靭帯損傷/断裂 上肢 神経症状
tfcc損傷(弁護士法人小杉法律事務所監修)
この記事では、手首のtfcc損傷について整理しています。
tfcc(三角繊維軟骨複合体)とは
tfccとは、尺骨と手根骨(月状骨、三角骨)の間にある関節円板と掌側・背側橈尺靱帯、尺側側副靱帯により構成されるハンモック様構造で、手に加わる力を尺骨に伝達する際のクッション作用に加えて尺骨を安定化させています。
→手首の靱帯損傷一般についてはこちらの記事で整理しています。
tfcc損傷の原因
tfccは転倒による軸圧や過度の回内によって損傷されることが多いです。
tfcc損傷の症状
手関節尺側(手首の外側、小指側)の痛みや回旋時痛等が生じます。
診断・検査
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、480~481、490頁)
理学所見と画像検査について、健側との対比が重要だとされています。
理学所見
TFCCストレステストでの疼痛誘発、尺骨小窩部の圧痛(fovea sign)、尺骨の背側不安定性(piano key sign)などが特徴的です。
画像検査
単純X線画像では、骨折の有無。遠位橈尺関節の開大などをチェックします。
CTではこれらに加え回内外旋時の尺骨頭の亜脱臼の有無も確認します。
MRIはtfccの診断に重要で、STIRなどの画像でtfccが描出され断裂の診断が可能です。
ただし、MRIはtfcc断裂の診断において感度の高い検査ですが、断裂の部位、性状を把握するには経験を要すると言われています。
関節造影は損傷部位の確認とともに局所麻酔薬を添付することにより、疼痛の一時的緩和を確認することで診断の一助になります。
手関節鏡での診断もなされることがあります。
tfcc損傷の治療
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、491頁)
tfcc損傷の保存療法はステロイドの遠位橈尺関節内注射と手関節尺屈防止tfcc装具を1か月装着します。
保存療法で無効な症例が手術適用になります。
認定されうる後遺障害
神経障害
痛みやしびれ等の神経症状が残存することがあります。
なお、tfcc損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでない場合、非該当か、等級認定が下りても14級になる可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
手首関節の動きにくさ(可動域制限)が残存する可能性があります。
なお、tfcc損傷が画像所見等の客観的な資料から明らかでないとか、可動域制限の説明がつかないとされる場合、機能障害としての後遺障害認定がなされない可能性があります。
別表第二第8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第二第10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
別表第二第12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
手首に受傷した場合、手首の可動域(屈曲(掌屈)・伸展(背屈)等)だけではなく、前腕部の回内・回外運動についても測定し、評価してもらうのが妥当です。
回内・回外の機能障害の認定にあたっては、健側の1/4以下に制限されているものを著しい機能障害に準じて別表第二第10級相当、健側の1/2以下に制限されているものを単なる機能障害に準じて別表第二第12級相当が認定されます。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等の外傷で肘部に靱帯損傷を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、靱帯損傷の部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。
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