後遺障害等級の解説

骨折 神経症状

尾てい骨の骨折(後遺症)(弁護士法人小杉法律事務所監修)

股関節骨格

こちらの記事では、尾てい骨骨折による後遺症について整理しています。

尾てい骨の骨折についてはこちらの記事でも整理しています。

尾てい骨とは

尾てい骨は正確には尾骨と言いますが、仙骨の下部に存在し、仙骨、寛骨とともに骨盤を形成します。

尾骨(尾てい骨)の構造

一般に尾てい骨と呼ばれる尾骨は、3~5つの尾椎が融合して一つの骨になっています。

骨折の原因

転倒時に尻もちをついたときなどに受傷することがあります。

骨折後の症状

骨折部位に疼痛等の神経症状が生じることがあります。

認定されうる後遺障害

尾てい骨は仙骨・寛骨とともに骨盤を形成しますが、尾てい骨単体の骨折の場合、疼痛等残存すれば神経症状での認定が考えられます。

認定区分

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。

神経症状

骨折部位に疼痛等を残す場合です。

認定区分でいえば違いは「頑固」かそうでないかですが、これは被害者の方の主観の問題では全くなく、画像所見その他の他角的所見によって「痛そう」かどうかの裏付けが十分とれるのかどうかによります。

弁護士の感覚としては、骨折の場合、関節部位に関連する骨折で骨折部位に癒合不全(凸凹など)が残った場合等は12級が出やすい印象ですが、そうでなければ14級認定が多いです。最終的な癒合の状況が良好であれば、非該当の可能性も十分あります。

後でも書いていますが、尾てい骨骨折単体の場合では認定がされたとしても14級が限界なのではないかと思います。

別表第二第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
別表第二第14級9号 局部に神経症状を残すもの

変形障害としての認定はありません。

骨盤骨のうち寛骨と仙骨は「その他体幹骨」として変形障害の認定対象になりますが、尾てい骨(尾骨)だけは「その他体幹骨」に含まれません。なので、尾てい骨の変形のみでは後遺障害認定を受けることができません。

後遺障害申請のポイント

画像所見等で骨折が確認できなければ捻挫・打撲の扱いになりますから、非該当のリスクが高まります。

なので、レントゲン検査(必要に応じてCT検査も)をして、骨折の受傷と症状固定時の癒合状況を明らかにする必要があります。

事故による骨折の発生が立証できた場合でも、尾てい骨骨折のみの場合、関節部位でもありませんし、認定はされても14級が限界なのではないかという感覚があります。

慰謝料等の損害について

交通事故等で尾てい骨に骨折を負った場合、加害者に対して治療費や休業損害、通院慰謝料等の請求を行う必要があります。

後遺障害が残存した場合は逸失利益や後遺障害慰謝料の請求も必要です。

慰謝料の算定については民事交通事故訴訟損害賠償算定基準(俗にいう赤本)の上巻が一応の基準(但し、裁判した場合)になります。

以下いずれも、2024年度赤本上巻からの記載になります。

通院慰謝料(ただし、骨折が明らかだという前提での別表Ⅰ。)

通院期間3か月なら73万円、6か月なら116万円、等の原則的な計算方法があります。(2024年版赤本上巻、212頁)

長期になれば金額も基準の上では上がりますが、あまり長いと因果関係の有無が争われるでしょう。また、通院頻度による修正もあります。

後遺障害慰謝料

12級であれば290万、14級なら110万円になります。(2024年版赤本上巻、216頁)

弁護士に相談を

交通事故や労災事故等の外傷で尾てい骨に骨折を受傷してしまうことがあります。治療費や休業損害、慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。