交通事故コラム

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「頚髄損傷」と「頸髄損傷」。漢字が違うが意味も異なるのか?

2024.01.19

交通事故による損害賠償請求の仕事をしていると、診断書やカルテといった医療情報に触れる機会が非常に多くあります。

これらの医証を読む時に、「頚髄損傷」と記載されている病院もありますし、また医師の先生によっては「頸髄損傷」と記載されていらっしゃることもあります。

また、インターネットを使用して医学文献の調査を行う時にも、やはり「頚髄損傷」と「頸髄損傷」のいずれの記載も見られます。

「頚」と「頸」は、漢字のもつ意味としてはいずれも「首」を意味する漢字であり、字体が異なるだけ(「頚」が「頸」の略字体)で意味するところは同一であるといえます。

ですが、もしかすると、医学分野においては特殊なルールのもと使い分けがなされている可能性も否めません。

こうした疑問を晴らすべく、「頚」と「頸」に医学分野における取扱いを調査をしてみました。

すると、2007年に日本医学会医学用語管理委員会が作成した「医学用語の標準化をめざして―『日本医学会医学用語辞典(英和)』第 3 版の編集方針―」(日本医師会雑誌第136巻第1号 139頁~148頁)の中に、今回のような表記ゆれに関する記載がありました。

同文献によれば、そもそも表記ゆれは必ずしも一定しないものであったところ、複数の表記法が無秩序に存在する状態は好ましくないとして、医学界の中で「標準」が自然に定まるような動きをとっていく方針を示しています。これと合わせて標準的表記法が示されており、漢字の略字体があるために表記ゆれが存在する場合、まさに今回のような「頚」と「頸」が使用されているような場合については、略字体があるときはそちらを使用していく方針が示されています。

すなわち、「頚」と「頸」でいえば、前者である「頚」を使用することを日本医学会は推進しているといえるでしょう。

 

以上を踏まえると、「頚」と「頸」の違いについて、漢字の持つ意味という側面においても、医学分野における使用方法という側面においても特段の差異があるものではなく、どちらの漢字も指すものは同じである、という結論になるかと思います。そのため、「頚髄損傷」も「頸髄損傷」も、同一の意味を持つ用語と考えて差し支えないものだと考えられます。

なお、頚髄損傷(頸髄損傷)については、こちらで症状や後遺症、後遺障害、損害賠償請求について解説しております。

脊髄損傷|頚髄損傷(頸髄損傷)で現れる症状は?損害賠償請求は?【弁護士解説】

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。