険金請求については、そういったリスクもしっかり説明してくれる弁護士に依頼することをお勧めします。

小杉法律事務所の後遺症被害者専門弁護士への無料相談はこちらのページから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。