後遺障害等級の解説

失明の原因|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、失明の原因と交通事故の後遺障害等級について解説いたしております。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしてもらっています。

交通事故による視力低下のメカニズム

⑴直接的な外傷と視力への影響

交通事故で目に外傷を負うと、視力が低下するリスクがあります。例えば、顔や目に衝撃が加わることで眼球そのものが損傷を受けたり、あるいは視神経が損傷したり、眼窩周辺の骨折が発生することがあります。このような怪我が原因で、視力や調節機能に支障をきたす場合があります。

特に、眼球に衝撃を受けると網膜剥離、水晶体の損傷、または視神経の圧迫などが起こり、最悪の場合失明に至ることもあります。初期段階では痛みや腫れを伴い、見えにくさなどの症状が現れるため、事故後はなるべく早めに医師に相談することが非常に重要です。

⑵視神経への損傷と視力低下の関係

視神経は目で捉えた情報を脳に伝える重要な役割を担っています。交通事故のような激しい衝撃により視神経が損傷した場合、視力低下を引き起こします。例えば、視神経管骨折や強い頭部外傷によって視神経が圧迫されると、視野狭窄や複視といった障害が現れる可能性があります。

また視神経の損傷によっては、緑内障を発症するリスクもあります。視神経は再生能力が低いため、遭遇した損傷に対する治療が遅れると、後遺症として視力低下が不可逆的になることもあるため注意が必要です。

⑶交通事故後の初期症状と対応

交通事故後、視覚障害が現れる場合の初期症状としては、視界のぼやけ物が二重に見える(複視)視野狭窄などが挙げられます。場合によっては、目の周りの腫れや青あざ、眼痛、白目の出血(結膜下出血)など、外傷による目に見える変化も伴います。

これらの症状に気付いた場合、早急に眼科もしくは整形外科を受診することが大切です。病院では、スリット検査や網膜電図、視覚誘発電位検査(VEP)などを用いて視力低下の原因や範囲を確認します。特に交通事故に伴う視覚障害では、原因を特定し因果関係を証明することが、後遺障害認定や補償請求を進めるうえで非常に重要です

交通事故と緑内障

⑴高眼圧が引き起こす視神経障害

交通事故による衝撃や怪我が目の内部に影響を与えることで、高眼圧が発生する場合があります。この高眼圧は、眼球内部の圧力が異常に高くなることで、視神経に過剰な負担をかけ、長期的には視力低下や失明の原因になる可能性があります。特に、事故後に目に痛みや視力のぼやけを感じた場合、早期に適切な治療を受けることが重要です。高眼圧が続くと視神経の不可逆的な損傷を引き起こす可能性があります。

⑵外傷性緑内障とは?症状と診断

外傷性緑内障は、交通事故の際に目やその周辺部に外傷が生じた場合に発症することがある特定の緑内障です。このタイプの緑内障では、外傷による物理的な衝撃や血流障害、内部の組織の損傷が原因で、眼内の液体(房水)の排出が妨げられ、高眼圧を引き起こします。外傷性緑内障の初期症状としては、目の痛み赤み視界がぼやける視野が狭くなるといったことが挙げられます。このような症状が現れた場合、眼底検査や視神経の状態を確認する精密検査が必要です。治療としては、薬物療法や場合によっては手術が行われることもあります。

⑶緑内障発症のリスク要因と防止策

交通事故がきっかけで緑内障を発症するリスクは、外傷の程度やその後の治療の状況によって大きく左右されます。視神経が直接損傷を受けた場合や、目の内部で炎症が起きた場合、そのリスクが高まります。また、事故後すぐには症状が出現しないこともあり、時間をかけて症状が進行することもあります。そのため、事故後は定期的な眼科の検査を受け、何らかの異常がないか確認することが不可欠です。さらに、外傷性緑内障の予防策として、事故後早期に目の状態を確認し、必要に応じて適切な治療や対策を講じることが挙げられます。眼の健康を守るためにも、後遺症を軽視せず、専門医と連携してケアを続けることが大切です。

失明の証明方法とは?

交通事故外傷によって失明を負った場合に、適切な補償を受けたり、後遺障害等級を獲得するためには、失明が生じていることを客観的に立証し、交通事故外傷と失明の発症との相当因果関係を示す必要があります。ですが、当然ながら視覚は他者と共有することはできませんし、醜状痕などのように外見から後遺症の残存を確認することも至難です。では、どのようにして失明を客観的に証明していくのでしょうか。

ここで考えられるのは、視力障害に関する検査を受けることです。以下のような検査で、眼球や視神経の客観的所見を得ることができます。

⑴細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)

双眼型の顕微鏡を用いて、眼球に光を照らして拡大し、結膜や角膜、前房水、虹彩、瞳孔、水晶体、網膜の状態などを直接観察します。眼の検査の中でも特に重要な検査とされています。

⑵直像鏡眼底検査

眼底部を直像鏡を用いて直接観察する検査方法です。網膜や網膜血管、視神経乳頭など眼底にある組織の状態を確認することができます。

⑶網膜電位図検査(ERG検査)

被検者が暗室で点眼麻酔を受けたうえで特殊なコンタクトレンズを装着し、その後眼球内に光を照射して網膜と角膜の間にある電位の変化を記録・分析します。この検査で、網膜機能の状態を把握することができます

⑷視覚誘発電位検査(VEP検査)

網膜から後頭葉に至る視覚伝導路に異常があるかどうかを検査します。通常、視神経損傷により視力障害が生じていると考えられる場合に行われます。

失明の後遺障害等級

交通事故外傷を原因として失明を発症し、後遺症として残ってしまった場合、自賠責に後遺障害等級認定の請求を行うことができるときがあります。

失明による症状で認定される可能性がある後遺障害等級は、次のとおりです。なお、⑵~⑸の等級は、片目の失明に加えて他眼の視力低下もまた認定要件となります。

⑴第1級1号 視力障害(両眼の失明)

両眼が失明したもの」に該当する場合に認定されます。

なお、「失明」の定義について、自賠責の後遺障害等級認定基準において「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)又は手動弁も含まれます。光覚弁は、暗室で被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいい、手動弁は検者の手のひらを被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。つまり、完全に失明した状態だけでなく、明暗を認識できる程度や手の動きを認識できる程度の極めて低い視力のケースも、自賠責では「失明」として扱われるということです。

⑵第2級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合に認定されます。すなわち、事故によって片目を失明したことに加え、もう片方の目の視力が失明までは行かないものの0.02以下という著しく低い視力にまで低下した場合に認定されることとなります。

なお、ここでいう「視力」とは矯正視力をいい、測定方法については原則として万国式試視力表(ランドルト環を用いたもの)によるものとされています。矯正視力には、眼鏡による矯正医学的に装用可能なコンタクトレンズによる矯正または眼内レンズによる矯正により得られた視力も含まれます。なお、矯正不能な場合には例外的に裸眼視力によって等級判断がなされます。

⑶第3級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑷第5級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑸第7級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑹第8級1号 視力障害(一眼の失明)

1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

眼の後遺症が片目の失明のみであったり、片目の失明に加えて他眼にも視力低下があるものの、その視力が0.6より大きい場合にはこの等級が認定されます。

おわりに

本稿では、交通事故による失明と後遺障害等級について解説いたしました。

弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております

交通事故により失明や視力障害を負ってしまった方やお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。

後遺症被害者専門弁護士への無料相談はこちらのページから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。