交通事故の解決実績

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【頚椎捻挫】【人身傷害保険】【告訴】頚椎捻挫で裁判基準の2倍の逸失利益が認められ、裁判基準からの慰謝料増額も認められた事例

Gさん 20代・女性・大学生

【頚椎捻挫】【人身傷害保険】【告訴】頚椎捻挫で裁判基準の2倍の逸失利益が認められ、裁判基準からの慰謝料増額も認められた事例

解決事例のポイント

① 20代前半の大学生のむち打ちについて後遺障害等級14級9号を獲得
② 告訴によって加害者に罰金刑を科す
③ 裁判基準の倍額となる逸失利益を獲得
④ 通院慰謝料・後遺症慰謝料ともに裁判基準の上限から更に増額(20%~40%増し)
⑤ 尋問によって交通事故内容を明らかにし、被害者の過失0の立証に成功
⑥ 加害者無保険事案につき人身傷害保険金を利用することで判決認容額の全額を回収

 

相談前

Gさんは、20代前半の女子大学生です。

ドラッグストアでも買い物を終え、店舗前の駐車場内を歩いていたところ、駐車区画から急に動き出した車に衝突されてしまい、頚椎捻挫の傷害を負ってしまいます。

ところが、加害者が、任意保険に加入していないことが判明し、また、加害者に資力がなかったことから、Gさんは今後どうしたらよいのか不安な思いをすることになりました。

そこで、お母さんと一緒に弁護士を探してみることにしました。

 

法律相談

Gさんは、お母さんと一緒にいくつかの法律事務所を回ってみましたが、説明を聞いても、どのような流れで進んでいくのかいまいちよくわかりませんでした。

そこで、県外の弁護士も探してみることにし、弁護士小杉の法律相談を受けることになりました。

なお、当事務所では、弁護士費用特約・法律相談費用特約の有無にかかわらず、相談者の方から相談料を頂いておりません。

Gさん親子との法律相談は、1時間半に及び、刑事事件と民事事件に分けて説明させていただきました。

刑事事件の流れの説明-告訴について―

Gさん親子が、加害者の刑事処分について気にされていたことから、刑事事件の流れの説明をしました。

交通事故というのは、通常、故意に(わざと)人をケガさせるのではなく、過失(不注意)によって人にケガを負わせていますので、故意犯である傷害罪と比べると、悪質性が低く、不起訴とされるケースがほとんどです。

被害者の方が高次脳機能障害などの重傷となった場合には、起訴されて刑事裁判にかけられたり、略式命令が出されて罰金刑が下されることもありますが、Gさんの負った傷害はむち打ちですので、通常は不起訴処分となります。

しかし、Gさんは、加害者が無保険で、かつ、資力がないために、何らの賠償を受けることもできず、また、加害者から一切の謝罪もないことから、どうしても加害者が許せないでいました。

そこで、加害者を刑事告訴することにして、そのサポートをさせていただくことにしました。

民事の損害賠償請求の流れ―人身傷害保険の活用について―

次に、民事の損害賠償請求の流れを説明させてもらいました。

加害者が無保険の場合には、民事保全や民事執行を駆使して、加害者から直接損害賠償金を回収するというケースもありますが、無いところからは取れないのが実情です。

そこで、Gさんの親御さんの車両保険について内容を確認することにしました。

そうしたところ、Gさんのお父さんのお車で人身傷害保険に加入していることが判明します。

そして、保険内容や当該保険会社のWEB約款を確認したところ、同居家族であるGさんが交通事故被害に遭った場合にも人身傷害保険の適用があり、かつ、それは当該車に乗っている際の交通事故に限らず、歩行中の交通事故であっても対象となることが判明します。

人身傷害保険というのは使っても保険料が上がる性質のものではないため、なるべく使っていった方が良い保険商品ですが、約款内容や判例の影響によって使い方が難しくなっていて、先に全額回収してしまうと、裁判基準よりも低額の水準の保険金しか受け取れないなどの支障が出てきます。

