交通事故の解決実績

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【むち打ち】【治療費打ち切り阻止】保険会社提案80万円→裁判により4倍以上の360万円で解決

Cさん 40代・男性・自営業

【むち打ち】【治療費打ち切り阻止】保険会社提案80万円→裁判により4倍以上の360万円で解決

解決事例のポイント

① 弁護士介入により治療費の打ち切りを阻止
② 弁護士による後遺障害等級の申請によりむち打ちで併合14級獲得
③ 保険会社示談提案80万円⇒360万円で解決(4倍以上)
④ 確定申告が赤字申告だったが休業損害と逸失利益190万円以上を獲得

相談前

Cさんは40代の自営業者の男性で、ある日、追突事故に遭い、むち打ちとなってしまいました。

Cさんは、首や腰が痛かったことから、整形外科に通院していましたが、事故から3か月程度経った頃、保険会社の担当者から、もう3か月経つので、そろそろ治療費の支払は終了となりますと言われてしまいます。

保険会社の担当者より、むち打ちの治療期間は3か月程度と相場が決まっているとの説明を受けましたが、Cさんは、まだ首や腰の痛みが残っていたため、リハビリを続けられなくなるのは困ると思いました。

弁護士費用特約というものに加入していたことから、弁護士に相談してみることにしました。

法律相談

Cさんに対しては、まず、「むち打ちの治療期間は3か月程度と相場が決まっている」という保険会社の担当者の説明がウソであることを説明しました。

そんな相場はありませんし、敢えて相場を言うとしたら、Cさんのように症状が残ってしまっているむち打ちのケースですと、治療期間の相場は6か月です。

また、保険会社の担当者の説明に従って3か月で治療終了してしまうと、慰謝料額が低くなりますし、また、むち打ちの症状が残ってしまったとしても後遺障害等級の認定が受けづらくなってしまうことを説明しました。

そこで、主治医の先生の見解に従いながら、最低6か月は通院するようにし、それでも症状が残るようであれば後遺障害等級の申請をするという方針で進むことにしました。

加えて、後遺障害等級の認定が得られた場合と得られなかった場合の損害賠償額の違いや、むち打ちで後遺障害等級を獲得するためのポイントについても説明致しました。

なお、むち打ちの解決法の詳細については、こちらのページをご覧ください。

治療費打ち切り阻止の交渉

保険会社の担当者は、交通事故から3か月で治療費の支払を打ち切ろうとしていましたので、まずはこれを阻止するための交渉を実施しました。

弁護士介入後、電話一本で、治療期間を延長してもらえることもありますが、保険会社内で既に治療費打切りの方針で固まっていたため、電話をしただけでは、治療期間の延長に応じてもらえませんでした。

そこで、整形外科主治医の先生に対して医療照会を実施し、Cさんの適切な治療期間についての医学的な見解を頂くことにしました。

主治医の先生は、3か月経過した現在でもCさんに症状が残っていたことから、まだリハビリが必要である旨、おっしゃってくれましたので、その内容で医療照会回答書をご作成頂き、これを保険会社の担当者に提出しました。

そうしたところ、保険会社の担当者も、社内方針を変更し、治療期間の延長を認めてくれました。

なお、治療期間中の注意点や治療費打切り問題についての詳細は、こちらをご覧ください。

むち打ち症の後遺障害等級の申請

Cさんには特に椎間板ヘルニアなどの画像上の異常所見はありませんでしたが、通院6か月の治療を経ても、首や腰の痛みは完治しませんでした。

そこで、当初方針どおり、後遺障害等級の申請手続に進むことにしました。

むち打ち症で後遺障害等級を獲得するためのポイントはこちらのページに記載してあるとおりですが、簡単に説明すると、①後遺障害診断書に余計なことは書かない、②プラスとなる所見については書いてもらう、③症状の推移に不自然さがないことを立証する、④事故態様の強さや身体にかかった衝撃の強さを立証する、このあたりが重要となってきます。

