後遺障害等級の解説

交通事故と失明|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、交通事故による失明と後遺障害等級について解説いたしております。

なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしていただいています。

交通事故で失明は生じるのか?

眼は感覚器官の一つであり、視覚の役割を受け持つ主部(眼球、視神経)と、眼球の運動や保護を役割とする副眼器(眼瞼、結膜、眼筋など)からなっています。

交通事故での失明の原因としては、主に、外傷による眼球損傷や視神経損傷が挙げられます。交通事故の衝撃により直接眼球を損傷すると、外光を正常に視神経で感受できなくなることがあります。また、眼球の直接的な損傷がない場合でも、視神経を損傷してしまうと脳との信号の伝達に支障が生じ、視覚として認知できなくなります。これらのほか、交通事故外傷を起因として発症した外傷性白内障外傷性緑内障によっても失明や視力低下が引き起こされることがあります。

失明を客観的に証明する方法とは?

交通事故によって失明を負った場合に、後遺障害等級を獲得したり、適切な賠償を受けるためには、失明の発症を客観的に立証し、交通事故による外傷と失明の発症との相当因果関係を示す必要があります。ですが、ご存知のとおり、視覚というのは他者と共有することはできません。また醜状痕や可動域制限の後遺症のように、一見して失明が残存していることを確認することも極めて難しいです。

では、どのようにして失明を客観的に証明していくことになるか。答えとしましては、視力障害に関する検査を受けることが重要となります。次に示すような検査を受けることで、眼球や視神経に関する客観的所見を得ることができるでしょう。

⑴細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)

双眼型の顕微鏡を用いて、眼球に光を照らして拡大し、結膜や角膜、前房水、虹彩、瞳孔、水晶体、網膜の状態などを直接観察します。眼の検査の中でも特に重要な検査とされています。

⑵直像鏡眼底検査

被検者の眼底部を、直像鏡を用いて直接観察する検査方法です。網膜や網膜血管、視神経乳頭など眼底にある組織の状態を確認することができます。

⑶網膜電位図検査(ERG検査)

被検者が暗室で点眼麻酔をしたうえで特殊なコンタクトレンズを装着して眼球内に光を照射し、網膜と角膜の間にある電位の変化を記録・分析する検査です。これにより、網膜機能の状態を把握することができます。

⑷視覚誘発電位検査(VEP検査)

網膜から後頭葉に至る視覚伝導路に異常があるかどうかを検査します。通常、視神経損傷により視力障害が生じていると考えられる場合に行われます。

失明の後遺障害等級

交通事故による外傷を原因として失明が生じ、後遺症として残ってしまった場合、自賠責に、後遺障害等級認定の請求を行うことができることがあります。

自賠責の後遺障害等級基準において、失明は視力障害として取り扱われています。失明で認定される可能性がある等級は以下のとおりとなります。なお、⑵~⑸の等級については、片目の失明に加えて他眼の視力低下もまた認定要件の一つとなっています。

⑴第1級1号 視力障害(両眼の失明)

両眼が失明したもの」に該当する場合に認定されます。

なお、「失明」の定義について留意しておく必要があります。一般的に失明と聞くと、全く視覚がない状態を想起する方が多いかと思いますが、自賠責の後遺障害等級認定基準における「失明」とは、眼球を亡失(摘出)したもの明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい、光覚弁(明暗弁)又は手動弁も含まれるものとなります。光覚弁は、暗室で被験者の眼前で照明を点滅させ、明暗が弁別できる視力をいい、手動弁は検者の手のひらを被験者の眼前で上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力をいいます。つまり、一般的に想起されるような完全に失明した状態だけでなく、目に光が入ったとしても明暗を認識できる程度や手の動きを認識できる程度の極めて低い視力のケースも、自賠責では「失明」として扱われるということとなります。

⑵第2級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合に認定されます。すなわち、事故によって片目を失明したことに加え、もう片方の目の視力が失明までは行かないものの0.02以下という著しく低い視力にまで低下した場合に認定されることとなります。

なお、ここでいう「視力」とは矯正視力をいい、測定方法については原則として万国式試視力表(ランドルト環を用いたもの)によるものとされています。矯正視力には、眼鏡による矯正医学的に装用可能なコンタクトレンズによる矯正または眼内レンズによる矯正により得られた視力も含まれます。なお、矯正不能な場合には例外的に裸眼視力によって等級判断がなされます。

⑶第3級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑷第5級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑸第7級1号 視力障害(一眼の失明&他眼の視力低下)

一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

⑹第8級1号 視力障害(一眼の失明)

1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの」に該当する場合に認定されます。

眼の後遺症が片目の失明のみであったり、片目の失明に加えて他眼にも視力低下があるものの、その視力が0.6より大きい場合にはこの等級が認定されます。

おわりに

本稿では、交通事故と失明の関係、そして視力障害の後遺障害等級について解説いたしました。

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交通事故により失明や視力障害を負ってしまった方やお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。

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この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。