骨折 下肢 神経症状
膝蓋骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
膝蓋骨とは
膝関節を構成する骨の一つで、膝の前についているお皿のような骨です。
膝蓋骨は膝関節を保護するとともに、テコの原理によって大腿四頭筋腱の力を増幅する役割も果たします。
大腿四頭筋は大腿前面にある筋肉で、大腿直筋、内・外側広筋、および中間広筋からなります。大腿四頭筋は膝蓋骨を介して膝蓋腱(下のイラストでは膝蓋靱帯。)となり脛骨粗面に付着し、膝関節を伸展させる作用があります。
膝蓋骨骨折を受傷する原因は
直達外力による受傷
例えば、前方に倒れた際に膝をつき、膝蓋骨前面を直接強打した場合です。
介達外力による受傷
膝関節屈曲位(膝関節を曲げた状態)で大腿四頭筋の牽引力が働き、膝蓋骨に大腿骨顆部(大腿骨の膝関節に近い部位)を支点とした屈曲が加わり発生します。
膝蓋骨骨折の態様は
直達外力
骨折線は複雑になり粉砕型になります。開放性骨折になることもあります。
介達外力
横骨折の形をとり、骨折線は膝蓋骨中央あるいは上下端に入ります。膝蓋骨前面の腱膜が離断して膝蓋支帯が断裂すると、中枢骨片は大腿四頭筋に牽引されて転位し骨折面は離開します。
膝蓋骨骨折の症状は
骨折部位の疼痛や膝関節の可動域制限が発生する可能性があります。
完全骨折(骨の生理的連続性が完全に失われたもの)では膝蓋骨前面に強い疼痛を訴え、起立、歩行が困難になり、膝関節の自動伸展(膝関節を伸ばす動き)が不能になります。
膝蓋骨骨折に対する治療
(標準整形外科学第15版(医学書院)、834~835頁)
初期治療は、下肢を伸展あるいは軽度屈曲させて副子で固定し、クーリングを施行します。関節内に貯留した血液を穿刺吸引します。転位のないものや骨片間の離開の少ないものでは、保存療法も可能です。シリンダーキャスト(膝関節伸展位で大腿上部から下腿下端までのギプス固定)を行い、荷重および歩行はできる限り許可します。3~4週間のギプス固定の後、膝関節屈曲運動を徐々に開始します。転位がある場合、大腿四頭筋の収縮による強い張力が骨折部に作用するため、保存療法による骨癒合は期待できず、手術療法が適用になります。
横骨折では、引き寄せ鋼線締結法が用いられることが多いです。粉砕骨折の場合、膝蓋骨周囲に軟鋼線通す環状鋼線締結などが行われます。この場合でも、関節拘縮を防ぐため、固定性に応じて術後1~2週から関節運動を開始することが望ましいと言われます。手術に際しては、膝伸展機構再建のため、断裂した内・外側の膝蓋支帯と膝蓋骨前面の腱膜を縫合します。また、術後はなるべく早期から大腿四頭筋の強化訓練を実施することが重要です。
認定されうる後遺障害等級は
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
骨折部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
骨折の影響で股関節の可動域に制限が出た場合、認定の可能性があります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの |
検査
膝伸展位単純X線2方向撮影で、骨折線を確認します。骨片の離開や粉砕の程度の確認は3D-CTが有用です。
不全骨折では、MRI検査やX線斜位撮影が有用です。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、834頁)
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で膝蓋骨骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、膝蓋骨骨折の態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。