過失割合 加重障害・既存障害 裁判 駐車場 四輪車vs四輪車 首 自営業 むち打ち・捻挫等 非該当 後遺障害等級変更 14級
【むち打ち】①駐車場内の交通事故で保険会社から過失割合40:60を主張されていたが、裁判で0:100で勝訴。②過去にむち打ちで後遺障害等級を14級を獲得したため自賠責保険非該当であったが、裁判で再度むち打ち後遺障害等級14級を獲得。
Gさん 40代・女性・自営業
【むち打ち】①駐車場内の交通事故で保険会社から過失割合40:60を主張されていたが、裁判で0:100で勝訴。②過去にむち打ちで後遺障害等級を14級を獲得したため自賠責保険非該当であったが、裁判で再度むち打ち後遺障害等級14級を獲得。
解決事例のポイント
① 駐車場内の交通事故で保険会社からは過失割合40:60を主張されていたが、現場調査・駐車場図面解析・刑事記録分析・尋問を駆使し、過失割合0:100で完全勝訴
② 過去にむち打ちで後遺障害等級14級を獲得していたため自賠責保険の判断であったが、裁判によって再度むち打ち後遺障害等級14級を獲得
③ 交通事故後売上が増加した自営業者について休業損害を認めさせた
法律相談前
Gさんは40代自営業者の女性です。
区役所での用を済ませ、車を運転して帰ろうとしたところ、駐車区画から突然出てきた車に衝突されてしまい、むち打ちとなってしまいます。
保険会社の担当者と物損の示談交渉をしましたが、「動いているもの同士は過失0:100にはなりません」「駐車場内の交通事故は基本の過失割合は50:50となります」などと言われてしまいます。
Gさんは、突然駐車区画から出てきた車に衝突されていて回避しようがなかったため、自身にも過失割合が認められることに納得がいきませんでしたが、少しでもお金をもらって早く車の修理をしたいと考えたため、物損の示談をしてしまいます。
Gさんは、むち打ちのケガも負っていますから、リハビリを続けましたが、慰謝料など人身の請求をするときは、自身に過失が取られることは納得できないと考え、弁護士に依頼することにしました。
法律相談
主に過失割合について、説明を差し上げました。
理論的には、物損の示談で定められた過失割合というのは、人身の損害賠償請求にも影響させる旨の明示の合意でもない限りは影響しないものなのですが、実際は、物損で過失割合40:60で示談していますから、人身も同じ割合となりますなどと保険会社の担当者に言われてしまいます。
ですので、Gさんの過失を0にするためには、示談交渉では難しく、民事訴訟を提起しなければならなくなる可能性が高い旨、説明しましたが、Gさんは納得いくまでやりたいというご意向であったため、民事訴訟も視野に入れて事件を進めていくことにしました。
過失割合の話をする前に、Gさんの損害賠償額を確定させなければいけないため、まずはリハビリに専念していただいて、完治すれば示談交渉⇒民事裁判、完治しなければ後遺障害等級の申請⇒示談交渉⇒裁判と進んでいくことも説明しました。
自賠責保険による後遺障害等級非該当の判断(過去にむち打ちで後遺障害等級14級を獲得済み)
Gにリハビリ治療を続けてもらいましたが、むち打ち症が完治することはありませんでした。
そこで、主治医の先生に後遺障害診断書を記載してもらい、後遺障害等級の申請に進むことにしました。
ところが、自賠責保険は、後遺障害等級非該当の認定をしてきました。
認定理由書を確認したところ、過去にむち打ち症で後遺障害等級14級を獲得済みであるいうことが非該当の理由として挙げられていました。
自賠責保険が認定する後遺障害等級というのは、永久残存性が要件とされていますので、一度後遺障害等級が認定されると、同一の部位で再度後遺障害等級が認定されることはありません。
従いまして、異議申立てや紛争処理申請を行ったとしても、再度むち打ち症で後遺障害等級を獲得することは困難ということになります。
民事裁判 福岡地方裁判所小倉支部
一応示談交渉は行いましたが、予想どおり、Gさんの過失0での解決はできなかったことから、福岡地方裁判所小倉支部に民事訴訟を提起することにしました。
過失割合 駐車場内事故で過失割合0:100の勝訴
被告側は、駐車場内では、車両が通路と駐車区画との間を出入りすることは当然に予定されているので、駐車場の通路を進行する車両は、駐車区画に駐車していた車両が通路に進入してくることを当然に予見すべきであり、駐車区画を退出する車両との関係でも、同車の通行を予見して安全を確認して当該通路の状況に応じて同社との衝突を回避することができるような速度と方法で通行する義務を負うにもかかわらず、Gさんは、こうした義務を怠って走行していたので、過失割合は40:60になると主張してきました。
この主張に対しては、刑事記録分析・現場調査・現場図面考察・法廷での尋問によって反論をしてきました。