①後遺障害診断書に余計なことは書かない

後遺障害診断書というのは、通常の診断書と異なり、自賠責保険に対して後遺障害等級の申請をするためのものです。

従いまして、治療によって体のどこが良くなったかであるとか、異常無しの所見については、わざわざ言及していただく必要はありません。

治療の甲斐なく症状が残ってしまったことに関連することのみ書いていただければよいのです。

また、所見についてだけでなく、症状についても、余計なことは書かずに、端的な記載をした方が、後遺障害等級を得やすくなります。

例えば、交通事故被害者の方は、自身の大変さを分かってもらおうと、●●をするときに痛みがあって大変であるとか、痛みのせいで●●の動作ができなくなってしまったなどの説明をしてしまうことがあり、主治医の先生も、その話を受けて、後遺障害診断書の自覚症状欄の記載をしてしまいます。

ところが、自賠責保険は、後遺障害等級の認定にあたり、このような記載の後遺障害診断書を読むと、「●●をするとき以外は痛みが無い」というような揚げ足取りの判断をしてきます。

こうなると、常時疼痛を残すものという神経症状の後遺障害等級が得られなくなりますから、後遺障害等級非該当という判断が下されてしまいます。

当事務所では、こうした判断がなされないように、後遺障害診断書の自覚症状欄には、「頚部痛」「腰部痛」といった簡潔な記載をしてもらうことをおすすめしています。

②後遺障害等級認定上プラスとなる所見がある場合は書いてもらう

後遺障害等級認定上プラスとなる所見がある場合には、後遺障害診断書の人体図が記されている欄に、その所見を書いてもらう必要があります。

むち打ち症の場合であり得る後遺障害等級というのは、後遺障害等級12級13号と14級9号の2種類です。

当事務所では、むち打ち症での後遺障害等級12級13号獲得事例も複数ありますが、これは椎間板ヘルニアといった画像所見があり、これにより脊髄や神経根を圧迫しているケースでないと獲得することはできません。

Cさんのケースでは、レントゲンやMRI画像に異常の無いケースでしたので、後遺障害等級12級13号の可能性は無いことになります。

そこで、後遺障害等級14級9号獲得のためプラスとなる所見を書いていただくことになりますが、これには椎間板ヘルニアに至らない程度の画像上の変性所見の存在や、ジャクソンテスト・SLRテストの陽性所見などの神経学的所見の存在が挙げられます(詳しくはこちらのページをご覧ください。)。

③むち打ち症状の推移に不自然さがないことを立証する

後遺障害等級14級9号の認定というのは、他の後遺障害等級認定と異なり、減点方式的になされるきらいがあります。

具体的には、こうした所見があるので等級を認定するといったような判断手法ではなく、このような事情が無いので等級を認定する(このような事情があるので等級を認定しない)といった判断手法です。

この減点方式の考慮要素の1つとして挙げられるのが、症状の推移の不自然さです。

むち打ち症というのは、急性期が1番症状が酷く、徐々に回復していくものとされています。

この経験則に反して、急性期よりも治療期間後半の方が症状が酷くなっているであるとか、一度症状が良くなっていたものがまた悪化したといった事情がある場合は、症状の経過が不自然であるとして、後遺障害等級非該当の判断がなされることがあります。

この点は治療期間中のお医者さんへの症状説明が重要ですので、Cさんには法律相談時にあらかじめお伝えしておきました。

こうすることによって、揚げ足を取られるようなカルテの記載を防ぐことができます。

また、後遺障害等級申請時に、後遺障害診断書のみならず、「症状の推移について」という書面も主治医の先生にご記入いただくようにしていて、これを提出することによって、症状の推移の判断で非該当とされることを防ぐ取り組みを行っています。

Cさんの件でも、主治医の先生に「症状の推移について」のご記載をしていただき、後遺障害診断書と共に後遺障害等級申請時に提出をしました。

④事故態様の強さや身体にかかった衝撃の強さを立証する

軽微な交通事故と判断されると、後遺障害等級の認定は受けづらくなります。

そこで、当事務所では、刑事記録の取得や、物損資料などから事故態様の強さや身体にかかった衝撃の強さを立証するようにしています。

Cさんのケースですと、刑事記録を取得し分析したところ、追突後に、Cさんの車両が前方に動いていることが判明したため、ここから追突の衝撃の強さを立証し、Cさんが後遺症を残す程度の受傷をする衝撃を受けたことを説明しました。

