骨折 圧迫骨折・体幹骨骨折 上肢 神経症状
鎖骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、鎖骨骨折について整理しています。
→鎖骨骨折含む「その他体幹骨」の骨折についてはこちらの記事でも整理しています。
鎖骨とは
上肢の3大関節である肩関節(鎖骨、肩甲骨、上腕骨)を構成する骨格の一つです。
全体に緩いS字状の湾曲を呈する長骨で、胸骨と肩甲骨を接続しています。
内側の胸骨端は胸骨との間に胸鎖関節(胸鎖靱帯)、外側部は扁平化し、肩甲骨との間に肩鎖関節(肩鎖靱帯)を形成しています。肩鎖関節の安定性を保つために重要な靱帯として、鎖骨と烏口突起を結ぶ烏口鎖骨靱帯があります。
どのような場合に鎖骨骨折を受傷するか
上肢を伸展して倒れたり、肩を下にして転倒した場合の介達外力によって受傷する例が多いと言われています。
鎖骨骨折は骨折全体の約10%を占め、交通事故やスポーツにより受傷することが多いです。
鎖骨骨折に合併しうる他の損傷
靱帯損傷
鎖骨につながっている胸鎖靱帯、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯の損傷があり得ます。
腱板損傷
鎖骨の外側部には棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋からなる腱板が存在しますが、鎖骨骨折の際に腱板を損傷することもあります。
肩甲骨骨折
鎖骨骨折に伴い、肩甲骨関節窩骨折が発生する場合があります。
腕神経叢の損傷
腕神経叢は第5頚神経(C5)から第1胸神経(T1)の前枝により構成され、多くの抹消神経を分枝し、上肢機能を支配しています。ですので、腕神経叢損傷では上肢の重大な機能障害が生じることになります。オートバイの転倒事故、高所からの転落や落下物にあたるなどの高エネルギー外傷で発生することが多いと言われています。
胸骨の骨折
鎖骨骨折の症状にはどのようなものがあるか
骨折部位の神経症状
骨折部位に痛み等の神経症状が残存する可能性があります。
→鎖骨骨折後に生じる痛みについてはこちらの記事でも整理しています。
機能障害
肩関節の動きが悪くなり、可動域制限が残存する可能性があります。
変形障害
骨折部位が変形したまま癒合するなどし、変形障害が残存する可能性があります。
鎖骨骨折の分類・治療指針
(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、P414)
遠位端骨折(体幹から遠い)、骨幹部骨折(中間)、近位端骨折(体幹に近い)に分類されます。
最も頻度が高いのは骨幹部骨折で、鎖骨骨折のうち約80%がそうだと言われています。
鎖骨骨幹部骨折
保存療法が原則ですが、解放骨折、神経血管損傷例は絶対的手術適用だと言われす。
保存療法:スリングや鎖骨バンド固定を行い仮骨出現後は積極的に可動域訓練を行います。
鎖骨遠位端骨折
安定型骨折は保存療法、不安定型骨折は手術療法の適用です。
鎖骨近位端骨折
全例、保存療法を原則とします。
診断・検査
X線画像診断は必須です。
なんらかの後遺障害が残存した場合、X線診断に加えてCT画像検査を行い、骨折部位に疼痛や動きにくさの原因になりうる不整癒合等が残っていないか確認するのも有用です。
鎖骨骨折時に靱帯や腱板を損傷した可能性もありますので、こちらについてはMRI画像検査が有用な場合もあります。
腱板損傷を疑う場合、徒手検査としてPainful arc sign、Drop arm sign、Lift off test、インピンジメントサイン等の検査方法があります。
鎖骨骨折後に認定されうる後遺障害等級
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予測されます。
機能障害(可動域制限)では8級、10級、12級、変形障害では12級、神経症状では12級か14級の認定可能性があります。
→鎖骨骨折後の後遺症についてはこちらの記事で認定区分や検査方法等の詳細を整理しています。
弁護士に相談を
交通事故等で鎖骨骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、鎖骨骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。