眼
交通事故と複視|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、交通事故と複視について解説しております。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしていただいています。
複視とは?
⑴複視が起こるメカニズム

複視は、物が二重に見える状態のことをいいます。
では、なぜ物が二重に見えてしまうのでしょうか。端的に言えば、眼球の運動に何らかの障害があるためです。
眼球やその周辺は、上図のような構造になっていますが、眼球の運動は、外眼筋と総称される6つの筋肉(具体的には上直筋・下直筋・内直筋・外直筋と上斜筋・下斜筋)が担っています。そして、動眼神経・滑車神経・外転神経という3つの脳神経が協調して外眼筋を制御し、眼球運動を司っています。更に、左右の眼球は脳幹の神経細胞と神経路によって共同運動が行われています。
複視は、この外眼筋や3つの脳神経、又は脳幹が障害されることにより発生する症状となります。
複視には、単眼性複視と両眼性複視の二種類があります。単眼性複視は片目で生じるもので、角膜や水晶体の異常が主な原因となり、もう一方の目を閉じても複視は解消されません。一方、両眼性複視は両目を合わせて使うときに物が二重に見えるもので、眼球を動かす神経や筋肉の異常が関係しています。この場合、片目を閉じると症状がなくなります。
⑵交通事故が複視を引き起こす原因
交通事故外傷によって外眼筋や脳神経が損傷されると、複視の症状が現れることがあります。例えば、動眼神経や滑車神経、外転神経が損傷されることで、眼筋の動きが不調となり、目の向きのズレが生じます。また、頭部外傷により脳に損傷が及ぶと、視覚を調整する機能に異常が現れることとなります。また、交通事故の衝撃により眼窩底骨折が発生すると、眼球を支える骨や周囲の組織が損傷を受け、複視が生じる可能性があります。眼窩吹き抜け骨折と呼ばれる状態では、眼筋が骨折部分に挟まり、目の動きが制限されることが原因で視野に異常が起こります。
⑶複視の検査
交通事故後に複視が疑われる場合、診断には専門的な検査が欠かせません。代表的な方法として、ヘススクリーンテストが挙げられます。ヘススクリーンテストは、赤緑ガラスで物を見た時の片眼の赤像と他眼の緑像から両眼の位置ずれを評価する検査であり、外眼筋の運動制限や複視を確認し評価することができます。後述しますが、この検査結果は、複視の残存を客観的に示す他覚的所見として、後遺障害等級の認定においても重要なデータとなります。
⑷眼科医と神経診断の役割
複視の診断において、眼科医と神経分野の専門医の協力は非常に重要です。交通事故による外傷では、眼球や眼窩だけでなく、神経系にまで損傷が及ぶ場合があります。このため、眼科医は眼窩骨折や眼筋の状態を確認する一方で、神経診断によって、動眼神経や滑車神経、外転神経といった脳神経への影響を評価する必要があります。両者の連携によって、複視の原因となった損傷部位を正確に特定し、適切な治療方針を立てていくことができます。また、MRIやXP、CT画像を撮影することで、骨折や神経損傷などの所見の有無を確認することも重要となるでしょう。
複視と後遺障害等級
交通事故外傷により複視を発症し、複視が後遺症として残存してしまった場合、自賠責に後遺障害等級の認定申請を行うことができるときがあります。
複視で認定される可能性がある等級は運動障害になります。詳しくは以下のとおりです。
⑴第10級2号 正面視の複視
「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
ここでいう「複視を残すもの」とは、次のa~cのすべてを満たすものをいいます。
a 本人が複視のあることを自覚していること
b 眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること
c ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること
これらを満たした上で、ヘススクリーンテストにより正面視で複視が中心の位置にあることが確認されれば正面視の複視として等級認定がなされます。このように、ヘススクリーンテストは複視の後遺障害等級認定において不可欠な要素となるため、治療期間中や症状固定診断時に忘れず検査を受けておきましょう。
⑵第13級2号 正面視以外の複視
「正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
⑴に述べたa~cの要件を満たした上で、正面視の複視には該当しないものについては正面視以外の複視として等級認定がなされます。
⑶複視の後遺障害の注意点
複視が残存している場合、頭痛などの神経症状も残るケースがしばしばみられます。一見、こうした神経症状について、複視とは別途に神経症状の等級が認定されるのでは?と考えられますが、等級認定の実務においては、これらの神経症状は複視によって派生的に生じるものであり、複視と別途に独立して評価する必要はないとして判断されることがあります。
また、前述したとおり複視には単眼性複視と両眼性複視がありますが、単眼性複視は水晶体亜脱臼や眼内レンズ偏移等によって生じるものであり、眼筋や脳神経の障害を原因とする眼球の運動障害によって生じるものではないため、運動障害ではなく視力障害として評価されることとなります。
更に、等級の併合との関係ですが、眼球の運動障害と視力障害が併存する場合には、原則として併合の方法を用いて相当等級が定められることとなります。
例:両眼の視力障害第9級1号、眼球の運動障害(正面視以外の複視)第13級2号、肩関節の機能障害12級6号が残存した場合
視力障害第9級+運動障害第13級+肩の機能障害第12級→併合8級(13級以上が2つ以上のため最も高い等級につき1つ繰り上げ)と判断するのは誤りで、
視力障害第9級+運動障害第13級→併合の方法を用いて8級相当として眼の等級を確定し、8級相当+肩の機能障害第12級→併合7級(最終等級)となります。
おわりに

本稿では、交通事故と複視の関係、そして複視の後遺症と自賠責の後遺障害等級について解説いたしました。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております。
交通事故により怪我を負い、複視を残してしまった方やお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
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