圧迫骨折・体幹骨骨折 神経症状
頚椎損傷の後遺症(弁護士法人小杉法律事務所監修)
こちらの記事では、頚椎損傷による後遺症について整理しています。
頚椎とは
脊椎のうち、頚部にあるものを頚椎といいます。
頚椎は7つありますが、上部から下部に向かって、「C」の〇番という風に表記されます。
例えば第1頚椎はC1、第4頚椎はC4、といった具合です。
ただ、C〇と表記したときに、必ずそれが脊椎としての頚椎のことを指すのかどうかは文脈によります。脊椎ではなく、髄節や神経根のことを指してC〇等の表現をすることもありますので、ご留意ください。
→髄節や神経根についてはこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
頚椎損傷とは
頚椎含む椎体は基本的には、椎体(前側)と椎弓(後側)から構成され、椎弓には左右に1本ずつの横突起と、後方に棘突起が生えています。
これらのどこかが損傷すれば頚椎損傷ということになります。
椎体だけが損傷することもありますし、椎弓や突起だけが損傷することもあります。
破裂骨折や脱臼骨折等が生じ、椎体の後方にある脊髄を損傷すれば、脊髄損傷を合併することもあります。
→頚椎損傷の分類等について、詳細はこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
症状
骨折部位に強い疼痛が生じます。
脊髄損傷を合併すれば、損傷した高位に応じた領域にしびれや筋力低下が発生することがあります。
原因
頚椎損傷含む脊椎損傷の原因の多くは交通事故、労働災害、高所からの転落といった高エネルギー外傷です。
骨粗鬆症などにより、骨密度が低下した患者で起きる椎体骨折では転倒などの比較的軽微な外力により生じる場合や、明らかな受傷機転が不明な場合もあります。
認定されうる後遺障害等級
体幹の変形または運動障害(荷重障害含む)として、6級、8級、11級の認定可能性があります。
あるいは、神経症状として12級か14級の認定可能性があります。
脊柱の変形障害
別表第二第6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
別表第二第8相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
別表第二第11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
→変形障害の認定方法・基準の詳細はこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
椎骨骨折の中でも、横突起・棘突起の局部的欠損や変形にとどまる場合、「脊柱に変形を残すもの」とみなされず、変形障害での認定の対象にはなりません。
脊柱の運動障害
別表第二第6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
別表第二第8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
→運動障害の認定方法・基準の詳細はこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
エックス線写真等では、脊椎圧迫骨折等または脊椎固定術が認められず、また、項背腰部軟部組織の器質的変化も認められず、単に疼痛のために脊柱の運動障害を残していると評価される場合は、局部の神経症状(12級か14級)として認定がなされます。
脊柱の荷重障害
別表第二第6級5号 | 頸部および腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を要するもの |
別表第二代8級2号 | 頸部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を要するもの |
→荷重障害の認定方法・基準の詳細はこちらの記事でご確認いただければ幸いです。
荷重機能の障害については、その原因が明らかに認められる場合であって、そのために頸部および腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を要するものを別表第二第6級5号として取り扱い、頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を要するものを別表第二第8級2号として取り扱います。
神経症状
受傷部位に疼痛等が残存した場合です。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
脊髄損傷合併の可能性
頚椎損傷により脊髄損傷が引き起こされる場合もあります。
脊髄損傷についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
→脊髄損傷|脊髄の損傷範囲と感覚障害の発症にはどのような関係性が?【弁護士解説】
→脊髄損傷|頚髄損傷(頸髄損傷)で現れる症状は?損害賠償請求は?【弁護士解説】
→脊髄損傷|胸髄損傷で現れる症状は?後遺障害等級は?【弁護士解説】
→脊髄損傷|腰髄損傷で現れる症状は?後遺障害等級は?【弁護士解説】
診断・検査
(標準整形外科学(第15版)(医学書院)、879頁)
画像診断
骨性要素である脊椎骨折の診断と軟部組織損傷である靱帯断裂や椎間板損傷の有無を確認します。
骨傷については単純X線かCT検査が優れていますが、椎体、椎弓根部、脊柱管、椎間関節、棘突起に異常がないか評価します。
軟部組織の損傷についてはMRIが適していますが、前縦靱帯、椎間板、後縦靭帯、棘間靱帯に着目して異常がないか確認します。
神経学的検査
脊椎損傷では、脊髄損傷の合併の可能性がありますので、神経学的検査は必ず行います。
四肢・体幹の感覚、筋力、腱反射の異常、球海綿体反射、肛門反射を調べます。上位頚椎損傷の場合、脳神経系の神経学的所見も調べる必要があります。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で頚椎損傷を受傷してしまうことがあります。治療費や休業損害、慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。