後遺障害等級の解説

骨折 上肢 神経症状

上腕骨骨幹部骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)

この記事では、二の腕にある上腕骨の骨幹部の骨折について整理しています。

上腕骨骨幹部とは

上腕骨の位置

上腕骨は、鎖骨、肩甲骨とともに肩関節を構成する骨格の一つです。肩関節と肘関節の間をつなぐ、二の腕部分の長管骨になります。

上腕骨骨幹部とは、その中央の部分にあたります。

上腕骨骨折一般についてはこちらの記事で整理しています。

どのような場合に上腕骨骨幹部は骨折するか

直達外力による場合のほか、投球や腕相撲による捻転力で螺旋骨折を生じる場合があります。

上腕骨骨幹部骨折に合併しうる他の傷害

橈骨神経麻痺

橈骨神経は、腕橈骨筋の内側(上腕部外側)を下行し、浅枝(感覚枝)と深枝(運動枝)に分岐し、深枝は回外筋の浅層と深層の間を走行し前腕部背側にでて後骨間神経と名前を変えます。

上腕部を受傷して上腕骨骨幹部骨折になった場合、骨折態様によっては上腕部の橈骨神経を損傷してしまう可能性があり、下垂手の症状が発生することがあります。

橈骨神経麻痺の詳細についてはこちらの記事で整理しております。

上腕骨骨幹部骨折の症状にはどのようなものがあるか

骨折部分の痛み等

骨折部位に痛み等の神経症状が残存する可能性があります。

また、橈骨神経麻痺を合併した場合、下垂手の症状が発生する可能性があります。

下垂手とは、手関節と指のMP関節の伸展ができず、手が下垂した状態のことを言います。橈骨神経の高位麻痺(上腕部での障害)で生じ、腕橈骨筋の麻痺と手背の感覚障害が発生します。

変形障害

骨折部に癒合不全がある場合、偽関節等の変形障害が発生する可能性があります。

ただ、上腕骨骨幹部骨折は開放性骨折が少なく軟部組織に包まれ良好な血行があるため、骨癒合が得られやすい部位だと言われており、症状固定時に変形障害が存存する可能性は一般には低いのかもしれません。

上腕骨骨幹部骨折後に認定されうる後遺障害等級

認定可能性のある後遺障害等級

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。

神経症状

別表第二第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
別表第二第14級9号 局部に神経症状を残すもの

なお、橈骨神経麻痺を合併して下垂手の症状が残存した場合、末梢神経損傷による後遺障害として、手関節の機能障害に係わる等級が適用されます。その場合に認定可能性のあるものは次の通りです。

別表第二第8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
別表第二第10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
別表第二第12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

変形障害

別表第二第7級9号 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
別表第二第8級8号 1上肢に偽関節を残すもの
別表第二第12級8号 長管骨に変形を残すもの

検査方法

単純X線像によって骨折の位置と転位の程度を判断します。

橈骨神経麻痺を疑う場合、筋電図検査や神経伝導検査を行うべきかどうか、主治医と相談しましょう。

弁護士に相談を

交通事故等で上腕骨骨幹部骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、上腕骨骨幹部骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士への無料相談を是非ご利用ください。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。