交通事故の解決実績

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【むち打ち】80代の高齢女性の後遺障害等級14級9号獲得事例につき、主婦休業損害・逸失利益で約200万円が認定され、総額555万円での裁判解決

Oさん 80代・女性・主婦

【むち打ち】80代の高齢女性の後遺障害等級14級9号獲得事例につき、主婦休業損害・逸失利益で約200万円が認定され、総額555万円での裁判解決

解決事例のポイント

① むち打ち被害に遭った80代の高齢女性について主婦休業損害・逸失利益で約200万円の認定を獲得(損害賠償総額555万円)
② 保険会社側の弁護士より骨粗しょう症などの影響のため症状が悪化したと主張されていたが、交通事故前の症状経過を立証することによって保険会社側の主張を排斥
③ 保険会社による打切り後の治療費を認めさせた
④ むち打ち被害で40万円以上の通院付添費用の認定

 

法律相談前

Oさんは80代の女性です。

息子さんと一緒に暮らしています。

ある日、息子さんの運転する車の助手席に乗っていたところ、一時停止規制のある道路から進入してきた車に衝突され、親子ともむち打ちとなってしまいます。

Oさんの息子さんの車には弁護士費用特約が付いていたことから、OさんとOさんの息子さんは弁護士に依頼して、交通事故の解決を頼むことにしました。

 

自賠責保険から後遺障害等級14級の認定を獲得

Oさんは、保険会社から治療費の打ち切りにあった後もリハビリ治療を続けましたが、むち打ち症が完治することはありませんでした。

そこで、主治医の先生に後遺障害診断書を記載してもらい、後遺障害等級の申請に進むことにしました。

後遺障害診断書のチェックを行い、被害者請求をしたところ、見立てどおりに親子とも後遺障害等級14級を獲得することができました。

 

高齢であることが症状悪化の理由とされたため示談交渉が決裂

Oさん親子は示談による早期解決を望んでおられました。

Oさんの息子さんについては、裁判基準の慰謝料額が獲得できるなどしたため示談解決をすることができましたが、80代のOさんについては、高齢であることが症状悪化の理由であるなどと指摘され、数十万円の賠償金しか払わないと言われてしまいます。

Oさんからご事情をお伺いする限り、Oさんは交通事故の前は元気に家事をしていて、後遺症が残ってしまったのは明らかに交通事故が原因であると考えられたため、Oさんについては民事訴訟を提起して、裁判所による解決を求めることにしました。

 

民事裁判 福岡地方裁判所

福岡地方裁判所に訴訟提起をしたところ、元東京地方裁判所民事27部(交通部)の裁判官が担当となりました。

この裁判官は交通事故訴訟に詳しいため、適切な立証さえ行えば勝訴が見込めると判断し、訴訟活動を行いました。

主たる争点は、①保険会社による打切り後の治療費が損害として認められるかどうか、②むち打ちでの通院に家族の付添費用が認められるかどうか、③高齢のために症状が悪化したといえるかどうか、④80代女性について家事従事者であると認められるかどうかの4点です。

以下、それぞれの争点がどうなったかについて説明していきます。

保険会社による打切り後の治療費の回収

保険会社側の弁護士は、保険会社の治療費打切りの判断は妥当であったと主張してきます。

これに対しては、平成25年赤い本下巻講演録7頁以下に基づいて、症状固定時期については、症状固定に関する医師の判断を踏まえ、①傷害及び症状の内容、②症状の推移、③治療・処置の内容、④治療経過、⑤検査結果、⑥当該症状につき症状固定に要する通常の期間、⑦交通事故の状況、などの観点から判断し、医師の判断の不合理性が立証されなければ、医師が判断した症状固定日を採用するべきであるとの主張を行いました。

そして、保険会社が治療費打切りを行った時期より以降のカルテの記載上、治療効果があがっていることが窺われる記載があることを指摘し、また、途中で投薬内容が変更になり、それによる症状改善がみられていたこと、Oさんの治療経過に中断がないこと、各種検査結果の指摘、加害車両の重量が重く、物損資料からも被害車両が激しく損傷していることが窺われることなどの立証を行いました。

