骨折 下肢 神経症状
膝の骨折について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では膝の骨折について整理しています。
膝の構造
このイラストは右ひざを正面からみたときのものです。腓骨が向かって左側、脛骨が右側にあります。
膝関節の骨形態
膝関節は、大腿骨、脛骨(けいこつ)、および膝蓋骨(しつがいこつ)からなる関節で、人体で最も大きな関節です。
大腿骨と脛骨の間の大腿脛骨関節(FTJ)は内側コンパートメントと外側コンパートメントに分かれています。
もう一つの関節面が膝蓋骨と大腿骨の間の膝蓋大腿関節(PFJ)になります。
膝関節の安定性は、関節面形状自体ではなく、半月板、靱帯を中心とした軟部組織に頼っています。
膝関節は下肢の3大関節です。
靱帯の支持機構
内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)、外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)、後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)の4つが主な靱帯です。
半月板
半月板は繊維軟骨よりなり、荷重分散機能を有する重要な組織です。
膝部で骨折した場合の症状について
骨折部位に痛み等の神経症状が発生しえます。また、膝関節の動きにくさが生じる可能性があります。
骨折部位による骨折の分類について
大腿骨顆上・顆部骨折
大腿骨顆上・大腿骨顆部は大腿骨の遠位部(膝関節に近い部位)にあります。大腿骨遠位骨幹部分に過伸展力が加わることで生じます。若年者の外傷の1/3は多発外傷に伴うものであり、膝関節内にも骨折が及びやすく膝関節内の出血や解放骨折につながることも多いです。
受傷時より膝関節周辺の腫脹・疼痛が著しく起立不能になります。膝窩動脈損傷などの神経・血管の状態を注意深く調べることが必要になります。X線評価では正・側像が必須になり、牽引下での単純X線像は骨折型を理解する助けになります。関節内骨折がある場合はCT検査が有用です。
保存治療の適応は、大腿骨遠位部の関節外骨折で嵌入(かんにゅう:はまり込むこと)し転位のないものか、手術が行えない患者の場合であり、ほとんどが手術適用になります。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、832頁)
膝蓋骨骨折
膝のお皿の骨の骨折です。
脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折)
膝関節部に外力が加わった際に、大腿骨顆部(大腿骨のなかでも膝に近い部分)が衝突しますが、このとき多くは脛骨側に骨折が生じます。
頻度の高い骨折の一つで、荷重関節の関節内骨折です。
骨折の形は、外力の強さとその作用方向によって様々です。関節面にかかる骨折は脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折(プラトーは脛骨上面の平坦な面を意味します。))と呼ばれます。
→脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折)の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
脛骨骨幹部骨折
脛骨の骨幹部(中間部位)の骨折です。膝関節そのものの骨折というわけではありませんが、脛骨は膝関節を構成する骨の一つで、脛骨骨幹部む下腿部は外傷を受けやすい部分ですので、関連情報としてご案内しております。
→脛骨骨幹部骨折の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
膝部受傷時に受傷しうる他の傷害
膝関節には骨だけではなく、靱帯や半月板等の重要な軟部組織が存在します。
交通事故等で膝部に受傷した場合、骨折とともに、あるいは骨折はなくてもこれらの軟部組織を損傷している可能性があります。
膝の靱帯損傷について
内側側副靱帯損傷、前十字靱帯損傷、後十字靱帯損傷、後外側支持機構損傷(外側側副靱帯損傷含む)、複合靱帯損傷の種類があります。
→その他、膝の靱帯損傷全般に関する記事はこちらをご覧ください。
膝の半月板損傷について
荷重が負荷された状態で膝関節に強い内・外旋の力が加わると、半月板が損傷を受けます。
断裂形態は、縦断裂、横断裂、水平断裂に分類されます。
→半月板損傷の後遺症や検査方法等についてはこちらの記事をご確認ください。
→半月板損傷を早く治すための治療についてはこちらの記事をご確認ください。
膝の骨折後に予測される後遺障害等級
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
骨折部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
骨折の影響で膝関節の可動域に制限が出た場合、8級、10級、12級の等級が認定される可能性があります。
また、人工関節・人工骨頭が挿入置換された場合には別の認定基準が準備されており、8級か10級での認定になります。
靱帯損傷等で動揺関節になった場合、8級、10級、12級での認定可能性があります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→以下の3つのうちいずれか。 ・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの ・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→以下の3つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下には制限されていないもの ・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの ・重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの(動揺関節の場合) |
変形障害
別表第二第12級8号 | 長管骨に変形を残すもの
→大腿骨または脛骨の骨端部にゆ合不全を残すもの |
診断・検査
膝の骨折を受傷した際の診断に必要な検査については次の通りです。
なお、膝部骨折と同時か、あるいは骨折はなくても膝部受傷時に発生する可能性のある半月板損傷と靱帯損傷も念頭に置いて説明しています。
画像診断
単純X線検査
通常は、正面像、側面像、軸射像の3方向撮影を行います。
必要に応じて追加のX線像の撮影が検討されます。例えば、大腿脛骨関節の軟骨評価を行う場合はローゼンバーグ撮影肢位が有用だと言われます。
特殊X線撮影
ストレスX線撮影
ストレスX線撮影は、靱帯損傷による膝関節の不安定性を定量的に評価するための検査です。膝関節に力を加え撮影します。
関節弛緩性には個人差があるので、必ず両側の膝の撮影を行い、健患側差をもって評価を行います。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、674~675頁)
関節造影
半月板損傷の診断などのため、水溶性の太陽性造影剤と空気を関節腔に注入する二重造影法が行われてきましたが、MRIの普及とともに行われることはほとんどなくなりました。
MRI検査
靱帯や半月板などの軟部組織、関節軟骨などの評価に優れ、膝関節疾患の診断にはきわめて有用と言われます。
靱帯損傷や半月板損傷の診断には、脂肪抑制を併用したT2強調像、T2*(T2スター)強調像、プロトン強調像が有用です。
CT検査
骨の解像度が高いため、骨折の評価には非常に有用です。
超音波検査
靱帯、腱などの軟部組織の評価には有用です。
徒手検査
前方引出しテスト、後方引出しテスト、ラックマンテスト等で動揺性の有無を確認します。
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で膝に骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、膝の骨折の態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。
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