交通事故コラム

後遺障害

脊髄損傷|XP、CT、MRI…等級獲得に向けて不可欠な画像は…!【後遺障害専門弁護士】

2024.04.19

交通事故で怪我をし、治療した結果後遺症が残ってしまった場合には、自賠責に後遺障害等級認定を行います。

自賠責の認定調査では、損傷などの存在を客観的に示す資料として画像が非常に重要視されています。これは裏を返すと、XPの撮影だけが行われてMRIは撮影されていなかったり、そもそも画像撮影が行われていなかったり等の理由で画像が不十分だと、客観的に後遺症の存在が証明されないとして後遺症に見合った等級が認定されなかったり、場合によっては後遺障害等級非該当になる恐れもあります。

したがって、適切な後遺障害等級を獲得するためには、「どのような画像を撮影するか」と「いつ画像を撮影するか」がポイントとなります

では、交通事故により頚髄損傷(頸髄損傷)、胸髄損傷、腰髄損傷、馬尾神経損傷などの脊髄損傷を負ってしまった場合には、病院でどのような画像を撮影してもらうべきでしょうか。この点について、本稿では交通事故被害者専門・後遺障害専門弁護士が解説します。

XP、CT、MRIとは

自賠責の等級認定調査において重要視される画像としては、XP(レントゲン)、CT、MRIの3種類があります。これらはそれぞれ撮影できる対象が異なるものであり、XPでは確認できるけどMRIでは確認できないものもあれば、逆にMRIでないと確認できないものもあるため、交通事故による傷病に見合った画像を撮影することが必須となります。

では、それぞれの違いについて、簡単に見ていきましょう。

⑴XP(レントゲン撮影)

XPはX-ray Photograph の略であり、直訳すると「X線撮影」を意味します。

病変や傷病の有無や鑑別のために利用される撮影方法であり、主に骨や臓器の状態などを確認するために撮影されることが多いです。他方、靭帯や腱、筋肉などの軟部組織や神経はXPではほとんど映らないので、XP画像でそれらに生じている病変や傷病等を確認することはできません。

脊髄損傷においては、脊椎(一般的に背骨と呼ばれる部分)の骨折・脱臼の有無、脊椎のすべりの有無、脊柱管狭窄、椎間板狭小化、骨棘の状態、後縦靭帯骨化の有無等が確認できるかがポイントとなってきます。

⑵CT

CTはComputer Tomography の略であり、「コンピューター断層撮影」を意味します。

XP撮影と同様にX線を用いて行われる撮影方法で、人体に照射され透過してきたX線をコンピューターで読み取り、輪切り画像として三次元的に出力されます。描出を鮮明にするために、造影剤が用いられることもあります。

CTでは、XPと同様に、主に骨や臓器の状態を確認することができます。ただし、CTは三次元的な画像であるため、二次元的なXPと異なり、より細かな病変や傷病を確認することができます。

脊髄損傷に関していえば、脊椎の状態が明瞭に描出されるため、椎間関節の骨折・脱臼や、椎体骨折の骨片の脊柱管内陥入の状況などを確認することができます。また、後縦靭帯骨化等による脊柱管狭窄の評価にあたっても有用な撮影手段となります。

⑶MRI

MRIは、Magnetic Resonance Imaging の略であり、「磁気共鳴画像」という意味になります。

X線を利用するXPやCTとは異なり、MRIは磁力を利用して画像を撮影します。

MRIの特徴はやはり、XPやCTでは確認できない靭帯や腱、筋肉などの軟部組織や、脊髄の病変などを確認することができる点です。

脊髄損傷においては必要不可欠な検査であり、脊髄損傷の専門病院である総合せき損センターでは治療方針の決定にあたっても重視されるほどです。

脊髄髄内の変化や病変の観察・評価において有用とされ、MRIによって脊髄断面を確認することにより、損傷高位の診断にも用いられます

等級獲得のためのポイント

冒頭で述べたように、自賠責が行っている後遺障害等級の認定調査において、画像は、客観的に後遺症が残存していることを証明するための非常に重要な証拠となります

そのため、「どのような画像を撮影するか」と「いつ画像を撮影するか」についてしっかりと押さえ、証拠を取っておくことが肝要です。

この2点について、以下解説していきます。

まず、「どのような画像を撮影するか」についてですが、

脊髄損傷において欠かすことができないのがMRI画像です

理由としては、脊髄の損傷や病変は、XPやCTではほとんど確認することができないからです。

脊髄損傷の有無や損傷高位の特定、また損傷がある場合の脊髄横断面における損傷の態様(横断面全体的に損傷しているのか、あるいは一部分の損傷であるのか等)を確認するためにはMRIを利用することになります。

