醜状障害
顔の傷|医師監修記事・後遺障害専門の弁護士法人小杉法律事務所

本稿では、交通事故で負った顔の傷と損害賠償請求の関係について解説しております。
なお、本記事は損害賠償請求を専門に取り扱う弁護士小杉による執筆記事となりますが、医学的事項を含むため、医学博士早稲田医師(日本精神神経学会専門医・指導医、日本臨床神経生理学会専門医、日本医師会認定産業医)に記事監修をしていただいています。
顔の傷の治療
交通事故によって顔に傷痕が残る場合、その種類によって特徴や治療法が異なります。代表的なものとしては、肥厚性瘢痕や線状痕のほか、組織欠損、組織陥没が挙げられます。肥厚性瘢痕は、みみず腫れのようなぷっくりと盛り上がった形状が特徴の傷痕です。線状痕は切り傷や擦り傷などが原因で、細長い痕として残るものです。一方、組織欠損は皮膚や筋肉が失われたことで生じ、外観的な変化が大きいのが特徴であり、また組織陥没は、事故による強い衝撃が原因で皮膚がへこんだ状態になります。これらの傷痕が残らないようにするためには、早期からの適切な治療が重要です。
⑴初期治療の重要性
交通事故による傷痕は、早期の治療を行うことで、その程度を大きく軽減できる場合があるため、事故直後は適切な応急処置が非常に重要です。特に顔という外見に関わる部位の傷痕は、身体的な問題だけでなく心理的な影響も与えるため、美容面を含めた早期の対策が肝要となります。
事故後、まずは傷口の清潔を保ち、感染を防ぐことが治療の第一歩となります。また、出血が多い場合には止血を行った後、速やかに医療機関を受診し、専門医による治療を受けることが推奨されます。
⑵治療計画
顔の傷痕の治療について、専門科は形成外科や美容外科になります。専門医師と相談し、症状や怪我の程度に応じて早い時期に治療計画を立てることが重要です。
治療計画には、具体的な方法やスケジュールの他に、治療後の経過観察や次の治療ステップについても含めておきましょう。交通事故治療では、医師との連携の中で最適な治療方法を選ぶことが、傷跡を最小限に抑える鍵となります。
⑶傷痕の治療手段
交通事故による傷跡治療では、選択する治療法が結果に大きく影響します。形成外科治療、レーザー治療、皮膚移植など様々な選択肢がありますが、それぞれの方法にはメリットとリスクが伴います。そのため、治療法を選択する際には医師と十分に相談し、適切な方法を選ぶことが大切です。
①傷痕修正手術
交通事故による傷跡が残る場合、傷痕修正手術は効果的な治療方法の一つです。主な手術方法には瘢痕切除術と皮膚移植があります。瘢痕切除術では傷痕の部分を切り取り、縫合することで目立たなくします。一方、皮膚移植では体の他の部位から正常な皮膚を採取し、傷痕の部分に移植します。これらの手術は、特に大きな傷痕や目立つ部分の治療に用いられます。それぞれの手術法にはリスクや回復期間が異なるため、形成外科医と事前によく相談をすることが重要です。
②皮膚再生治療とレーザー治療
皮膚再生治療やレーザー治療は、傷跡を目立たなくする非侵襲的な方法として選ばれることが多い治療法です。皮膚再生治療では皮膚組織の修復を促進する薬剤や細胞注入を行います。一方、フラクショナルレーザーやプラズマ治療器などを使用するレーザー治療は、傷痕の表面を滑らかにしたり赤みを軽減することが可能です。これらは、事故による浅い傷痕等に対して特に効果的とされています。交通事故治療の一環としてこれらの技術を選択する場合、複数回の治療が必要になることや保険適用の可否を事前に確認しておくことが大切です。
③ケロイド対応の最新技術
交通事故による傷跡の中でも、ケロイドや肥厚性瘢痕は治療が難しいとされています。これらは損傷部位の皮膚が過剰に盛り上がり、痛みやかゆみを伴うことがあります。最新の技術としては、ステロイド注射、局所的な圧迫療法、または放射線療法が有効です。さらに、美容整形や形成外科では、局所出血を抑える手術技術やレーザーを併用することで、ケロイドの再発を予防することも可能です。事故後の傷痕がどのように進行するかは個人差がありますので、医師と症状にあったオーダーメイドの治療プランを立てることが重要となりますが、相手方保険会社が一括対応を行っている場合や、人身傷害保険から治療費対応がなされている等の場合には、こうした治療の費用については対応が難しいと判断される可能性もありますので、対応してもらえるかどうかあらかじめ確認しておきましょう。また、美容目的の治療については保険適用外になるケースも散見されますので、自費で対応することとなった場合にも、保険適用ができるのかどうかを確認しておきましょう。
