後遺障害等級の解説

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恥骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)

こちらの記事では、寛骨の一部位である恥骨の骨折について整理しています。

恥骨部位含む骨盤の骨折についてはこちらの記事で整理しています。

恥骨とは

骨盤を構成する骨に寛骨という骨があります。出生~小児期において、寛骨は腸骨、坐骨、恥骨にわかれていますが、成人期には骨癒合して寛骨として一つの骨になります。ですので、成人以降で「恥骨」という場合、寛骨の一部分を指す表現になります。↑のイラストだと青色部分です。

恥骨を含む寛骨は左右に2つあり、前方では恥骨結合、後方では仙骨とつながって骨盤輪を構成します。

なので、恥骨骨折<寛骨骨折<骨盤輪骨折と整理することが可能です。

恥骨骨折について

恥骨骨折含む骨盤輪骨折は交通事故や墜落などの高エネルギー外傷で生じます。

他方、骨粗鬆症を有する高齢者の低エネルギー外傷(主に転倒)により生じる脆弱性骨盤輪骨折もあります。

骨盤輪骨折はYoung-Burgess(ヤング-バージェス)分類により、側方圧迫型(LC)、前後圧迫型(APC)、垂直剪断型(VS)と大別されますが、どの類型でも恥骨部分の骨折が生じる可能性はあります(標準整形外科学第15版(医学書院)、817頁、図38-42)。

症状としては、骨折部位の疼痛等が発生する可能性があります。

両側恥坐骨骨折の場合、多くのケースで、尿道障害や膀胱損傷により排尿障害(尿失禁、排尿困難、血尿、頻尿、夜尿症など)が生じます。

前後圧迫骨折型(APC)について

(標準整形外科学第15版(医学書院)、817頁)(今日の整形外科治療指針第8版(医学書院)、716頁)

恥骨上下枝骨折の場合(恥骨上枝と恥骨下枝の位置については冒頭イラストでご確認ください。)、尿道損傷などを合併する可能性があります。

また、前後方向から外力が加わり、骨盤輪の前方をつなぐ恥骨結合(繊維軟骨)が破綻して離開した状況を恥骨結合離開と言います。泌尿生殖器損傷や神経障害が合併しやすいといわれ、注意が必要です。

認定されうる後遺障害について

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予測されます。

恥骨骨折の程度や骨盤骨の他の部位の損傷の有無等にもよりますが、参考になれば幸いです。

恥骨骨折で認定されうる後遺障害の区分等詳細はこちらの記事で整理しています。

骨折部位に痛み等が残存すれば神経症状(12級か14級)

股関節の運動制限に関連すれば機能障害(8級、10級、12級)

変形障害12級

排尿障害(膀胱機能障害と尿道狭さく)(9級、11級、14級)

畜尿障害(尿失禁と頻尿)(7級、9級、11級)

勃起障害(9級)

射精障害(9級)

弁護士に相談を

交通事故等で恥骨骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。