後遺障害等級の解説

下肢 神経症状

脛骨高原骨折について(弁護士法人小杉法律事務所監修)

本記事では膝関節を構成する骨の一つである脛骨の、近位部(膝に近い部分)の骨折について説明しています。

膝関節の構造

膝関節構造

こちらのイラストは、右ひざを正面からみたものです。

膝関節は、大腿骨、脛骨(けいこつ)、および膝蓋骨(しつがいこつ)からなる関節で、人体で最も大きな関節です。

脛骨は下腿にある長管骨の1つです。

脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折)とは

(標準整形外科学第15版(医学書院)、836~837、744頁)

脛骨近位端の骨折は、膝関節部に外力が加わった際に、大腿骨顆部(大腿骨のなかでも膝に近い部分)が衝突し、多くは脛骨側に骨折が生じます。

頻度の高い骨折の一つで、荷重関節の関節内骨折です。

脛骨近位部骨折ではX線検査では描出できない不顕性骨折が発生する部位として紹介されていますので、場合によってはMRI検査について主治医と相談をしましょう。

脛骨近位端骨折のうち、関節面にかかる骨折は脛骨プラトー骨折と呼ばれ、Schatzker(シャッカ―)分類がよく用いられます。

typeⅠ~Ⅵに分類され、数字が上がるほど重度になりますが、typeⅣ~Ⅵのプラトー骨折は高エネルギー外傷で生じると言われています。

関節面にかかる骨折は脛骨高原骨折(脛骨プラトー骨折(プラトーは脛骨上面の平坦な面を意味します。))と呼ばれます。

その他、膝関節全般の骨折についてはこちらの記事をご覧ください。

→不顕性骨折等骨折の分類については、こちらの記事で詳細を整理しています。(準備中)

脛骨高原骨折の症状

骨折部位の痛みや膝関節の動きにくさ等の症状が発生しえます。

受傷直後から起立や膝関節運動が不能になります。局所の圧痛、腫脹、皮下血腫が現れ、内反・外反変形が見られます。伸展位での膝関節の側方動揺性が特徴です。

合併症

内側側副靱帯損傷、十字靱帯損傷、半月板損傷を伴うことが多いです。

膝関節内側側副靱帯損傷についてはこちらの記事で整理しています。

前十字靭帯損傷についてはこちらの記事で整理しています。

半月板損傷についてはこちらの記事で整理しています。

腓骨神経麻痺を合併することもありますので注意が必要です。

腓骨神経麻痺の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。

後遺障害認定のポイント

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害としては、以下のようなものが想定できます。

神経症状

骨折部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。

別表第二第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
別表第二第14級9号 局部に神経症状を残すもの

機能障害

骨折の影響で膝関節の可動域に制限が出た場合、8級、10級、12級の等級が認定される可能性があります。

また、人工関節・人工骨頭が挿入置換された場合には別の認定基準が準備されており、8級か10級での認定になります。

靱帯損傷等を受傷して動揺関節になった場合、8級、10級、12級での認定可能性があります。

別表第二第8級7号  1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

→以下の3つのうちいずれか。

・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの

・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの

・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合)

別表第二第10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

→以下の3つのうちいずれか

・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの

・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下には制限されていないもの

・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合)

別表第二第12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

→以下の2つのうちいずれか

・患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの

・重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの(動揺関節の場合)

変形障害

別表第二第7級10号 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの→脛骨及び腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするもの
別表第二第8級9号 1下肢に偽関節を残すもの→脛骨及び腓骨の骨幹部等にゆ合不全を残すものの、「常に硬性補装具を必要とするもの」以外のもの
別表第二第12級8号 長管骨に変形を残すもの→以下の4つのうちのいずれかに該当する場合。

・脛骨に変形を残すものであって、その程度が外部から見てわかる程度以上のもの(具体的には、15度以上屈曲して不正ゆ合したもの)。

・脛骨の骨端部にゆ合不全を残すもの

・脛骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

・脛骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に減少したもの

検査

単純X線検査が必要です。

(標準整形外科学第15版(医学書院)、837頁、744頁)

圧潰、陥没の程度を見るのにはCTが有効です。

また、内側側副靱帯損傷、十字靱帯損傷、半月板損傷の確認のためにはMRIが、膝蓋動脈損傷の確認には造影CTが有効です。

脛骨プラトー骨折を含む脛骨近位部骨折は不顕性骨折がみられる部位として紹介されていますので、骨折の有無を確認するためにMRI検査をするかどうか、場合によっては主治医と相談しましょう。

弁護士に相談を

交通事故等の外傷で脛骨高原骨折を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、骨折の態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。