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恥骨骨折|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

こちらの記事では、寛骨の一部位である恥骨の骨折について整理しています。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事のご監修をいただいております。
→恥骨部位含む骨盤の骨折についてはこちらの記事で整理しています。
恥骨とは?

骨盤を構成する骨の一つに寛骨という骨があります。出生~小児期においては、寛骨は腸骨、坐骨、恥骨に分かれていますが、成人期には骨癒合して寛骨として一つの骨になります。そのため、成人以降で「恥骨」という場合、寛骨の一部分を指す表現になります(上図では青色部分が恥骨です。)。
恥骨を含む寛骨は左右に2つあり、前方では恥骨結合、後方では仙骨とつながって骨盤輪を構成しています。
なので、恥骨骨折<寛骨骨折<骨盤輪骨折と整理することが可能です。
恥骨骨折について
⑴恥骨骨折が生じる原因と分類
恥骨骨折含む骨盤輪骨折は交通事故や墜落などの高エネルギー外傷で生じることが多いです。
他方、骨粗鬆症を有する高齢者の低エネルギー外傷(主に転倒)により生じる脆弱性骨盤輪骨折もあります。
骨盤輪骨折はYoung-Burgess(ヤング-バージェス)分類により、側方圧迫型(LC)、前後圧迫型(APC)、垂直剪断型(VS)と大別されますが、
どの類型でも恥骨部分の骨折が生じる可能性はあります(標準整形外科学第15版(医学書院)、817頁、図38-42)。
⑵恥骨骨折の症状
恥骨骨折によって引き起こされる症状としては、骨折部位の疼痛等がよくみられます。
恥骨は股関節部の辺りに位置するため、その周辺に痛み等の神経症状が生じることが多いです。
また、両側恥坐骨骨折の場合には、尿道障害や膀胱損傷が併発し、排尿障害(尿失禁、排尿困難、血尿、頻尿、夜尿症など)が生じるケースもあります。
⑶前後圧迫骨折型(APC)について
(標準整形外科学第15版(医学書院)、817頁)、(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)716頁)
恥骨上枝骨折・恥骨下枝骨折の場合(恥骨上枝と恥骨下枝の位置については冒頭の図でご確認ください。)、尿道損傷などを合併する可能性があります。
また、前後方向から外力が加わり、骨盤輪の前方をつなぐ恥骨結合(繊維軟骨)が破綻して離開した状況を恥骨結合離開と言います。
恥骨結合離開は泌尿生殖器損傷や神経障害が合併しやすいといわれ、注意が必要です。
恥骨骨折で認定されうる後遺障害について

交通事故で恥骨骨折を負い、治療の結果症状が残存してしまった場合、自賠責保険に後遺障害等級の認定手続きを行うことができるときがあります。
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害のうち、認定される可能性がある等級は以下のものが予測されます。
恥骨骨折の程度や骨盤骨の他の部位の損傷の有無等にもよりますが、参考になれば幸いです。
→骨盤骨折で認定されうる後遺障害の区分等詳細はこちらの記事で整理しています。
⑴痛みやしびれ等の神経症状
骨折部位に痛みやしびれ等の神経症状が残存した場合、神経系統の障害の等級として12級13号または14級9号が認定される可能性があります。
①別表第二第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
恥骨骨折の後遺症について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると認められた場合には、別表第二第12級13号が認定されます。
具体的には、画像所見や神経学的所見等の客観的な医学的所見によって神経症状の残存を他覚的に立証できることが求められます。そのため、12級の認定を目指すにあっては、事故直後には医療機関でXPやCT、MRI等の画像を撮影してもらい、画像所見の存否をしっかりと確認しておくことが重要となります。
また、治療終盤や症状固定時にも画像を撮影し、やはり異常所見の存否について把握しておくことが望ましいでしょう。これに加えて、神経学的所見も重要となりますから、恥骨骨折により神経症状が生じていることを示すような神経学的所見を押さえておくとよいでしょう。
②別表第二第14級9号「局部に神経症状を残すもの」
恥骨骨折の後遺症について、「局部に神経症状を残すもの」と認められた場合には、別表第二第14級9号が認定されます。
具体的には、症状経過や治療状況などから将来的にも回復困難と認められる症状が残存していることが説明可能であると認められることが求められ、事故態様や症状経過、治療状況、客観的異常所見の有無及びその内容等を総合的に考慮して、後遺症の残存について相当程度説得的であることが重要となります。
⑵股関節の可動域制限
恥骨骨折によって股関節に可動域制限が残存した場合、股関節の機能障害の等級が認定される可能性があります。
可動域角度の制限の程度に応じて、第8級、第10級または第12級のいずれかが認定されることとなります。
具体的には、可動域制限が残存している側の股関節の可動域角度が、制限されていない側の股関節の可動域角度の10%以下にまで制限されているときには第8級7号が、2分の1以下に制限されているときには第10級11号が、4分の3以下に制限されているときは第12級7号が認定されます。
⑶体幹骨の変形障害
人間の体幹を支持する骨は大きく2種類に分けることができ、1つが脊柱(一般的に背骨と呼ばれる骨)であり、もう1つが鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨といった体幹骨になります。恥骨は骨盤骨の一部であることから、恥骨骨折により骨盤に変形が残存してしまい、裸体になったときに変形が明らかにわかるような後遺症が残ったときには、体幹骨の変形障害である第12級5号が認定されます。なお、レントゲン写真によって初めて変形が発見できるような程度の場合は等級認定はなされません。
⑷胸腹部臓器の障害
前述のとおり、両側恥坐骨骨折等の場合には、尿道障害や膀胱損傷、また生殖機能にかかわる神経などにも損傷が生じる可能性があるため、
排尿障害、蓄尿障害といった泌尿器の障害や、男性の場合には勃起障害や射精障害が合併するケースもあります。
排尿障害については障害の程度により第9級11号、第11級10号または第14級9号が、
蓄尿障害については第7級5号、第9級11号または第11級10号が、
勃起障害や射精障害については「生殖器に著しい障害を残すもの」として第9級17号がそれぞれ認定される可能性があります。
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本記事では、恥骨骨折について解説いたしました。
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