圧迫骨折・体幹骨骨折 下肢 神経症状
寛骨臼骨折|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

こちらの記事では、骨盤の骨折のうち、寛骨臼骨折について整理しています。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をいただいております。
寛骨臼(かんこつきゅう)とは

骨盤を構成する寛骨(かんこつ)は、出生~小児期には腸骨・坐骨・恥骨に分かれていますが、成人期には骨癒合が完成し、寛骨という一つの骨になります。そのため、成人で腸骨、坐骨、恥骨と表現する場合、それは別々の骨のことではなく、寛骨という一つの骨のどの部位を指すのか、という前提の表現になります。
左右の寛骨外側のカップ状の部分を寛骨臼(かんこつきゅう)と言いますが、大腿骨頭が合わさり、股関節を形成します(下図もご覧ください。)。

寛骨臼骨折の原因
寛骨臼骨折は交通事故や高所からの転落などの高エネルギー外傷によって発生することが多いです。
大腿骨大転子からの側方圧迫外力、膝屈曲時の膝からの軸圧外力、膝伸展時の足からの軸圧外力などが加わり、大腿骨頭がハンマーの動きをして寛骨臼に衝撃を与えて骨折が生じます。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、819頁)
診断・検査について
単純X線検査(レントゲン検査)で診断を行いますが、関節内骨折のため詳細な骨折型の把握が必要となる場合もあります。その場合には、立体的に骨の状態を描画することができるCT画像検査が用いられることが多いです。
骨折後の症状と懸念される合併症

骨折部位の疼痛や股関節の動きにくさ等の症状が発生する可能性があります。
⑴変形性股関節症
(標準整形外科学第15版(医学書院)、821、640、643頁)
外傷の外力による軟骨損傷や関節内荷重部の段差が残ると変形性股関節症の発生は避けられないと言われています。
股関節の疼痛、股関節の可動域制限、跛行、下肢の短縮等の症状が発生する可能性があります。
治療方針として人工股関節置換術を考慮しなければいけない場合もあります。
※跛行(はこう):正常な歩行ができない状態。疼痛跛行、トレンデレンブルグ跛行、墜下性歩行など様々なタイプがあります。
⑵大腿骨頭壊死症
(標準整形外科学第15版(医学書院)、650頁)
股関節の後方脱臼骨折に合併することが多く、整復までに時間を要した場合は発生率が増加します。
手術療法として人工股関節置換術が検討されることもあります。
⑶外傷性股関節脱臼(後方脱臼)
(標準整形外科学第15版(医学書院)、821、823~824頁)
外傷性股関節脱臼は後方脱臼と前方脱臼に大別されますが、後方脱臼が過半数を占めるとされています。
走行中の自動車の座席に座っていて正面衝突した際、膝をダッシュボードに打ち付けた場合などに生じます(ダッシュボード損傷)。
自覚的には激痛を感じ、坐骨神経が圧迫されている場合は、足部に放散する坐骨神経痛や運動麻痺を伴います。
認定されうる後遺障害
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予測されます。

⑴神経症状
骨折部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
| 別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
| 別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
⑵機能障害
寛骨臼骨折が股関節の可動域制限に影響を及ぼしている場合は認定の可能性があります。
また、人工関節・人工骨頭が挿入置換された場合には別の認定基準が準備されています。
| 別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの→以下の2つのうちいずれかに該当
・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの |
| 別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの→以下の2つのうちいずれかに該当
・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下には制限されていないもの |
| 別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの |
⑶下肢の短縮障害
| 別表第二第8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
| 別表第二第10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
| 別表第二第13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
下肢の短縮については、上前腸骨棘(本記事冒頭のイラストで位置をご確認ください。)と下腿内果下端の間の長さを測定し、健側と比較して、短縮した長さを算出します。
この他に、下肢長の測定を行う方法としては、エックス線写真を使用する方法があります。これには、通常のフィルムを貼り合わせる方法と、必要な長さに応じて調節し下肢全体を1枚のフィルムに収めることのできるロールフィルム(ロールレントゲン)を使用する方法があります。下肢長に疑問があるときは、このような画像検査資料を取り付けることにより適切な認定を行う必要があります。
⑷体幹骨の変形障害
| 別表第二第12級5号 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
寛骨臼は骨盤骨の一部分であることから、寛骨臼骨折によって骨盤骨に著しい変形が残存してしまった場合には、体幹骨の変形障害の等級が認定される可能性があります。なお「著しい変形」とは、裸体となったとき、変形や欠損が明らかにわかる程度のもので、レントゲン写真によってはじめて見出される程度のものは該当しません(この点については、採骨による変形の場合も同様です)。
後遺障害申請時には変形や欠損が外観上判別しやすい写真を撮影し、添付するのが有用です。
後遺障害申請時の留意点

骨盤骨が高度に変形したために、股関節が転位して運動障害が残った場合は、骨盤骨の変形と股関節の機能障害とを併合することができます。
たとえば、変形障害12級と股関節の機能障害12級の場合、併合して11級での後遺障害認定がなされます。
後遺障害の等級は損害賠償請求額の計算に直結しますので、寛骨臼骨折後に機能障害が残った場合、変形障害の残存がないのかどうか、忘れずにチェックすることが重要です。
しかし、骨盤骨の変形によって、下肢そのものには何の異常も認められないが、下肢を短縮したのと同じような障害が残った場合は、併合することはせず、どちらか重い方の後遺障害の等級が適用されることになります。
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本記事では、寛骨臼骨折について解説いたしました。
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