④術後の経過観察とケアの重要性
傷痕治療において、術後の経過観察と日常的なケアは非常に重要な要素です。手術後の患部には炎症や感染のリスクが伴うため、医師の指導に基づいて適切な消毒や保湿を行う必要があります。また、紫外線が傷痕を悪化させる可能性があるため、日焼け対策も重要です。さらに、定期的な診察を受けて治癒の状況を確認しながら、必要に応じて追加治療を行うことも検討されます。交通事故に起因する傷痕をより目立たなくするためには、治療だけでなく、日々の細やかなケアの積み重ねが結果を大きく左右するといえます。
自賠責保険における外貌の醜状障害の後遺障害等級
自賠責は、自動車損害賠償保障法施行令において、自賠責保険の補償対象となる後遺症について定めています。
この自賠責保険の補償対象となる後遺症のことを後遺障害と呼びますが、交通事故で瘢痕や線状痕等が残存してしまった場合には醜状障害という後遺障害が認定される可能性があります。そのため、自賠責保険で醜状障害と認定されれば、等級に応じた保険金を受け取ることができます。
以下では、顔に傷痕を残した場合の後遺障害等級についてみていきましょう。
⑴外貌醜状の等級
「外貌」とは、頭部・顔面部・頚部といった日常露出している部分をいいます。この中で、顔面部はいわゆる顔の部分を指しており、下顎の骨の稜線と髪の毛の生え際で囲まれた部分をいいます。なお、顎の下の部分は顔面部には含まれません。
外貌醜状について、自賠責に定められている等級は、第7級12号、第9級16号、第12級14号の3つになります。
①別表第二第7級12号
「外貌に著しい醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
顔面部については、鶏卵大面以上の瘢痕、又は10円銅貨大以上の組織陥没が残った場合に該当します。
②別表第二第9級16号
「外貌に相当程度の醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
ここでいう外貌の相当程度の醜状とは、顔面部に5㎝以上の線状痕が残った場合が該当します。
なお、平成23年5月1日までに発生した事故で、醜状を残した者が女子の場合には、別表第二第7級12号に該当するものとして取り扱われます。
③別表第二第12級14号
「外貌に醜状を残すもの」に該当する場合に認定されます。
顔面部の場合、10円硬貨大以上の瘢痕又は3㎝以上の線状痕が残った場合に該当します。
⑵等級認定に関する留意点
①等級認定の対象となる傷痕
等級認定の対象となる傷痕は、交通事故によって負った瘢痕や線状痕はもちろんのこと、手術を行ったことによって残存した手術痕や、採皮痕も含まれます。そのため、たとえば交通事故による傷痕の治療で手術を行ったことで顔に手術痕が残ったようなケースでは、手術痕の大きさや形によっては等級認定がなされる可能性があります。
②相隣接する傷痕について
2個以上の瘢痕又は線状痕が相隣接し、又は相まって1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級が認定されます。ここでいう「相隣接」は、複数の醜状間の距離がおおむね1㎝以下であることとされています。つまり、1つ1つの瘢痕の大きさでは認定基準の大きさに届かなくても、それらが1㎝以下の距離で近接していれば、大きさを合算して等級認定判断がなされるため、等級認定される可能性が出てきます。
③傷痕が隠れる場合の取り扱い
等級認定上、外貌醜状は、人目につく程度以上のものであることが求められるため、瘢痕や線状痕及び組織陥没が眉毛や頭髪等に隠れ、人目につかない部分については、醜状として取り扱われません。
④顔面神経麻痺による醜状
これは傷痕とは若干異なる話にはなりますが、後遺症として残存した顔面神経麻痺によって現れた「口のゆがみ」については、単なる醜状として第12級14号が認定されます。
