後遺障害等級の解説

圧迫骨折・体幹骨骨折 上肢 神経症状

肩甲骨の骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)

肩甲骨とは

肩甲骨の位置

上肢の3大関節である肩関節(鎖骨、肩甲骨、上腕骨)を構成する骨格の一つです。

上肢の3大関節についてはこちらの記事をご覧ください。

 

鎖骨と周辺の構造

胸郭の後外側部、第2~8肋骨の高さに存在する扁平な骨で、体部、頚部、関節窩、烏口突起、肩甲棘、肩峰より構成されています。

肩峰は肩鎖関節を介して鎖骨と連結し、関節窩は上腕骨頭との間に肩甲上腕関節を形成します。

どのようなときに肩甲骨骨折を受傷するか

比較的頻度の低い外傷で、部位別にみれば体部と頚部の骨折が多いとされています。

関節窩骨折は脱臼に伴って起こることが多く、烏口突起骨折は肩鎖関節脱臼、鎖骨骨折などに合併することがあります。

肩甲骨骨折に合併しうる他の損傷

肩鎖関節脱臼

烏口突起骨折の場合、肩鎖関節脱臼に合併する可能性があります。

肩鎖関節は、鎖骨の肩峰端と肩甲骨の肩峰により構成される靱帯支持性の関節です。肩鎖関節面をつなぐ肩鎖靱帯と、鎖骨と肩甲骨の烏口突起を結ぶ烏口鎖骨靱帯が関節の安定性に関係しています。

交通事故等の外傷やスポーツ、特にラグビーや柔道などのコンタクトスポーツ時に、衝突や転倒によって肩鎖関節部への直達または介達外力が加わり生じることが多いと言われています。

X線及び臨床所見により損傷程度を分類することができ、Rockwood(ロックウッド)分類が用いられることが多いです。

鎖骨骨折

烏口突起骨折の場合、鎖骨骨折に合併する可能性があります。

鎖骨骨折についての詳しい情報はこちらの記事をご覧ください。

胸骨骨折

胸骨骨折の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

肩甲骨骨折の症状にはどのようなものがあるか

骨折部位の神経症状

骨折部位に痛み等の神経症状が残存する可能性があります。

機能障害

肩関節の動きが悪くなり、可動域制限が残存する可能性があります。

肩甲骨骨折後に認定されうる後遺障害等級

認定されうる後遺障害等級

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予測されます。

機能障害

肩甲骨骨折の影響で肩関節に動きにくさが残存した場合です。審査の対象になるのは他動値です。

別表第二第8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
別表第二第10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

→患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの

別表第二第12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの

「関節の用を廃したもの」とは、関節が完全強直または完全強直に近い状態となったもの、関節の完全弛緩性麻痺または完全弛緩性麻痺に近い状態になったものを言います。

「完全強直」したものとは、関節の可動域が全くないものをいい、「完全強直に近い状態」になったものとは、原則として、健側の関節可動域の10%程度以下に制限されているものをいいます。

この「10%程度」とは、健側の関節可動域の10%に相当する角度を5度単位で切り上げて計算されます。

なお、関節可動域が10度以下に制限されている場合は全て「これに近い状態」として取り扱われます。

神経症状

別表第二第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
別表第二第14級9号 局部に神経症状を残すもの

変形障害

別表第二第12級5号 肩甲骨に著しい変形を残すもの

肩甲骨の変形障害の認定基準についてはこちらの記事で整理しております。

検査方法

単純X線検査では、特に前後方向撮影像とscapular Y撮影像が有用と言われています。関節窩骨折の場合、CTで関節内骨折の形態を正確に把握する必要があります。

弁護士に相談を

交通事故等で肩甲骨骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、肩甲骨骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。