そうしたところ、裁判官は、保険会社の打切り以降の治療費も損害として認めてくれて、Oさんが立て替えていた打切り後の治療費は全額回収されました。

通院付添費用全額認容

Oさんは高齢であったのと、息子さんも同じくむち打ちになっていたことから、息子さんの付添いで整形外科に通っていました。

そこで、こちら側としては、通院付添費用を裁判基準の日額3300円としたう上で、実通院日数123日分である合計40万5900円の請求をしていきました。

保険会社側からは、Oさんの傷害はむち打ちであって、通院付添いの医学的な必要性は認められないとの反論がなされました。

この点については、カルテなどからOさんの通院には息子さんの付添いが必要であったことを立証したところ、裁判官も請求額の全額を損害として認めてくれました。

80代女性の家事従事者性について休業損害・逸失利益合計で約200万円の認定

Oさんは息子さんと二人暮らしで、家事は主にOさんが行っていました。

そこで、この裁判では、Oさんが交通事故によるむち打ちによって、家事に支障が出ていて、将来も支障が出ることを主張し、主婦としての休業損害や逸失利益の請求をしていました。

保険会社側の弁護士からは、息子が家事をしていたのではないか、高齢者なので大した家事はしていなかったのではないか、元々骨粗しょう症などの既往があるため交通事故以前に家事をしていたことが信用できないなどの指摘がなされ、休業損害や逸失利益は0円とするべきであるとの主張がなされていました。

これらに対しては、同居親族が息子である場合、母親であるOさんが息子のために家事を行っていたとしても何ら不自然でないことや、交通事故前に通っていた病院のカルテの記載からもOさんが家事を行える健康状態にあったことや実際に家事を行っていたことが窺われること、交通事故後のカルテでも壁に寄りかかりながらできる限りの家事をこなしているという記載が認められるのであるから、交通事故前はよりいっそう家事をしていたことが窺われることなどを主張立証していきました。

その結果、休業損害と逸失利益は0円であると主張されていたのに対し、裁判官から休業損害と逸失利益の合計で約200万円が認められるとの判断を得ることができました。

5割の素因減額の主張に対して完全勝訴

保険会社側からは、保険会社の顧問医の意見書が提出され、骨粗しょう症の影響が著しく、このために症状が悪化していることから、5割の素因減額がなされるべきであるとの主張がなされました。

しかしながら、保険会社の顧問医の意見書をよく読んでみると、骨密度の判定結果を誤って把握していることが判明したため、まったく信用できない意見書であることを裁判所に対して意見しました。

Oさんの骨密度は、同年代の人と同水準のものであり、素因減額されるような疾患にはあたりません。

これで素因減額されるようですと、高齢者の交通事故被害の場合は、常に、損害賠償額が減額されることになってしまいます。

また、平成21年赤い本下巻講演録51頁以下において、「素因減額をするためには、賠償義務者である加害者側で、①被害者の身体的特徴が疾患に該当すること、②加害行為と当該疾患とが共に原因となって損害が発生した事、③当該疾患を斟酌しないと損害の公平な分担という不法行為法の趣旨を害すること、④過失割合において検討すべき諸要素につき立証する必要があります」と指摘されているなど、加害者の側に立証責任があるが、上記の意見書などを踏まえても、まったく素因減額についての立証は行われていないことの主張を行いました。

そうしたところ、裁判官も、こちら側の主張を全面的に認めてくれて、素因減額は無しという判断になりました。

裁判上の和解 損害賠償金555万円の認定

 

弁護士小杉晴洋のコメント:高齢者の交通事故被害の解決は、被害者側専門の弁護士によって変わります

Oさんのケースは、Oさんが高齢者であることを理由として、保険会社が支払うべき損害賠償額を低く抑えようとした事案です。

具体的には、治療費の打切り、休業損害や逸失利益の否定、5割の素因減額の主張などがなされました。

しかしながら、いまの高齢者というのは元気です。

70代・80代であっても、何らの支障なく家事労働を行っている方もたくさんいらっしゃいます。

高齢であるということのみを理由とする保険会社側のスタンスに対しては、断固として戦っていかなければなりません。

Oさんはむち打ちで後遺障害等級14級となっていますが、損害賠償額として555万円を獲得しました。

これは、30代の主婦の方の損害賠償水準と比較しても、高い解決金額といえます。

このように、高齢であることは一切の減額要素とならずに解決できるケースもあるのです。

高齢で交通事故に遭われてしまった方については、すんなり損害賠償金が支払われないケースが多いので、まずは被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。