過失割合
交通事故の過失割合はいつ決まる?弁護士解説
2024.12.20
このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、
- 交通事故の過失割合とは?
- 過失割合は誰が決める?
- 過失割合はいつ決まる?
- 過失割合に納得がいかない場合の対応策
- 過失割合に関するトラブルを回避するためのポイント
等について解説します。
弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。
交通事故被害に遭い、過失割合に関するトラブルでお困りの方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。
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交通事故の過失割合とは?基礎知識を解説
過失割合とは何か?
民法では「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されています(民法第722条2項)。
これを「過失相殺」といい、過失相殺によって定められた被害者及び加害者の過失の割合を「過失割合」といいます。
たとえば、「過失割合が9:1」といった場合は、加害者が90%、被害者が10%の責任を負うと判断されることを意味し、
被害者は、発生した損害全額から自己過失分の10%を除いた90%分について加害者に対して損害賠償を請求することができることになります。
過失割合が重要な理由
過失割合が重要である理由は、主に損害賠償額の算定に直結するためです。
先ほど見たように、被害者であっても過失が認められる場合、加害者から受け取れる賠償金がその割合に応じて減額される仕組みになっています。
仮に発生した損害が1000万円の方の過失割合が20%か10%かでもめているような場合には、
受け取れる金額が800万円か900万円かということになり、100万円もの差が出てしまいます。
同じ事故態様で、同じ損害が発生しているにもかかわらず、過失割合の交渉をきちんとしなかっただけでこれだけの損が発生する可能性があるわけですから、
過失割合の主張は極めて重要です。
交通事故の過失割合は誰が決める?決定のプロセス
加害者・被害者・保険会社の役割
交通事故の過失割合は主に事故の加害者、被害者、そしてそれぞれの加入する保険会社の間で話し合いによって決まることが一般的です。
事故後、保険会社は各自の担当者を通じて事故状況を確認し、過失割合を提示します。この際、加害者と被害者の証言や物的証拠が重要な判断材料となります。
保険会社同士のやり取りの中で提示された割合が被害者や加害者にとって納得いかない場合には、交渉が必要となります。
この交渉が難航するような場合には、弁護士に依頼することで状況が改善することもあります。
過去の判例や基準の参照方法
保険会社間の交渉や、弁護士が介入した場合の交渉など、損害賠償請求実務における過失割合の判断は、
原則として、『東京地裁民事交通訴訟研究会編別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂5版)』をもとに行われます。
交通事故の過失割合を決定する際には、過去の裁判例などが重要な役割を果たしますから、この『別冊判例タイムズ38号』は極めて有用です。
基本的には、この『別冊判例タイムズ38号』に規定されている類型のどれに当てはまるかということから当該事故の過失割合を検討することになりますが、具体的な事故の事情や修正要素によって調整が行われることもあります。
例えば、加害者側が著しく危険な運転をしていた場合や、被害者側が注意義務を怠った場合には、基準とは異なる割合が設定されることもあります。
被害者として過失割合に納得がいかない場合には、こうした基準や参考資料を確認し、どのような根拠で割合が決まったのかを保険会社や加害者に確認することが重要です。
その上で必要であれば弁護士に依頼し、交渉を進めてもらうことも検討しましょう。
民事の過失割合交渉における警察の役割
交通事故が発生した場合、まず警察への通報が義務付けられていますが、警察は過失割合を直接決定する役割を持っていません。
警察は事故の状況を記録し、交通事故証明書や実況見分調書を作成しますが、過失割合については判断を下す立場にはありません。
この点は多くの人が誤解しやすい点であり、「警察が示した過失割合が最終的な決定」と思い込むケースも見受けられます。
しかし、実際には警察が提供する資料は、民事の損害賠償請求で保険会社や裁判所が過失割合を算定する際の参考資料という扱いになります。
ですから、警察に言われた過失割合をもとに交渉を進めるのではなく、しっかりと民事の実務に基づいた交渉を進めることが重要です。
ただし、警察の捜査記録というのは証拠としては極めて強力なものになりますから、警察の捜査記録を基に、実際のところどの類型に該当するかというのを判断していく必要があります。
過失割合はいつ決まるのか?
