脊髄損傷
脊髄損傷の原因と割合|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所
皆さんは、脊髄損傷を負ってしまう原因として何が思い浮かべるでしょうか。
こちらのページでは、脊髄損傷の原因や、その割合について解説しております。脊髄損傷の原因について探っていきましょう。
日本における脊髄損傷の発生状況
年間の発生件数と発生率
日本では、年間約5000人が脊髄損傷を発症するとされています。発生率はおおよそ人口100万人あたり49人と報告されており、これは1990年代と比較して増回傾向にあるとされています。この発生率の増加は、高齢化社会の進行が一因と考えられています。また、全国規模の調査によって詳細なデータが得られ、地域や年代ごとの分析が進められています。
年代別の特徴と高齢者層の割合増加
脊髄損傷の発症は、年代ごとに特徴的な傾向が見られます。若年層では20代が多く、原因として交通事故やスポーツによる外傷が主に挙げられます。一方、高齢層、特に60歳代以上では転倒による発症が増加する傾向があります。近年では70歳代が発症のピークを迎えるとの調査結果も出されており、日本の高齢化が脊髄損傷の頻度や原因に大きな影響を与えていることが明らかになっています。
主要な受傷原因とは?
前項でも少し話に出てきましたが、脊髄損傷の原因にはどのようなパターンがあるでしょうか。脊髄損傷の主な要因として挙げられるのが、交通事故、転倒事故、スポーツによる外傷です。若年層では特に交通事故やスポーツ中の外傷が割合を占め、アクティブに活動する場面での衝撃が損傷の原因となっています。一方、高齢者層では転倒が最も多い原因となっており、平地での転倒や階段での滑落など日常生活での事故が増加傾向にあります。
なお、日本脊髄障害医学会主導で行われた全国調査(全国新規脊髄損傷患者疫学調査)の結果によると、受傷原因の割合について以下のとおり報告されています。1990年~1992年:交通事故43.7%、転倒事故12.9%、転落事故28.9%、その他14.5%
2018年:交通事故20.1%、転倒事故38.6%、転落事故13.7%、その他27.6%
交通事故による脊髄損傷は、近年の法整備や技術の発展なども相まって総数としては減少傾向のようである一方、高齢化の進行に伴う高齢者人口の増加により、転倒事故を原因とする脊髄損傷が3倍以上に増加してることが確認されます。また、医療技術の発展に伴い、以前よりも精度の高い診断がなされるようになり、脊髄損傷と診断されるケースが増加したことも要因の一つと考えられます。
受傷者の地域差と分布傾向
脊髄損傷の受傷者数には地域差も見られます。都市部では交通事故やスポーツ関連の外傷が多い一方、農村部や過疎地では転倒を主な原因とする高齢者のケースが増加しています。また、地域の医療体制によって受傷後の早期治療環境にも差があり、それがさらに回復率や予後に影響を与える要因となっています。こうした地域差を考慮した予防策や医療サポートが求められます。
脊髄損傷患者の症状と治療の現状
頚髄損傷と胸腰髄損傷の割合
脊髄損傷は、損傷を受けた部位によって頚髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷に分類されます。日本においては、頚髄損傷が全体の約60%を占めており、胸腰髄損傷が約40%とされています。頚髄は脳からの信号を全身に送る主要な伝達路であるため、この部位の損傷は四肢麻痺や呼吸困難など、深刻な障害が現れることが多いです。一方、胸腰髄損傷では主に下肢の運動や感覚に影響が出ることが多く、その症状や治療内容は部位によって異なります。脊髄損傷の症状については、以下のページで詳しく解説しておりますので、こちらもあわせてご覧ください。
骨傷性と非骨傷性の比較
脊髄損傷には、骨折など骨の損傷を伴う骨傷性脊髄損傷と、外部からの圧力や腫瘍が原因となる非骨傷性脊髄損傷があります。日本での脊髄損傷の多くは交通事故や転倒などによる骨傷性の損傷が主であり、その割合は全体の大部分を占めます。一方で、非骨傷性の損傷も特に高齢者において増加傾向にあり、こうしたケースでは神経組織自体の損傷が中心となります。
治療法とリハビリテーションの実態
脊髄損傷の治療は、損傷の重症度や発生部位に応じて選択されます。初期治療では、損傷の拡大を防ぐための固定や神経保護を目的とした措置が行われます。その後、症状に応じて手術による骨折の整復や脊椎の安定化が図られることがあります。また、リハビリテーションも重要な治療の一環で、全国にある回復期リハビリテーション病棟で行われています。内容としては麻痺のある部位の運動機能回復訓練や、バランス訓練などが含まれます。診療報酬のルールにより、リハビリの対象期間は頚髄損傷の場合180日以内と定められています。
おわりに
本ページでは、脊髄損傷を負傷する原因やその割合について、実際の統計調査のデータを基に解説しました。
脊髄損傷の後遺症や後遺障害、自賠責での等級認定などについては以下のページで解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。