裁判 追突 腰・胸 手・手指 首 むち打ち・捻挫等 会社員 慰謝料 14級 その他分類
【右手首捻挫・むち打ち】【共同不法行為】2つの交通事故に遭い、かたや腰椎捻挫と頚椎捻挫、かたや腰椎捻挫と手首捻挫の後遺症を残した事案で、自賠責保険は共同不法行為の認定をしたが、裁判によりそれぞれの加害者から14級の賠償額を獲得した事例
Hさん 40代・男性・会社員
【右手首捻挫・むち打ち】【共同不法行為】2つの交通事故に遭い、かたや腰椎捻挫と頚椎捻挫、かたや腰椎捻挫と手首捻挫の後遺症を残した事案で、自賠責保険は共同不法行為の認定をしたが、裁判によりそれぞれの加害者から14級の賠償額を獲得した事例
解決事例のポイント
① 2つの交通事故被害に遭ってしまった方について、自賠責保険は共同不法行為であるとして1つの損害賠償請求と捉えたのに対し、裁判によって、2つ分の損害賠償金を獲得した
② 逸失利益について、後遺障害等級14級の一般的な労働能力喪失期間である5年よりも長い7年の認定を獲得した
③ 後遺症慰謝料について、後遺障害等級14級の裁判基準である110万円の1.5倍の165万円を獲得した
④ 通院慰謝料について、むち打ちの基準ではなく、より高い骨折などの基準での算定額を獲得した
法律相談前
Hさんは40代男性会社員です。
11月に交通事故に遭い、首と腰を痛めてしまい、整形外科に通うことになります。
ところが、翌月、その通院の際にも交通事故に遭ってしまい、さらに腰を痛めることになり、また右手首の捻挫を新たにしてしまいます。
このように1つの交通事故の治療期間中に新たに交通事故に遭った場合、保険会社業界の運用としては、第2事故までに発生した損害は第1事故の保険会社が支払い、第2事故以降に発生した損害は第2事故の保険会社が支払うという運用がなされています。
Hさんは、その後も治療を続けましたが、第1事故で痛めた首の症状、第2事故で痛めた右手首の症状、第1事故・第2事故両方で痛めた腰の症状それぞれ完治することがなかったため、後遺障害等級の申請を行うことになりました。
この申請を受けた自賠責保険会社は、Hさんの後遺障害を第1事故と第2事故の共同不法行為と捉えた上で、後遺障害等級併合14級という認定をしました。
この認定結果を受けて、第2事故の保険会社は、示談金として約200万円の提案をしてきました。
Hさんは、この金額が妥当なのかどうかわからなかったため、弁護士に相談することにしました。
法律相談
率直に、保険会社の示談提案は金額が低すぎると回答しました。
そもそも1つの交通事故として捉えた場合であっても、後遺障害等級14級で200万円というのは金額が低いですし、また、Hさんは2つの交通事故に遭っていますから、素直に考えれば、2つ分の後遺障害等級14級の損害賠償額が得られなければいけません。
つまり2倍の損害賠償額が支払われるのが理論的ということになります。
Hさんの件で、最も不可解なのが、共同不法行為とされていて、それがために損害賠償の対応をするのが第2事故の保険会社のみという点です(注:第2事故発生までの1か月間の損害賠償は第1事故の保険会社からなされますが、それ以上はなされないという意味です。)。
共同不法行為とされた理由について考察してみると、第1事故でも第2事故でも腰椎捻挫の傷病名が付いていることが原因でした。
これは変な話で、例えば、第1事故が頚椎捻挫、第2事故が右手首捻挫であったケースで考えると、それぞれ別の部位をケガしていますので、頚椎捻挫の損害賠償については第1事故の保険会社から支払われ、右手首捻挫の損害賠償については第2事故の保険会社から支払われることになります。
しかし、Hさんのケースは、これらに加えて、第1事故でも第2事故でも腰椎捻挫という共通の傷病名が加わっています。
これがために共同不法行為であるとされて、第2事故の保険会社のみから損害賠償の提案がなされるというのは、腰椎捻挫という傷病名が加わったために損をするという話になってしまいます。
従いまして、Hさんには、損害賠償額が低すぎるという話をしました。
示談交渉の決裂―第1事故の保険会社は1か月分の損害賠償しか払わない―
Hさんから依頼を受け、さっそく示談交渉に入りました。
第2事故の保険会社からは約200万円の示談提案を受けていましたが、法的根拠を付けて示談交渉したところ、300万円弱まで損害賠償金を挙げることができました。
ところが、第1事故の保険会社は、第2事故発生までの1か月間の損害賠償しか払わないという見解で変わらなかったため、Hさんと相談の上、裁判をすることにしました。
民事裁判 横浜地方裁判所第6民事部(交通部)
裁判でも、腰椎捻挫がなければ、それぞれの保険会社から、慰謝料や逸失利益の獲得ができたのに、腰椎捻挫が加わったことによって1つの交通事故分の損害賠償金しか得られないのはおかしいという主張を展開しました。
この点については、横浜地方裁判所の交通部の裁判官も理解を示してくれ、結果、裁判基準以上の逸失利益や慰謝料を認めることによって、2つ分の交通事故の損害賠償金を得られるよう調整をしてくれました。
結果、合計700万円強の損害賠償金で裁判上の和解をすることができました。
弁護士小杉晴洋のコメント:共同不法行為の解決は難しいので、被害者側専門の弁護士に依頼されることをおすすめします
共同不法行為というのは、扱いが非常に難しくなっていて、これを理解している保険会社の担当者というのはいません。
理解していないとどうなるかというと、マニュアル通りにしか動けないということになります。
従いしまして、交通事故の治療期間中に再度交通事故に遭ってしまった場合、2つの交通事故被害に遭っているのに、1つの交通事故被害と同額か、ほとんど変わらない金額での示談を迫られます。
この不合理な結論を打開するには、被害者側専門の弁護士に依頼をしてしまうのが、もっとも効果的です。
Hさんのケースでも、保険会社の示談提案の約3倍まで金額を上げることができました。
複数の交通事故に遭った方については、特に保険会社の見解を鵜呑みにせず、被害者側専門の弁護士に依頼することをおすすめします。