示談交渉のタイミング
交通事故の過失割合が決まるタイミングとして、最も一般的なのが示談交渉時です。
示談交渉は、基本的には被害者と加害者側保険会社の担当者の間で進められ、事故における過失割合を含む損害賠償の条件が話し合われます。
保険会社は、過去の交通事故の判例や基準を基に過失割合を提示しますが、提示された割合が被害者にとって必ずしも適正であるとは限りません。
過失割合が示談交渉の中で決まる理由は、損害賠償の算定に直結するからです。
被害者にとっては提示された内容が適切か判断することが重要であり、場合によっては弁護士の助言を求めるとよいでしょう。
物損事故と人身事故の違い
交通事故の種類によっても、過失割合が決まるタイミングに違いがあります。
車両が破損したり、物が損壊したりといった物損事故の場合は、当該事故発生の瞬間に損害がほぼ確定します。
実務上は修理工場に車両を搬入して修理費の見積を取ったり、代車を利用してその費用が発生したりといった事故発生以後の動きもありますが、
基本的には事故発生の瞬間の損害がベースになります。
そのため、示談交渉への移行が人的損害の場合よりも早く、それに伴って過失割合の決定時期も早くなることになります。
一方で人的損害の場合は、事故で受けた怪我について、
事故後継続的に治療費がかかったり、休業が発生したり、事案によっては後遺症が残ってしまうことにより将来にわたって損害が発生したりすることもあるかもしれません。
理屈上は人的損害も事故発生の瞬間に損害賠償請求権が発生することになっていますが、
とはいえ現実的には実際に治療を続けていく中である程度見込みが立たなければまとまる話し合いもまとまりません。
したがって人的損害の場合には、示談交渉のタイミングが治療の終了時か、後遺障害等級の確定時となることが多く、
それに伴って過失割合の決まるタイミングも遅くなることになります。
なお、物的損害と人的損害の過失割合はイコールにしなければならないというわけではありません。
物的損害について既に示談をしてしまっている場合であっても、人的損害については弁護士に依頼して過失割合を物的損害の示談時より有利に修正できることもあります。
裁判に進む場合の過失割合決定時期
示談交渉で過失割合について合意に至らない場合、裁判に進むことがあります。
裁判では、過失割合の決定は最終判断として判決の際に行われます。
この場合、過失割合がいつ決まるかは裁判の進行状況に依存し、判決まで数か月から1年以上かかることもあります。
特に、事故の状況が複雑な場合や、双方の主張が大きく対立している場合は、裁判所が事実関係を詳しく審理する必要があるため、時間がかかる傾向があります。
裁判では、証拠や自動車事故の過去の判例を基に客観的な判断がなされます。
被害者や加害者が納得するためには、裁判に進む前に適切な証拠を集め、自分の主張を明確にしておくことが重要です。
過失割合に納得いかない場合の対応策
事故現場で取るべき行動
交通事故が発生した際に、まず重要になるのは事故現場での対応です。
被害者や加害者の双方が落ち着いて対処することで、その後の過失割合に関するトラブルを最小限に抑えることができます。
具体的には、事故現場で警察に通報し、事故状況を正確に記録してもらうことが必要です。
警察による現場検証は過失割合を判断するうえできわめて強力な証拠となるため、必ず実施しましょう。
また、相手の保険会社や加害者・被害者双方の言い分が食い違う場合でも、客観的な視点で状況を残しておくことが大切です。
有力な証拠を集める方法
過失割合をめぐるトラブルを防ぐには、事故直後に有力な証拠を集めることが欠かせません。
例えば、事故現場の写真や動画を撮影しておきましょう。車両の損傷箇所、周囲の状況、信号の状態、道路標識などを記録することで、事故の状況を後で正確に説明できます。
また、目撃者がいる場合は、連絡先を確認し、証言を依頼することも重要です。
さらに、ドライブレコーダーの映像がある場合には、それを確保して保険会社や弁護士に提出することで、過失割合の判断がより明確になる可能性があります。
相手の保険会社提案に不満がある場合
交通事故の過失割合が相手の保険会社から提示された場合、被害者がその割合に納得できないことも少なくありません。
保険会社は事故の類型や過去の裁判例などを基に過失割合を算定しますが、被害者側の事情や証拠が十分に反映されていないこともあります。
そのため、保険会社の提案に不満を感じた場合は、冷静に対処する必要があります。
まずは、提示された過失割合について内容を詳しく確認し、妥当性を判断します。
具体的な事故の状況や証拠、当事者双方の過失行為が適切に反映されているかどうかを確認しなければなりません。
ドライブレコーダー映像や刑事記録などを見ながら、『別冊判例タイムズ38』や過去の判例を参考にしつつ、
被害者側にとって有利な修正要素を相手に認めさせるように進めていく必要があります。
弁護士を活用するメリット
過失割合に関する争いが解決しない場合や、保険会社との交渉に不安を覚える場合には、弁護士の力を借りることも有効です。
弁護士は、交通事故における膨大な判例や法的知識を有しており、被害者にとって有利になるよう過失割合を適切に主張することができます。
また、弁護士が交渉を代理することで、被害者は精神的な負担を軽減できる点もメリットです。
弁護士に相談することで、正確な法的根拠に基づいた主張を行い、自分に不利な過失割合が算定されるリスクを軽減できます。
示談交渉や裁判においても弁護士が代理人となることで被害者側の負担が減り、相手方との交渉を円滑に進めることが期待されます。
特に、加害者側の保険会社が提示する割合に納得がいかない場合など、専門家の力を借りることで、適切な解決に近づけます。
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