Gさんの件では、

①人身傷害保険を使って病院への治療費の支払を行って通院をする
②治療が終わっても症状が治らない場合は、加害者の自賠責保険に後遺障害等級の申請をする
③後遺障害等級の申請が終わっても、人身傷害保険金の請求は行わずに、加害者に対して民事訴訟を提起する
④民事裁判で判決をもらったら、その判決書をもとに人身傷害保険金の請求をする

という流れで進める方針を説明しました。

こうすることで、判決で認容された損害賠償額の全額を、人身傷害保険で支払ってもらうことができます。

弁護士費用特約について

人身傷害保険と同様、弁護士費用特約も、使っても保険料が上がる性質の保険商品ではないため、これが附帯されているのであれば、積極的に使った方が良いということになります。

Gさんの場合、人身傷害保険と同様、お父様のお車の保険に弁護士費用特約が付いていて、同居家族であるGさんが交通事故被害に遭った場合にも弁護士費用特約が使え、また、それは当該車に乗っている際の交通事故に限らず、歩行中の交通事故であっても対象となることが判明します。

そこで、弁護士費用特約を用いて後遺障害等級の申請や加害者への民事訴訟の提起を行っていくことにして、Gさんの弁護士費用のご負担がなくなるようにしました。

 

刑事告訴と検察への捜査協力によって加害者に罰金刑を科す

法律相談時の方針のとおり、加害者を刑事告訴することにしました。

刑事告訴をすると、それに基づき捜査をしなければならなくなるため、警察や検察は面倒くさがって、告訴を受理しようとしないケースもありますが、加害者側が無保険の事案で、一切の賠償金の支払いもなく、また、謝罪がないことを説明して、なんとか受理してもらうことに成功しました。

そして、この交通事故によってGさんに生じたお怪我の内容についての医学的資料の提供を捜査担当の検察官に送付したり、交通事故の内容を説明するなどの捜査協力を行いました。

そうしたところ、捜査担当検察官は、交通事故加害者を略式命令にかけてくれ、加害者に罰金刑が科されることになりました。

略式命令による罰金刑は、行政罰ではなく刑事罰であるため、前科扱いとなります。

 

後遺障害等級の申請による14級9号の獲得

Gさんは、人身傷害保険によって治療を続けますが、首の痛みが取れなかったため、後遺障害等級の申請をすることにしました。

後遺障害診断書の作成をこちらでサポートし、主治医の先生に後遺障害等級の認定がされやすくなるような診断書をご作成いただき、これを提出することで、無事後遺障害等級14級9号を獲得することができました。

20代前半など若年被害者の場合、治癒力が高いため、後遺障害等級の認定がなされないことも多いですが、交通事故によって身体に加わった衝撃の大きさなどを立証することで後遺障害等級獲得に結び付けることができました。

 

民事裁判 佐賀地方裁判所

後遺障害等級を獲得したため、当初方針どおり、人身傷害保険請求はひとまず置いておいて、加害者に対して民事訴訟を提起することにしました。

加害者は、自身では対応できないと思ったのか、弁護士を立てて応戦してきました。

加害者側弁護士の反論

加害者側の弁護士は、こちら側が主張する事故態様と異なる事故態様を主張してきました。

そして、Gさんにも過失があることや、この交通事故では後遺症が残らないことなどを主張してきました。

加害者は資力がなかったので、必死に損害賠償額を下げるための戦いをしてきていることになります。

なお、こちら側の方針としては、民事裁判で判決を得た後は、その判決書をもとに加害者から直接回収するのではなく、人身傷害保険金の請求をしていくという方針で考えていました。

人身傷害保険金が被害者に支払われた後に、人身傷害保険の保険会社から加害者に対して請求がいきますので、人身傷害保険を利用したとしても、加害者が損害賠償金の負担をしなくて済むということではありません。

