後遺障害等級の解説

脊髄損傷 骨折 圧迫骨折・体幹骨骨折

即死レベルの頸椎骨折(頚椎骨折)|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

人間の背中には、中枢神経である脊髄を守るようなかたちで脊椎という骨(俗に背骨と呼ばれる骨)が連なっています。

その中でも首の位置に存在する頸椎を骨折すると、最悪の場合死に至る恐れもあります

本稿では、生命の危険が高いもしくは即死レベルの頸椎骨折について解説いたします。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事のご監修をいただいております。

また、「」と「」の漢字表記について、日本医学会は印刷標準字体である「」の使用を推奨する旨の方針を近年示していることから、本記事においてもこの日本医学会が示す方針に則り、「」をメインで用いるものとします。この漢字表記や日本医学会における漢字表記の変遷については、以下のページにて取り上げておりますので、よろしければご覧ください。

髄損傷」と「髄損傷」。漢字が違うが意味も異なるのか?

頸椎骨折(頚椎骨折)とは

⑴頸椎の構造とその重要性

頸椎は、頭と胴体をつなぐ役割を持つ背骨の一部を指しており、人体において非常に重要な構造をしています。頸椎は7つの椎骨(C1~C7)で構成され、それぞれが柔軟性と強度を兼ね備えた構造となっています。この構造は、頸部の可動性を確保しながらも、中を通る脊髄を保護する役割を果たしています。

脊髄は、中枢神経系の一部であり、脳と体全体を結ぶ重要な伝達路です。脊髄が損傷を受けると、運動や感覚の麻痺を引き起こす可能性が高く、場合によっては生命に関わる症状が現れます。このため、頸椎の構造とその保護機能は、事故や衝撃から身を守る上で非常に重要となります。

⑵頸椎骨折の定義と分類

頸椎骨折とは、頸椎の椎骨が何らかの衝撃や圧力によって壊れる、またはひびが入る状態を指します。代表的なものとしては、環椎(C1)や軸椎(C2)の骨折が挙げられますが、それ以外の部位でも発生する可能性があります。頸椎骨折は、その発生部位や形態によって分類されます。例えば、椎体骨折や圧迫骨折のように骨がつぶれるように骨折するタイプもあれば、脱臼を伴う骨折もあります。これらの分類は、症状や治療法を決定する上で重要な要素です。また、頸椎骨折によって脊髄損傷を伴う場合、更なる注意が必要となります。

⑶関連する脊髄損傷とその影響

頸椎骨折に伴い脊髄が損傷を受けると、さまざまな症状が現れます。症状は損傷部位や損傷の程度によって多彩に異なり、特に損傷箇所が頭部に近いほど深刻な症状が現れやすい傾向にあります。特に第1頸髄(C1)第2頸髄(C2)を損傷すると、自発呼吸が困難になるなど呼吸機能に甚大な影響が生じるため生命への危険が非常に高く、場合によっては即死に近い状態に至る恐れもあります。

第3頸髄(C3)を損傷した場合にも自発呼吸が著しく困難になるケースが見られます。理由としては、呼吸の主力筋である横隔膜の運動を司る横隔膜神経の起点が第3頸髄~第5頸髄に存在するため、第3頸髄の損傷によって横隔膜の運動に支障が生じる恐れがあるからです。中には、人工呼吸器が必要となるケースもしばしばみられます。

⑷頸椎骨折が即死につながる理由

頸椎骨折が即死につながる主な理由は、頸椎内を通る脊髄へのダメージです。特に第1頸髄や第2頸髄の損傷は致死性が高く、脳から脊髄へ続く重要な神経の伝達が遮断されるため、生命維持に必要な機能が停止してしまいます。また、これらの箇所での損傷により呼吸や心拍をコントロールする中枢である延髄が影響を受けると、急激な呼吸停止や心停止が引き起こされる可能性があります。さらに、衝撃や外傷の際に生じる直接的な脊髄損傷だけでなく、脳や脊髄等の中枢神経に栄養を送っている血管が破裂したり、あるいは内出血を起こして脊髄の周囲に血腫が生じることで即死に繋がる場合もあります。このように、頸椎は、中枢神経の中でもとりわけ生命維持において非常に重要な部位を保護するものであることから、頸椎を骨折した場合に伴うリスクは決して軽視してはいけません。

⑸部位別の骨折リスクの違い

頸椎骨折のリスクは、その部位によって大きく異なります。特に第1頸椎(環椎)や第2頸椎(軸椎)の骨折は致命的な結果をもたらす可能性が高い部位です。環椎骨折・軸椎骨折では、頸椎の安定性が失われ脊髄の圧迫や損傷が起こりやすくなり、即死に至る危険があります。

一方、C3以下の骨折では、脊髄への影響が部分的になることが多く、即死に至るリスクは低いですが、依然として重度の運動神経麻痺や感覚神経麻痺等を引き起こす危険性があります。このように、各部位の特徴や複雑な関係性を理解することは、リスクの正確な評価と対策に役立ちます。

脊髄損傷の損傷高位(レベル)と症状の関係についてはこちらで解説

頸椎骨折の症状と診断方法

⑴一般的な症状と異常のサイン

頸椎骨折の症状は損傷した部位や程度によって異なりますが、主な症状としては、首の激しい痛み、首を動かす際の違和感や制限、しびれや麻痺などが挙げられます。骨折の程度が重篤である場合には脊髄損傷を伴うことがあり、その結果、全身麻痺や呼吸困難を引き起こすことがあります。また、脊椎の不安定性が進むと、遅れて症状が現れることも考えられます。異常が疑われる場合には、速やかに病院で検査を受けることが必要です。

⑵画像診断の精度とその限界

頸椎骨折の診断には、X線検査やCTスキャン、MRIなどの画像診断が広く用いられています。これらの方法は、骨折箇所や損傷の詳細を高精度で確認することができ、特に椎体骨折や圧迫骨折の診断に有効です。しかし、画像診断には限界もあり、微細な骨の変形や脊髄そのものの損傷を完全に把握することは難しい場合があります。これらを補完するため、医師による臨床所見等に基づく詳細な評価が必要となります。

⑶医師による詳細な評価方法

頸椎骨折が疑われる場合、医師はまず患者の症状や外傷の原因について詳しく問診を行い、その後、画像診断結果をもとに判断を下します。神経学的な視点からは、脊髄損傷の有無を確認するために筋力や感覚のチェックが欠かせません。また、診断が難しいケースでは、専門的な知見を持つ脊椎外科医による評価が行われることもあります。適切な評価と診断が行われれば、治療方針の決定がよりスムーズに進むでしょう。

おわりに

本稿では、即死レベルの頸椎骨折について解説いたしました。

頸椎の中でも頭部に最も近い位置にある環椎(C1)や軸椎(C2)を骨折すると、重篤な症状が現れる可能性があり、

脊髄損傷を伴う場合には、最悪、死に至る恐れもあります。

一命を取り留めた場合にも、呼吸機能に著しい障害が残ったり、全身の運動麻痺や感覚麻痺などの後遺症が残存することもあります。

 

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。