交通事故コラム

自転車事故 過失割合

自転車事故の過失割合を交通事故被害者側専門弁護士が解説!

2025.01.11

過失割合

このページでは、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士が、

  • 自転車事故における過失割合とは
  • 類型別の過失割合の考え方
  • 例外的事例
  • 弁護士に相談するメリット

等について解説します。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側の損害賠償請求を専門とする弁護士による交通事故解決サポートを行っております。

自転車事故に遭い、過失割合についてお困りの方はぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による自転車事故解決サポートの詳細についてはこちら。

 

自転車事故における過失割合とは

過失割合とは、事故の責任を当事者間でどの程度分け合うのかを示す割合のことです。

 

民法では「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定されています(民法第722条2項)。

これを「過失相殺」といい、過失相殺によって定められた被害者及び加害者の過失の割合を「過失割合」といいます。

過失割合は、原則として、東京地裁民事交通訴訟研究会編別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂5版)という文献をもとに判断されます。

 

決定された過失割合が被害者10:加害者90となったような場合には、

被害者は発生した損害のうち90%を加害者に請求することができるということになります。

 

自転車は道路交通法において「車両」として分類されるため、自転車運転者にも交通ルールを守る義務が課されていますが、

ここから先は自転車運転中の方が被害者となる場合に絞って解説を進めていきます(自転車運転中に歩行者を怪我させてしまうような場合を除きます。)。

 

過失割合の基本的な考え方

交通事故の過失割合は「基本過失割合」と「修正要素」の2つの要素から成り立っています。

 

基本過失割合は、過去の判例や交通ルールに基づく一般的な基準として設定されています。

先述の『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)』では、【338】の類型が用意されています。

 

一方、修正要素は、事故の具体的な条件や状況に応じて基本過失割合に加減を行うものです。

 

たとえば、自転車が信号のある交差点に青信号で進入し、自動車が赤信号で衝突した場合には、

【235】図に該当し、自転車の過失は0%、自動車の過失は100%が基本過失割合ということになります。

 

ただし、自転車の運転手が「酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘を差すなどしてされた片手運転、脇見運転等の著しい前方不注視、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転する等」の危険な運転を行っていたような場合には、

修正要素:「自転車の著しい過失」に該当し、自転車の過失が5不利に修正され、自転車の過失が5%、自動車の過失が95%となります。

 

このように、基本過失割合と修正要素をどちらも考慮したうえで最終的な過失割合が決定されます。

 

自転車事故の類型とポイント

自転車事故(自転車運転手が被害者となるような場合)の類型は大きく分けて9つとされています。

  • 交差点における直進車両同士の出会い頭事故
  • 交差点における右折車輛と直進車両との事故
  • 交差点における左折車両と直進車両との事故
  • 横断歩道又は自転車横断帯進行の自転車の事故
  • 道路外出入車両と直進車両との事故
  • センターオーバー事故
  • 進路変更に伴う事故
  • Uターン車両と直進車両の事故
  • 交差点以外における横断自転車の事故

 

各類型の過失割合の考え方については以下のページでまとめておりますのでよろしければご覧ください。

 

自転車の過失修正要素とは?

先ほども少し出てきたように、自転車事故の過失割合を決める際にはさまざまな修正要素が考慮されます。

自転車側の過失を重くさせる修正要素としては以下のようなものがあります。

  • 夜間であった
  • 自転車が右側を通行していた
  • 自転車に著しい過失(酒気帯び運転、2人乗り、無灯火、並進、傘を差すなどしてされた片手運転、脇見運転等の著しい前方不注視、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転する等)があった
  • 自転車に重過失(酒酔い運転、制動装置不良等)があった。

 

自転車側の過失を軽くさせる修正要素としては以下のようなものがあります。

  • 自転車が自転車横断帯や横断歩道を通行していた

 

また、過失割合は相対的なものですから、単車や四輪車側の過失を重くさせる修正要素によって結果的に自転車側の過失割合が軽くなる場合もあります。

 

さらに、自転車の運転手が児童や高齢者であった場合には別途修正がされたり、

自転車の速度が概ね時速10㎞以下のような場合には歩行者VS単車・四輪車の過失割合を参考にしたり、

逆に時速30㎞程度の速度であった場合には単車VS四輪車の過失割合を参考にすることもあります。

 

どの修正要素がどの類型で用いられ、どの程度過失割合を修正する重みがあるかどうかは類型によって様々です。

そのため、過失修正要素を正しく分析し公平な過失割合を設定するには、交通事故に詳しい弁護士の助けが重要となるケースもあります。

 