顔の傷が残存した場合の損害賠償請求について
顔に傷痕が残存したケースにおける損害賠償請求について、注意すべき点を解説いたします。
⑴治療費
前述のとおり、相手方保険会社が一括対応をしている場合や、人身傷害保険が治療費対応を行っている場合には、顔の傷痕に関する美容外科の専門的治療については対応を渋る可能性があります。そのような場合には、保険会社に対して治療の必要性・相当性を証明する必要があります。主治医の意見や診断書等を求められることがあるため、注意しましょう。
また、保険会社が対応しなかった場合において自費でこれらの治療を行い、のちに自己負担分の治療費を請求した時にも、保険会社が治療の必要性・相当性について否定し、当該部分の治療費の支払を拒否するケースがあります。この場合にも、主治医の意見等でその必要性等を示すことが求められる可能性があります。
⑵後遺症の逸失利益
通常、後遺症が残存し、自賠責によって等級が認定された場合には、後遺症の逸失利益を請求することができます。
ただし、醜状障害については、逸失利益の発生について争いが生じるケースがよく見られます。後遺症逸失利益は、交通事故がなかった場合に想定される利益状態と交通事故があった場合の利益状態との差であるという考え方(差額説)に基づくものですが、醜状障害の場合、身体機能や能力喪失をもたらすものではないため、ただちの減収なども観念しがたいために、逸失利益の発生が否定されうるのです。事実、可動域制限による機能障害や、疼痛やしびれなどの神経症状と比べると、醜状障害が労働能力喪失に直結することは考え難いところがあります。それゆえ、俳優やホステス等のような外貌が重要な要素となる職業の場合を除き、相手方保険会社に損害賠償請求した場合にも否定されることがあります(一方で、外貌が重要な要素となる職業の場合には、醜状それ自体が就労上の支障となり減収に結びつくことについて想定されるため、逸失利益が認められる傾向にあります)。
後遺症逸失利益が否定された場合、醜状障害が残ったことによる就労状況や労働における支障等をつぶさに検討し、労働能力の喪失や制限があることを示し、逸失利益が発生することについて立証していく必要があります。裁判官講演において「通常の就労者は、職業により程度の差こそあれ、他者との直接的接触・交流の中で就労しているものであるから、醜状障害が円滑な対人関係を構築し、円滑な意思疎通を実現する上での阻害要因になる可能性も容易に理解され、これこそ醜状障害によって喪失する労働能力の実質と考えることができる」との見解が述べられ、また近時の裁判例では接客が業務の中心又は重要な部分を占める業種(生命保険外交員、百貨店勤務、フィットネスジムインストラクター等)につき逸失利益を認めたものもみられていることから、醜状障害によるこうした労働能力の制限について立証することは非常に重要となります。
⑶弁護士の活用で得られるメリット
交通事故による治療や傷痕に関する補償を適切に受けるためには、専門的な知識が必要です。弁護士を活用することで、後遺障害等級認定の申請手続きや、示談交渉をスムーズに進めることが可能になります。また、慰謝料についても自賠責基準や保険会社の提示額よりも高額な補償を得られる可能性があります。特に、美容整形や特殊な治療が必要な場合や、後遺症逸失利益の発生については弁護士が医療機関や保険会社への説明を代行し、依頼者に適した結果を導くことが期待されます。
おわりに

本稿では、交通事故で負った顔の傷と損害賠償請求の関係について解説いたしました。
弁護士法人小杉法律事務所では、被害者専門・後遺障害専門の弁護士が無料で法律相談を行っております。
交通事故により醜状障害を残し、後遺障害等級や損害賠償請求のこと等でお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士法人小杉法律事務所の無料相談をお受けください。
また、小杉法律事務所では顔の傷に関する後遺障害や損害賠償請求の解決実績もございます。詳しくは下記リンクをご覧ください。
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