骨折 下肢 神経症状
脛骨骨幹部骨折の後遺症について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では、下腿にある長管骨の1つである脛骨の骨幹部(中央部)の骨折を受傷した場合の後遺症ついて説明しています。
脛骨とは
人体の下腿部には2本の長管骨があり、体の内側の太い骨を脛骨(けいこつ)(本記事冒頭のイラストでオレンジ色に着色)、外側の細い骨を腓骨(ひこつ)と言います。
2本合わせて下腿骨といいます。
脛骨骨幹部とは
脛骨は細長い棒状の骨ですが、膝に近い部分を近位部、足首に近い部分を遠位部、その中間を骨幹部といいます。
脛骨骨幹部骨折はどのような場合に受傷するか
交通事故による打撲などの直達外力や、スキーでの捻転力による介達外力で受傷することがあります。
脛骨骨幹部骨折の症状は
受傷直後から起立不能になります。疼痛、腫脹、変形を認め、圧痛と異常可動性が著明です。
下腿は外傷を受けやすい部分になり、脛骨は皮下の浅層にあって軟部組織の被覆も少ないため解放骨折になりやすい部分です。
脛骨骨幹部骨折に対する治療は
(標準整形外科学第15版(医学書院)、838~839頁)
保存療法
下腿皮下骨折の多くは保存的に治療可能です。特に、転位の少ないもの、変形が屈曲のみのもの、腓骨の骨折がないものなどは仮骨形成の中心となる下腿骨間膜が健全で、骨折部への血行もよく保たれているため、保存療法のよい適用だとされます。
手術療法
脛骨骨幹部の骨折、特に横骨折は髄内釘固定が優れています。手術の翌日から膝・足関節の運動を始め、数日以内に荷重歩行を開始することができます。遷延癒合(せんえんゆごう)(骨折治癒に必要と予測される期間を過ぎても癒合がみられない状態で、骨折部の癒合過程は残存しているもの。)や癒合不全例(骨折部の癒合過程が止まってしまった状態。)に対しても、自家骨移植を併用した髄内釘固定法が行われます。
解放骨折の治療
下腿は解放骨折になりやすい部位です。骨癒合と感染予防には、早期に骨折部を結構の豊富な軟部組織で覆うことが重要だと言われています。
脛骨骨幹部骨折で認定されうる後遺障害等級は
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害としては、以下のようなものが想定できます。
なお、脛骨に近い関節は膝関節と足関節(足首)ですが、骨幹部の骨折は関節の動きにくさに影響を及ぼしにくいと考えられますので、機能障害での認定は考えにくいと思われます。
神経症状
骨折した箇所に痛みやしびれ等が残存した場合に認定される可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
変形障害
※本記事は脛骨(けいこつ)の骨幹部に関するものですが、脛骨に隣接する腓骨(ひこつ)に関連する後遺障害も参考として記述しました。漢字で記載すると紛らわしいのでご留意ください。
別表第二第7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
→脛骨および腓骨の骨幹部等、または脛骨の骨幹部等にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの |
別表第二第8級9号 | 1下肢に偽関節を残すもの
→脛骨の骨幹部等、または脛骨および腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すものの、「常に硬性補装具を必要とするもの」以外のもの |
別表第二第12級8号 | 長管骨に変形を残すもの
→以下の4つのうちのいずれかに該当する場合 ・脛骨に変形を残すものであって、その程度が外部から見てわかる程度以上のもの。 具体的には、15度以上屈曲して不正ゆ合したもの。 なお、腓骨のみに変形を残すものであっても、その程度が著しく、明らかに外部から想見できる程度のものであれば「長管骨に変形を残すもの」として取り扱います。 ・脛骨の骨端部にゆ合不全を残すもの。 また、腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すものについても、「長管骨に変形を残すもの」として取り扱います。 ・脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの ・脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの |
短縮傷害
別表第二第8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
別表第二第10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
別表第二第13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
下肢の短縮については、上前腸骨棘と下腿内果下端の間の長さを測定し、健側と比較して、短縮した長さを算出します。
→下肢の長さの測定方法についてはこちらの記事をご覧ください。
過成長
短縮障害とは異なりますが、小児の骨折などでは、骨折を契機として逆に成長が促進され、骨折した側が健側と比較して長くなってしまう、いわゆる過成長とよばれる障害が起こることがあります。過成長については、短縮の場合に準じ、健側と比較した長さの程度によってそれぞれ別表第二第8級相当、別表第二第10級相当、別表第二第13級相当とします。ただし、成長期であることから、認定時期については注意が必要です。
検査
X線検査は必須です。必要に応じてCT検査の実施を相談しましょう。
短縮傷害や過成長が懸念される場合は患側と健側の下肢の長さを測定し、比較しましょう。
小杉法律事務所の弁護士に相談を
交通事故や労災事故等で脛骨骨幹部を骨折した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、骨折の態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。