靭帯損傷/断裂 上肢 神経症状
手首の靱帯損傷(弁護士法人小杉法律事務所監修)
この記事では、手首の靱帯の損傷について整理しています。
手首の靱帯
靱帯とは、骨同士をつなぐ軟部組織です。
関節内外にある繊維性組織で、関節運動の方向性を規定し、過度の関節運動を防止する働きがあります。
手根骨は、近位手根列(舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨)と遠位手根列(大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨)に分類できます。
遠位手根列は靱帯により強固に連結され、ほぼ一塊として動きます。
近位手根列の各骨間は骨間靱帯(舟状月状骨間靱帯(SLIL)(舟状骨と月状骨をつなぐ)、月状三角骨間靱帯(LTIL)(月状骨と三角骨をつなぐ))で連結され、多少の捩れを許容します。
近位手根列の骨間靱帯が断裂すると近位手根列を構成する各骨が異常回転し、手根不安定症になります。
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、478頁)
手首の靱帯を損傷した場合の症状
疼痛や腫脹等の症状が生じます。
主な受傷形態
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、478頁、480~481頁、484頁)
舟状月状骨間靱帯損傷
舟状骨と月状骨をつなぐ舟状月状骨間靱帯の損傷です。
舟状月状骨間靱帯損傷を生じると舟状骨は掌屈し、一方、月状骨は月状三角骨間靱帯が保たれているため、背屈していく三角骨に引っ張られて背屈します。
手関節X線撮影で舟状月状骨乖離がないか確認します。
月状三角骨間靱帯損傷
月状骨と三角骨をつなぐ月状三角骨間靱帯の損傷です。
舟状骨と月状骨は掌屈し、三角骨が単独で背屈していきます。
こちらはX線での変化はないため、月状三角骨乖離の誘発テストで診断し、関節鏡で確認します。
月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼
月状骨周囲の靱帯損傷や手根骨骨折により月状骨周囲の手根骨が一塊となり、背側あるいは掌側に脱臼するのが月状骨周囲脱臼、月状骨のみが掌側に脱臼するのが月状骨脱臼です。
高所からの転落やオートバイによる交通事故などにより、手関節に大きな外力(特に手関節背屈と屈曲強制)が加わることによって生じます。
舟状骨骨折や橈骨茎状突起骨折、正中神経麻痺などを合併することもあるため注意が必要です。
手関節の単純X線画像(正面、側面)が必須です。手根骨相互の位置関係や骨折の有無などの評価には、CT画像も有用です。
tfcc(三角繊維軟骨複合体)損傷
tfccとは、尺骨と手根骨(月状骨、三角骨)の間にある関節円板と掌側・背側橈尺靱帯、尺側側副靱帯により構成されるハンモック様構造です。
→tfcc損傷の原因や症状、認定されうる後遺障害等はこちらの記事で整理しています。
認定されうる後遺障害
神経障害
痛みやしびれ等の神経症状が残存することがあります。
なお、靱帯損傷や骨折等の器質的損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでない場合、非該当か、等級認定が下りても14級になる可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
手首関節の動きにくさ(可動域制限)が残存する可能性があります。
なお、靱帯損傷や骨折等の器質的損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでないとか、受傷態様等から残存した可動域制限の説明がつかないとされる場合、機能障害としての後遺障害認定がなされない可能性があります。
別表第二第8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第二第10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
別表第二第12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
手首に受傷した場合、手首の可動域(屈曲(掌屈)・伸展(背屈)等)だけではなく、前腕部の回内・回外運動についても測定し、評価してもらうのが妥当です。
回内・回外の機能障害の認定にあたっては、健側の1/4以下に制限されているものを著しい機能障害に準じて別表第二第10級相当、健側の1/2以下に制限されているものを単なる機能障害に準じて別表第二第12級相当が認定されます。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で手首に靱帯損傷を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、靱帯損傷の部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。