圧迫骨折・体幹骨骨折 上肢 神経症状
鎖骨骨折の後遺症(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、鎖骨骨折後の後遺症について整理しています。
鎖骨とは
上肢の3大関節である肩関節を構成する骨格の一つです。肩甲骨、上腕骨とともに肩関節を構成します。
全体に緩いS字状の湾曲を呈する長骨で、胸骨と肩甲骨を接続しています。
鎖骨骨折とは
遠位端骨折・骨幹部骨折・近位端骨折に大別され、発生頻度は約15%、約80%、約5%といわれます。
(今日の整形外科治療指針第8版運動器・整形外科(医学書院)、414頁)
交通事故で受傷することも
鎖骨骨折は骨折全体の約10%の割合を占め、交通事故やスポーツにより受傷することが多いといわれます。
痛み等の症状について
骨折したところの痛みや肩関節の可動域制限などが生じえます。
鎖骨の変形障害にも注意しましょう。
認定されうる後遺障害
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予測されます。
機能障害
鎖骨骨折の影響で肩関節に動きにくさが残存したと判断されれば認定されます。
別表第二第8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第二第10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの |
別表第二第12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの |
※「関節の用を廃したもの」とは、関節が完全強直または完全強直に近い状態となったもの、関節の完全弛緩性麻痺または完全弛緩性麻痺に近い状態になったものを言います。
「完全強直」したものとは、関節の可動域が全くないものをいい、「完全強直に近い状態」になったものとは、原則として、健側の関節可動域の10%程度以下に制限されているものをいいます。
また、「完全弛緩性麻痺に近い状態」にあるものとは、他動では可動するものの、自動では健側の関節可動域の10%程度以下となったものをいいます。
この「10%程度」とは、健側の関節可動域の10%に相当する角度を5度単位で切り上げて計算されます。
なお、関節可動域が10度以下に制限されている場合は全て「これに近い状態」として取り扱われます。
変形障害
「その他体幹骨」の変形として、変形障害での認定可能性があります。
「著しい変形」とは、裸体となったとき、変形や欠損が明らかにわかる程度のもので、レントゲン写真によってはじめて見出される程度のものは該当しません(この点については、採骨による変形の場合も同様です)。
後遺障害申請時には変形や欠損が外観上判別しやすい写真等を撮影し、添付するのが有用です。
別表第二第12級5号 | 鎖骨に変形を残すもの |
神経障害
骨折部位に疼痛等が残存した場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
認定上のポイント
検査
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、414頁)
X線は骨折部位を中心に前後像、30°頭側斜位像の2方向撮影を行います。
3D-CTは骨折形態の把握に有用です。
変形障害に警戒を
鎖骨を骨折した場合、鎖骨に変形が生じつつ、肩関節に可動域制限が生じることがおこりえます。
例えば鎖骨の変形で変形障害12級、可動域制限で機能障害12級だとして、この場合は両者を併合処理して等級が繰り上げになり、併合11級での認定になります。
後遺障害等級が異なれば請求できる損害賠償金は変動しますので(少なくとも後遺障害慰謝料は増額します。)、このようなケースで可動域制限だけを念頭において後遺障害申請をしてしまわないよう注意が必要です。
弁護士に相談を
交通事故等で鎖骨骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、鎖骨骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。