むち打ち症で後遺障害等級併合14級の獲得

以上の注意点を踏まえ、後遺障害診断書や症状の推移などの医学的証拠を取り付けて、後遺障害等級の申請をしたところ、見立てどおり、後遺障害等級併合14級を獲得することができました。

示談交渉の決裂

獲得した後遺障害等級併合14級を元に示談交渉を行いましたが、保険会社の判断は渋いものでした。

Cさんは自営業者なのですが、交通事故の前は赤字申告をしていました。

これは節税の観点でなされていたもので、経費として挙げている車をプライベートでも使っているなどしていて、実際は、Cさんに所得があるような状況でした。

所得がなければ、生活することはできません。

ただ、保険会社の担当者としては、資料に基づいて休業損害や逸失利益の判断をせざるを得ませんので、そもそも収入がなかったのなら、交通事故によって収入が減少することもないとして、休業損害や逸失利益は0円であるとの提案を行ってきました。

こうしたこともあり、保険会社の示談提案額は既払金(自賠責保険金75万円など)を除いて80万円というものでした。

後遺障害等級14級を獲得した追突事故で示談金80万円というのは低額に過ぎますので、Cさんの了解を得たうえで、裁判をすることにしました。

民事裁判 横浜地方裁判所第6民事部(交通部)

この裁判の大きな争点は、保険会社から0円の提示を受けていた休業損害や逸失利益をいかに裁判所に認めてもらうかという点です。

Cさんが赤字申告をしていたのは事実ですから、これは裁判でも不利に働くことになります。

所得が無いとして申告をし、所得税を納めていないわけですから、交通事故の被害者になったとたん、実は所得があったのですということに対しては、裁判官も冷ややかな目で見てくることが多いからです。

Cさんにも厳しい戦いになることは説明した上、資料収集などに協力してもらいました。

具体的には、交通事故前3年分の契約書・請求書・見積書・領収証・預金通帳などの資料をすべて洗い出し、Cさんに所得があったことを立証します。

また、クレジットカード明細、家計収支表、日常生活で支出したお金に関するレシートなども洗い出し、Cさんの生活状況を立証します。この立証は、間接的なものですが、この程度の生活を送れているということは、この程度の所得があったと推認させる効果を持ちます。

以上の分析から、主張立証を行った結果、横浜地方裁判所の裁判官は、休業損害と逸失利益で190万円強を認定してくれ、既払金を除き320万円の和解金を獲得することができました(保険会社示談提示額の4倍)。

弁護士小杉晴洋のコメント

①保険会社の治療費打切りを鵜吞みにしてはいけません

Cさんは、保険会社の担当者から、むち打ち症の場合、治療期間の相場は3か月くらいという説明を受け、素直に信じてしまいそうになったそうです。

しかし、この保険会社の担当者の説明はウソです。

そもそも、治療期間を判断する権限は主治医にありますので、保険会社の担当者には治療期間がいつまでかを判断する権限はありません。

Cさんのケースのように、弁護士介入により、治療費支払期間が延長されることは多々ありますので、治療費の打ち切りを言われている方については、被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

②自営業者の場合の休業損害や逸失利益は弁護士に請求してもらいましょう

自営業者というのは、経営努力をしなければなりませんから、節税の観点で必要経費算入を行っていることが多いです。

しかしながら、交通事故の損害賠償請求では、これがあだになることがあります。

Cさんのケースでも、保険会社の担当者から、休業損害や逸失利益は0円であると言われてしまいました。

しかし、毎年赤字を続けていては生活できませんので、実際は、実質所得と認定できるものが含まれていることが多いです。

交通事故の損害賠償請求において、確定申告上の所得とは異なる実質所得を認定させるには専門のスキルがいりますので、自営業者の方が交通事故に遭われた場合は、被害者側専門の弁護士にそうだんされることをおすすめします。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。