自転車同士の事故におけるポイント

『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)』の全【338】の類型の中に、自転車同士の事故について規定した類型はありません。

 

したがって自転車同士の事故の過失割合は、当時の事故態様の記録をみながら、過去の裁判例をもとに検討を進めていくしかないわけですが、

公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会が2014年2月に公表している

「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」を参考にすることができます。

 

この試案では、自転車同士の事故を、

  • 直進進行中の自転車と交差方向から進行してきた自転車同士の事故
  • 対向方向に進行する自転車同士の事故
  • 同一方向に進行する自転車同士の事故

の3つの類型に大別したうえで、

 

どの類型にも共通する修正要素として、

  • 児童・高齢者
  • 著しい過失と重過失(片手運転、携帯電話の通話や操作、イヤホン・ヘッドホンを付けながらの運転、二人乗り、大きな荷物や車体から大きくはみ出る荷物等の積載、著しい前方不注視、酒気帯び運転、酒酔い運転、制御装置不良)

が挙げられています。

 

また、各類型独自の修正要素として、

  • 高速度進入、著しい高速度進入
  • 夜間無灯火
  • 先行車のふらつき
  • 先行車の避譲義務違反
  • 並走後の先行車の過失・後続車の減速
  • 追抜危険場所
  • 側方間隔不十分
  • 生活道路
  • 先行車合図あり

を挙げており、類型により用いることとしています。

 

試案段階であるため『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)』ほどの通用力があるわけではないですが、

一旦の過失割合を検討する上では非常に有用といえるでしょう。

 

損害賠償における過失の修正:ヘルメット着用の有無

ところで、ここまで見てきた過失割合というのは「事故発生」に対する過失割合です。

 

民事の損害賠償請求における過失というのは、「事故発生」に寄与したというだけでなく、「被害拡大」に寄与した過失も認定される場合があります。

ここで問題になるのがヘルメット着用についてです。

 

令和5年4月1日に施工された改正道路交通法では、自転車乗車中のヘルメットの着用が努力義務化されました。

現在の判例の傾向では、努力義務化されたから即ちヘルメットを着用していない際の事故で受傷した場合に被害発生に寄与したとして被害者の過失を認定しているわけではなく、

実際のところ一般社会に自転車運転中にヘルメットを着用することが浸透しているかどうかを重視しているように思われます。

 

しかし、ロードバイクのような比較的高速度での走行が可能な自転車については、

一般社会に自転車運転中にヘルメットを着用していることが浸透していると言えるため、

ヘルメット未着用が被害者側の過失として認定された判例もあります(東京地方裁判所令和4年8月22日判決)。

 

直近でヘルメット着用の有無が大きな問題になるということは、社会情勢から鑑みてもなさそうですが、

少し頭に入れておいた方が良いかもしれません。

 

事故後の対応と専門家への相談の重要性

事故の記録をしっかり残すポイント

交通事故が発生した際、特に自転車事故では、その場での正確な記録が非常に重要です。

自転車事故はドライブレコーダーなどが無いことも多いため、事故発生時の正確な記録が残らないことがあります。

 

まずは、交通事故の現場写真を撮影し、事故状況を詳細に記録することを心掛けてください。

交差点での発生や歩道からの進入など、事故の発生場所や状況を具体的に記録することで、過失割合の判断に役立ちます。

 

また、警察への通報も必須です。警察の現場確認が行われない場合、後にトラブルとなる可能性が高まります。

加えて、目撃者がいる場合は連絡先を共有しておくと、後の話し合いで大きな助けとなるでしょう。

 

専門弁護士に相談することで得られるメリット

交通事故、特に自転車事故において正確な過失割合を主張するためには、専門弁護士への相談が大きな助けになります。

交通事故に精通した弁護士は、法的な知識を基に適切な過失割合を提示し、示談や裁判を有利に進めるサポートをしてくれます。

さらに、専門弁護士に依頼することで心理的な負担が軽減され、被害者が治療や日常生活の復旧に集中できるというメリットもあります。

 

弁護士法人小杉法律事務所では、交通事故被害者側損害賠償請求専門弁護士による交通事故解決サポートを行っております。

自転車で事故をされた被害者の方やそのご家族の方は、ぜひ一度弁護士法人小杉法律事務所にお問い合わせください。

 

交通事故被害者和が損害賠償請求専門弁護士との初回無料の法律相談の流れについてはこちら。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。日本弁護士連合会業務改革委員会監事、(公財)日弁連交通事故相談センター研究研修委員会青本編集部会。