圧迫骨折・体幹骨骨折 神経症状
胸骨の骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、胸骨の骨折について整理しています。
胸骨とは
胸骨とは、人体の胸部前面にある骨のことで、上部から順に胸骨柄(きょうこつへい)、胸骨角(きょうこっかく)、胸骨体(きょうこつたい)、剣状突起という4つの部位から構成されます。
※上のイラストは胸郭を前面からみているものです。「胸骨角」は胸骨柄と胸骨体のつなぎ目部分です。
胸骨は肋軟骨(ろくなんこつ)を介して肋骨(ろっこつ)(第1~第7肋骨)と直接つながって、肋骨は身体の後面で胸椎の椎体のつながっています。
胸骨、肋軟骨、肋骨、胸椎を合わせて胸郭(きょうかく)と呼びます。
胸骨骨折の原因
外力が前胸部成正中に作用したときに発生し、外傷によるものでは直達外力と介達外力にわけられます。
※直達外力:受傷部位に直接的に働く外力
※介達外力:受傷部位から離れた部位に働く外力、間接的に働く外力
直達外力では交通事故でのハンドルやシートベルトによる打撲などにより生じます。
介達外力では屈曲・圧縮の力が加わった際に第1・2肋骨を通じて胸骨柄が後方に引かれ、力学的に脆弱な胸骨角付近に骨折を生じます。
肋骨、肩甲骨、鎖骨、胸椎の骨折と合併していることが多いと言われます。
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、815頁)(今日の整形外科治療指針(第8版)(医学書院)、660頁)
胸骨骨折の症状
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、815頁)
深呼吸や咳をしたり、体を動かしたときに増強する前胸部の自発痛に加え、圧痛・主張を認めます。
転位のあるものでは陥没もしくは突出した骨片により前胸部に階段状変形を認めます。
治療方針
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、555頁)
バストバンド固定などの保存療法で骨癒合が得られますが、遷延癒合例や胸椎骨折を伴った不安定性骨折では、金属プレートを用いた整復固定手術を行うこともあります。
認定されうる後遺障害等級
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害としては、以下のようなものが想定できます。
変形障害
別表第二第12級5号 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
「著しい変形」とは、裸体となったとき、変形や欠損が明らかにわかる程度のもので、レントゲン写真によってはじめて見出される程度のものは該当しません(この点については、採骨による変形の場合も同様です)。
後遺障害申請時には変形や欠損が外観上判別しやすい写真を撮影し、添付するのが有用です。
神経症状
受傷部位に疼痛等が残存した場合です。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
検査について
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、815頁)
単純X線検査では20°斜位像・側面像の2方向を撮影します。受傷機転や外力の大きさから、脊椎や肋骨など他の部位の骨折や胸腹部の臓器損傷の合併が疑われる場合にはCTが有用です。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で胸骨骨折を受傷してしまうことがあります。治療費や休業損害、慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。
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自賠責保険の等級認定上、胸骨受傷後の胸骨の変形障害は「その他体幹骨」の変形障害として分類され、「その他体幹骨」と「脊柱」をまとめて「体幹」と呼称します。