後遺障害等級一般論
後遺障害等級は誰が決めるのか?|後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

交通事故で怪我をした場合、相手方が自賠責保険に加入していた時は、自賠責保険に保険金請求を行うことができます。
請求できる保険金は3種類あり、傷害部分、後遺障害部分、そして死亡部分です。
後遺障害部分の保険金請求が行われると、後遺障害等級の認定調査が行われることになるのですが、ではその肝心の調査は誰がして、誰が後遺障害等級を決めているのでしょうか。
本稿では、後遺障害等級を誰が決めているのかについて解説いたしております。
後遺障害等級は誰が決めている?
⑴それはズバリ…!
早速問いに答えていきましょう。自賠責保険の請求について後遺障害等級認定を行っているのは、損害保険料率算出機構という組織になります。
損害保険料率算出機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき設立された非営利の民間法人であり、交通事故などにおける損害保険に関連するさまざまな業務を担っています。特に、自賠責保険において重要な役割を果たしており、後遺障害等級の認定や自賠責損害調査事務所の運営を通じて、公平な基準で事故の被害者に適切な補償が行われるよう支援しています。この機構が関与するのは、自動車事故における損害保険制度を円滑に運営し、被害者が確実に賠償を受け取れる仕組みを維持するためです。
⑵ではよく聞く「自賠責損害調査事務所」とはどう違うのか?
厳密に言うと、実際に損害調査や後遺障害等級認定を行っているのは、損害保険料率算出機構が運営する自賠責損害調査事務所になります。自賠責損害調査事務所は、後遺障害や後遺障害等級の認定に直結する調査業務を行う重要な機関です。交通事故の被害が適切に認定されるために、診断書や診療報酬明細書、XP・CT・MRI等の画像資料、後遺障害診断書などの書類を基に審査を行います。さらに、公平性を確保するため、保険会社や弁護士などの外部団体とは独立して運営されています。この独立した運営体制が多くの被害者にとって信頼性の高い認定を提供しています。
⑶それなら損害保険料率算出機構はどのような業務に関与しているのか
損害保険料率算出機構が関与する業務には、自賠責保険料率の算出、後遺障害等級の基準設定、そして自賠責損害調査事務所を通じた個別案件の認定調査があります。また、それ以外にも交通事故被害者の救済に関連する業務に従事しており、賠償金額や慰謝料の計算基準を策定しています。このように、損害保険料率算出機構は、事故の被害者が後遺症や後遺障害に対して適切な補償を得られる基盤を提供しているのです。
後遺障害等級とは?
交通事故などにより後遺症が残った場合、その後の生活へどのような影響があるかを明確にするために制定されているのが「後遺障害等級」です。これは、被害者の症状や能力の低下が、具体的に日常生活や仕事にどれだけ支障を生じさせるのかを評価し、適切な賠償金額を算出するための指標として活用されます。
⑴後遺障害等級の目的
後遺障害等級の目的は、交通事故などで被害を受けた方が公正かつ適切な補償を得ることです。特に自賠責保険では、後遺障害が認定される等級に応じて慰謝料や逸失利益などの賠償額が決まります。この仕組みによって、被害者が日常生活や仕事において失われたものを少しでも補填し、公平性を保とうとしています。
⑵14段階に分けられた等級
後遺障害等級は、後遺症の程度やそれが日々の生活や仕事に与える影響に応じて、1級から14級の14段階に分けられています。1級が最も重篤なケースを指し、介護を必要とする状態が該当します。一方、14級は比較的軽度な後遺症で、例えば手足の動きが少し悪くなったり、一部の感覚が鈍くなる程度の症状が該当します。このように、等級が上がるほど賠償額も高くなるため、正しい等級が認定されることが極めて重要です。
後遺障害等級の決定プロセス
⑴被害者請求と事前認定の違い
交通事故で後遺障害が残った場合、その等級を決定するための手続き方法には「被害者請求」と「事前認定」の2種類があります。被害者請求は、交通事故の被害者自身が必要書類を損害保険料率算出機構に直接提出して後遺障害認定を依頼する方法です。この方法では被害者が主導権を持つため、手続きの透明性が確保されやすい点が特徴です。一方、事前認定は加害者が加入する自賠責保険会社を通じて認定手続きを行う方法です。この場合、保険会社が書類のやり取りを代理で行うため、手続きが簡便である反面、被害者が手続きの詳細を把握しにくい点があります。まとめると以下のとおりです。
・被害者請求
メリット…資料を被害者側が集めて提出するため、手続の透明性が確保される
デメリット…資料を集めるのに手間がかかり大変
・事前認定
メリット…保険会社が資料を集めて提出するため、被害者側に資料収集等の手間がない
デメリット…どのような資料が自賠責に提出されているか不透明(過不足なく資料を提出しているか等が分からない)
⑵被害者請求で提出する書類は?
後遺障害等級の認定を申請する際には、提出すべき書類が多いため正確な準備が重要です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書
・自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書
・診断書や診療報酬明細書などの医証
・病院で撮影された画像(XP、CT、MRIなど)
これらの書類は後遺障害が交通事故によるものであることを証明し、症状の程度を正確に示す役割を果たします。不足があると認定結果に影響を与える可能性があるため、事前に弁護士など専門家にチェックしてもらうことが推奨されます。
⑶審査における医師の役割
認定プロセスにおいて、医師の役割は非常に重要です。医師は後遺障害診断書を作成し、被害者の症状について詳細に記載します。この診断書は、損害保険料率算出機構が後遺障害等級を決定する際の基礎資料となります。診断書には、症状固定の時期や、後遺症が日常生活や就労にどのような影響を及ぼしているのかが具体的かつ客観的に記載される必要があります。医師が正確で詳細な情報を記載することで、より適切な認定につながります。
⑷公平性を確保する仕組み
後遺障害等級の決定において公平性を保つため、損害保険料率算出機構は書面による厳格な審査を行っています。提出された診断書や検査結果に基づき、交通事故による影響の有無や等級の適正性を判断します。また、審査は書面主義で行われるため、申請内容が客観的な基準に基づいて評価されます。さらに、異議申立の制度があることで、被害者が納得できるまで認定内容を再確認する仕組みが整っています。公平な認定を受けるためには、適切な書類準備と正確な情報提供が不可欠です。
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