尋問によって被害者の主張が正しいことを裏付ける

加害者側がこちら側と異なった事実主張をしてきましたので、尋問によってこちら側の主張が正しいことを裏付けていきました。

担当検察官と協議した上、作成してもらった実況見分調書の交通事故現場見取図をもとに、交通事故態様を明らかにし、加害者側が主張するストーリーは事実と整合しないことを法廷の場で明らかにしていきました。

なお、このプロセスは、法廷の場でぶっつけ本番で行うわけではなく、事前にGさんと協議をして、尋問の練習を行うことにより実現していきます。

また、交通事故の内容のみならず、交通事故被害のせいで取得単位を制限せざるを得なくなったこと、就職活動にも影響が出たこと、交通事故の時期が期末試験の時期であったため入院加療をすることができなかったことなどを明らかにし、Gさんが被った精神的苦痛の内容を具体的に裏付けていきました。

加えて、現在も後遺症が残っていていて、その症状のせいで、就職先での仕事がしづらくなっていることも立証していきました。

被害者の過失0+後遺障害等級14級9号の認定

加害者側はGさんの主張する事故態様と異なる事故態様を主張していましたが、尋問によって、こちら側の主張する事故態様が採用され、Gさんの過失は0と判断されました。

また、この交通事故によって身体に加わった衝撃の強さの立証に成功し、佐賀地方裁判所の裁判官も、自賠責保険と同様、後遺障害等級14級9号の認定をしてくれました。

傷害慰謝料(通院慰謝料)を裁判基準の上限から更に2割増しで認定

尋問によって、取得単位を制限せざるを得なくなったこと、就職活動にも影響が出たこと、交通事故の時期が期末試験の時期であったため入院加療をすることができなかったことなどを明らかにしたため、このことを裁判官も考慮してくれて、傷害慰謝料(通院慰謝料)額を裁判基準の上限額から更に2割増しして認定してもらうことができました。

後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)を裁判基準の上限から更に4割増しで認定

尋問によって、本来就きたかった職業に関する資格取得の勉強などができなかったことや、現在就職した先でも後遺症のために仕事がしづらくなっていることを立証したため、これらのことを裁判官が考慮してくれて、後遺症慰謝料額を裁判基準の上限額から更に4割増しして認定してもらうことができました。

後遺症逸失利益を裁判基準の2倍で認定

尋問によって、症状固定時に残存していた症状が、尋問時も改善されず苦しみ続けていることを立証し、また、医学的証拠によって、症状が残存することを立証していたため、裁判官もこれを考慮してくれました。

具体的には、むち打ち症の後遺障害等級14級の場合、通常労働能力喪失期間は5年と判断されるのに対し、その2倍である10年の認定を受けることができました。

また、加害者側は、Gさんに仮に後遺障害等級が認められるとしても、年収計算は就職先の年収をベースに算定するべきであると主張していましたが、この点の主張も排斥され、2倍以上の年収となる約500万円の基礎収入額が認められました。

 

人身傷害保険金の請求 判決認容額の全額を回収

以上の内容の完全勝訴判決を獲得し、その判決書記載どおりの人身傷害保険金を回収することができました。

 

弁護士小杉晴洋のコメント:加害者が無保険であっても工夫次第で高額の損害賠償金を全額回収することができます

Gさんのケースは様々な重要な点が含まれています。

被害者側専門の弁護士が介入しなければ、加害者が無保険であるという理由で泣き寝入りを強いられていた可能性もあります。

告訴をすることで加害者に刑事責任を負わせるとともに、民事にも利用できる刑事記録を検察官に作ってもらい、この刑事記録の証拠を民事裁判で利用することによって、加害者側の弁護士の主張を排斥することに成功しました。

また、慰謝料や逸失利益で裁判基準以上の金額の判決を獲得し、人身傷害保険金をその後に利用することで、当該賠償額を全額回収することができました。

人身傷害保険は、保険会社によって内容も違いますし、適用される判例も異なってきますので、使い方が最も難しい保険といえます。

加害者側が無保険のケースは、一度被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。