靭帯損傷/断裂 下肢 神経症状
前十字靭帯断裂について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
膝の構造
本記事冒頭のイラストは右ひざを正面からみたときのものです。腓骨が向かって左側、脛骨が右側にあります。
膝関節は、大腿骨、脛骨(けいこつ)、および膝蓋骨(しつがいこつ)からなる関節で、人体で最も大きな関節です。
膝関節の安定性は、関節面形状自体ではなく、半月板、靱帯を中心とした軟部組織に頼っています。
膝の靱帯の主なものは、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)、後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)、内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)、外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)の4つです。
この記事では膝の靱帯のうち、前十字靭帯の断裂についての説明をしています。
前十字靭帯(ACL)とは
前十字靭帯は大腿骨外側顆の顆間窩面後方部および脛骨顆間隆起の先方に付着します。大腿骨に対する脛骨の前方制動を担っています。
前十字靭帯断裂はどのような場合に受傷するか
ジャンプのあとの着地時、急な方向転換時などで受傷することが多いです。受傷時、断裂音を体感することもあります。
前十字靭帯断裂の症状は
受傷後早期に関節腫脹し、強い疼痛が発生します。
靱帯損傷の一般論として、以下のような分類がなされます。
1度 軽傷 | 靱帯繊維の軽微な損傷 |
2度 中等症 | 靱帯の部分断裂 |
3度 重症 | 靱帯の完全断裂 |
1度では自発痛、圧痛、軽度の腫脹と疼痛による運動制限が発生します。関節不安定性はありません。
2度では1度の症状に加え、関節内出血、軽度の関節不安定性が認められます。
3度では、2度の症状のすべてが強く、関節不安定性が顕著になります。靱帯断裂部に強い圧痛が認められます。
(整形外科学体系第15版(医学書院)、685頁、787頁)
前十字靭帯断裂に対する治療
前十字靭帯損傷後に対して保存療法を行った場合、完全に治癒する確率は低く、ある程度の前方不安定性が残存します。前方不安定性が残存すると半月板損傷のリスクが高まり、長期的には変形性膝関節症の発症リスクは上がりますが、短期的には前方不安定性が存在しても活動性の低い症例では日常生活に支障がないことが多いです。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、686頁、787頁)
前十字靭帯断裂に対する手術
手術は自家腱を用いた再建靱帯を、大腿骨および脛骨の解剖学的な靱帯付着部に作成した骨孔(こつこう:採取した自家腱の直径と同じ大きさの穴)に挿入し、固定する方法が一般的です。
→前十字靭帯損傷に対する手術についてはこちらの記事をご確認ください。
認定されうる後遺障害等級は
痛み等の神経症状や関節の動きにくさ、動揺性等で認定がなされる可能性があります。
→前十字靭帯断裂後に認定されうる後遺障害等級の種類や検査方法等についてはこちらの記事をご覧ください。
弁護士法人小杉法律事務所の弁護士に相談を
交通事故等の外傷で前十字靭帯断裂を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、靱帯断裂の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。