まず、刑事記録によると、加害者がGさんの車との衝突に気づいたのは、衝突した時であるとの供述が実況見分でなされていました。
そして、加害者は駐車区画を出る前に左右確認をしていたと供述していて、Gさんが駐車場内を高速度で走行してきたことから、あっという間に自身の前まで到着していて交通事故になってしまったとの主張がなされていました。
しかしながら、当該駐車場の現地にいってみたところ、駐車場内は広く、視界は良好でした。
駐車場の管理者の元を訪れ、当該駐車場の図面を入手し、その図面と刑事記録の現場見取図とを合わせて読み込み、加害者の車両が駐車していた区画を特定します。
そして、当該区画に駐車した状態から左右を見渡した場合、何m先で原告車両が見えるのかを測定しました。
そうしたところ、原告車両が駐車場の一番端にいたとしても、その動静が視認できることが確認でき、加害者が左右確認をした後に駐車区画から発進したことがウソであることが判明しました。
そして、これらの調査結果をもとにして、法廷の場で尋問を行い、加害者が左右確認をせずに突如駐車区画から飛び出してきたことや、Gさんがどんなに前方左右を注視して低速度走行していたとしても、今回の交通事故を回避することは不可能であったことを裏付けていきました。
そうしたところ、裁判官も、こちら側の主張を全面的に認めてくれ、Gさんの過失0の判断をしてくれいました。
過去にむち打ち症で後遺障害等級14級を獲得しているが、最後むち打ち症で後遺障害等級14級の認定
先ほど述べたとおり、自賠責保険における後遺障害等級というのは永久残存性が要件となっていますが、そもそも後遺障害等級というのは、損害賠償請求の場面では、主に後遺症慰謝料や後遺症逸失利益を請求するための証拠の1つとして用いられているものです。
そして、むち打ち症の後遺症逸失利益というのは、5年程度で慣れる・治るなどと考えられることが多く、逸失利益も将来5年分についてのみしか認められないことが多くなっています。
そうすると、損害賠償請求の場面では、将来5年分しか認められないにもかかわらず、自賠責保険の後遺障害等級認定の場面では、一度後遺障害等級の認定がされると、同一部位について受傷した場合、5年以上経過したとしても一生後遺障害等級認定がなされないという矛盾が生じているといえます。
この点をついて、Gさんのケースでも、5年以上前のむち打ち症の後遺障害等級14級を理由に、今回の交通事故での後遺障害等級を非該当とするのは不合理である旨の主張展開をしました。
また、裁判というのは証拠による裏付けが重要ですから、過去の交通事故によるむち打ち症の後遺症が、今回の交通事故時には消失していたことの立証も行いました。
具体的には、昔の交通事故治療歴を洗い出し、今回の交通事故時には後遺症が残っていなかったことを医学的に立証したのです。
そうしたところ、裁判官もこちら側の主張を全面的に認めてくれ、再度、むち打ち症で後遺障害等級14級に該当する旨の判断をしてくれました。
交通事故の前より売上げが上がっているが休業損害を認定させた
Gさんは自営業を営んでいますが、交通事故のむち打ち被害に遭ったからと言って、自身の事業を辞めるわけにもいかず、痛みに耐えながら事業を継続していました。
その結果、交通事故前よりも交通事故後の方が売上が上がる事態となりました。
これ自体は良いことなのですが、保険会社側からは、減収がないのであるから、休業損害は認められないと主張されてしまいます。
この主張に対しては、Gさんのパフォーマンスが落ちていたことから、仕事時間を長くする、営業日数を増やすなどして対応したことや、新サービスの提供による1件あたり単価を増加させたことなどを尋問等によって立証し、また、交通事故後どのように仕事がしづらくなったかも立証して反論しました。
そうしたところ、裁判官も、交通事故の後に売上が上がってはいるものの、交通事故が無ければもっと売り上げ上昇が見込めたことを認めてくれ、無事、休業損害の認定もなされました。
弁護士小杉晴洋のコメント:地道な立証が勝訴につながります
今回のGさんの件の主な争点は、過失割合・後遺障害等級該当性・休業損害でしたが、どれも地道な立証によって勝訴に繋がりました。
過失割合については、刑事記録の分析のみならず、駐車場の図面を入手して、これらを突き合わせ、現地調査を行ったことがポイントでした。
後遺障害等級該当性については、過去の医療記録を取り付けて、現在の後遺症についての影響を排除したことがポイントでした。
休業損害については、帳簿などを精査して、交通事故前後の営業時間・営業日数・客数・客単価を比較検討して裁判官に伝えたことがポイントでした。
これらの作業は、被害者側専門の弁護士でなければ困難な作業を多く含みますので、交通事故被害に遭われた方は、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。