骨折 上肢 神経症状
橈骨骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
橈骨骨折について
前腕部には橈骨と尺骨という2本の長管骨がありますが、この記事では橈骨の骨幹部(中央付近)の骨折(橈骨骨幹部骨折)について記載します。
橈骨の遠位部(体から遠い部分)骨折(橈骨遠位端骨折)はコレス骨折、スミス骨折、AO分類等で区別されます。
→橈骨遠位端骨折の分類や治療方針等の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
→橈骨の近位部(体から近い部分)骨折の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
→前腕部の構造や骨折の種類についての詳細はこちらをご覧ください。
橈骨骨幹部骨折はどのような場合に受傷するか
橈骨のみに直達外力が加わることは稀で、介達外力(外力が加わった部位から離れた位置に生じる)によって生じ、多くは斜骨折や螺旋骨折になると言われています。
橈骨骨幹部骨折の症状はどのようなものか
局所の変形は少ないですが、骨折部に腫脹と疼痛があり、前腕を他動的に回旋すると疼痛が強くなります。
尺骨が支柱となるために、保存療法が選択されることが多いと言われています。不安定性の悪い症例ではプレートなどによる内固定を行います。
橈骨骨幹部骨折後の後遺障害にはどのようなものがあるか
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害等級として、以下のようなものが予想されます。
神経症状(痛みやしびれ等)
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
なお、橈骨骨幹部骨折は関節部の骨折ではありませんので、骨折部位に痛み等の症状が残存しても、12級が認定される可能性は少ないものと思われます。
機能障害(動かしにくさ、可動域制限)
前腕部の回内・回外運動で機能障害が残存する可能性があります。
健側の1/4以下に制限されているものを著しい機能障害に準じて別表第二第10級相当、健側の1/2以下に制限されているものを単なる機能障害に準じて別表第二第12級相当が認定されます。
変形障害
以下のように区分されますが、橈骨含む前腕骨の場合、橈骨と尺骨の両方なのか片方だけでいいのか、ゆ合不全の位置はどこならいいのかなど、基準が大変ややこしくなっております。ご留意ください。
別表第二第7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
別表第二第8級8号 | 1上肢に偽関節を残すもの |
別表第二第12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
別表第二第7級9号にある「1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、橈骨に関連していえば、前腕骨の両方、すなわち橈骨および尺骨の両方の骨幹部等(骨幹部または骨幹端部)にゆ合不全を残す場合であって、常に硬性補装具を必要とするものがこれに該当します。
別表第二第8級8号の「1上肢に偽関節を残すもの」とは、橈骨に関連して整理すると、橈骨および尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので前述の「常に硬性補装具を必要とするもの」以外のもの、そして、橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので時々硬性補装具を必要とするものがこれに該当します。
一般に、骨折等による骨片間のゆ合機転が止まって異常可動を示す状態を「偽関節」といいますが、自賠責保険での認定基準上は、カパンジー法による尺骨の一部離断を含め、骨片間のゆ合機転が止まって異常可動を示す状態を「ゆ合不全」と表現し、長管骨の保持性や支持性への影響の程度に応じて等級を認定することとされています。
ゆ合不全の判定にあたっては、できるだけ複数の方向から撮影したエックス線写真を取り付ける必要があります。これは、ゆ合不全の場合、エックス線写真を撮る方向によっては、骨折面が影になってしまい、ゆ合不全があっても骨ゆ合しているように見えることがあるからです。
別表第二第12級8号の「長管骨に変形を残すもの」には、自賠責保険での認定基準上、六つの基準が定められていますが、橈骨骨折に関連するのは以下の4つです。なお、同一の長管骨に複数の変形障害を残す場合でも、第12級8号とされてしまいます。
「長管骨に変形を残すもの」の一つ目は、橈骨関連では、橈骨および尺骨の両方に変形を残すもので、その変形が外部から見てもわかる程度以上のものです。
具体的には、15度以上屈曲して不正ゆ合したものがこれに該当します。また、橈骨または尺骨のいずれか一方のみの変形でも、その程度が著しく、外部から見てもわかる場合は、別表第二第12級8号として認定することができるとされています。
しかし、長管骨の骨折部が正しい方向にゆ合している場合には、たとえその部位に骨肥厚があったとしても、長管骨の変形とは認められません。
「長管骨に変形を残すもの」の二つ目は、橈骨または尺骨の骨端部にゆ合不全を残すものです。
「長管骨に変形を残すもの」の三つ目は、上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部のほとんどを欠損したものです。
この場合、骨端部の欠損は一部でなく、そのほとんどが欠損した場合が該当します。なお、回内・回外を改善するために尺骨の遠位端を切除する手術法としてダラー法がありますが、これも骨端部のほとんどを欠損したものに該当します。
「長管骨に変形を残すもの」の四つ目は、橈骨もしくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したものです。
検査方法
X線検査は必須です。症状固定時の骨折部位の状態が等級獲得に影響するかもしれませんので、そのような観点からは、場合によってはCT画像の撮影を検討すべきでしょう。
弁護士への相談をお勧めします
交通事故等で橈骨骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、橈骨骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士へ是非ご相談ください。