また、XP、CT画像は、脊髄の周辺の損傷状況を把握するうえで重要となります。

たとえば、脊椎の骨折を伴うような脊髄損傷(骨傷性脊髄損傷と呼ばれます)なのか、あるいは脊椎の骨折を伴わない非骨傷性脊髄損傷であるのかを確認することができますし、骨傷性である場合には、骨損傷の程度も把握することができます。そのほか、後縦靭帯骨化症(OPLL)や脊柱管狭窄といった、脊髄損傷に寄与するような変性所見が存在しているかどうかについても確認できます。

結論として、脊髄損傷が疑われるような場合には、MRIの撮影は不可欠といえます。言い換えると、MRIの撮影がない場合には、脊髄損傷で後遺障害の等級認定を受けることは著しく困難になります。

また、脊髄周辺の変性所見などを把握するために、XPやCTの撮影も合わせて行われることが望ましいものといえます。

 

2点目に、「いつ画像を撮影するか」についてですが、

自賠責が後遺障害の認定調査を行う際、一般的には治療期間中に撮影されたすべての画像を確認することが多く

画像による治療状況の変遷が確認できない場合には、自賠責は画像所見による証明が不十分として等級を認定することがほとんどです。

そのため、まずは事故後、なるべく早いうちにMRI、XP、CTを撮影しておくことが望ましいものと考えられます。

また、初診にかかるのも、できる限り事故から日が空いてしまわないように注意する必要があります。

なぜならば、事故から1週間、2週間…と日が空いて画像撮影を行ったとした場合、仮に画像に損傷所見等があったとしても、それが事故由来のものであるか(=交通事故と脊髄損傷に相当因果関係があるかどうか)について疑義が生じる恐れがあるからです。

もっとも、明らかに脊髄損傷が生じているような場合というのは事故態様も大きい傾向があり、そうすると救急搬送された先で医師が病態確認や急性期の治療方針の決定のためにこれらの画像が撮影されていることもあります。

次に、可能であるならば、治療期間中に一度撮影をしておくことが望ましいものといえます。

そうすることで、治療による回復の経時的変化を示すことができるためです。

最後に、終診時(症状固定時)の撮影が重要となります。

これもまた、治療による経時的変化を確認するとともに、症状固定時における脊髄や脊椎等の状態を把握する必要があるからです。

画像所見により、後遺症を医学的・他覚的に裏付けることができれば、後遺障害の等級が認定されやすくなります。

以上を踏まえると、「いつ撮影するか」については、初診時と終診時(症状固定時)の撮影は不可欠であり、可能であるならば治療期間中に撮影を行っておくとよいと考えます。

おわりに

交通事故により脊髄損傷を負い、麻痺などの後遺症が残存した場合に、自賠責に正しく後遺症の状態を認識してもらい、適切な後遺障害等級認定を行ってもらうためには、画像による損傷高位診断、横断面診断、MRI画像上の脊髄内病変等の画像所見は不可欠の要素となります

その他にも、深部腱反射、病的反射検査、知覚検査、徒手筋力検査、筋萎縮検査などの神経学的所見は必須となり、場合によっては電気生理学的検査が必要となります。

加えて、形式的要件として『脊髄症状判定用』という書式や、脊髄損傷後の被害者の日常生活状況を記した書面なども場合によっては必要となります。

 

このように、自賠責に申請する際には、後遺障害診断書に加えてさまざまな書類を準備したり、

医学的に後遺症を証明するような所見を得るために必要な検査を受けたりと、重要なポイントが数多くあります。

したがって、自賠責に申請する段階から、等級獲得に向けて押さえるべきポイントを把握したうえで用意を行うことが望ましく、

そのためには後遺障害に関する経験や専門的知識が不可欠だといえます。

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また、脊髄損傷の症状や治療・リハビリ、後遺障害等級、損害賠償請求とのかかわり等、脊髄損傷に関する詳しいことは以下のページで解説いたしておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

●脊髄損傷全般の解説や、その他脊髄損傷に関する記事についてはこちらから。

 

 

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。