骨折 上肢 神経症状
肘の骨折(弁護士法人小杉法律事務所監修)
肘関節の構造
こちらは、右上肢を正面から見た場合の図です。手のひらをこちらに向けて、親指は体の外側にあります。
肘関節は上肢の3大関節の一つです。
肘関節の骨性構造
肘関節は上腕骨の遠位端(体から遠い)と、前腕部の尺骨及び橈骨近位端(体に近い)から構成されます。
尺骨の肘関節に近いところを肘頭(ちゅうとう)と言います。
肘関節の靱帯
尺側(上の図では前腕部の右側)には内側側副靱帯、撓側(上の図では前腕部の左側)には外側側副靱帯があります。
肘部の骨折の種類
(標準整形外科学第15版(医学書院)、800~803頁)
上腕骨遠位部骨折
青・壮年層ではしばしば高エネルギー外傷によって肘関節面の粉砕を伴い、骨粗鬆症のある高齢者では転倒などの軽微な外傷で発生し上腕骨通顆骨折を呈する場合が多いと言われています。
また、上腕骨課上骨折は、転倒または高所からの転落の際に肘を伸ばした状態で手をついて生じることが多い骨折です。
→上腕部の骨折(一般)についてはこちらの記事をご覧ください。
肘頭骨折
肘頭部への直達外力によって生じる(外力の加わった部位に骨折が生じる)ことが多いですが、上腕三頭筋の牽引力など介達外力によって生じる(外力が加わった部位から離れた部位に骨折が生じる)ものもあります。
骨折型は直達外力によるものでは圧座・粉砕骨折となり、介達外力によるものでは剥離・横骨折になることが多いです。
橈骨近位端骨折
橈骨頭および橈骨頚部骨折があります。
転倒し、肘関節伸展位(関節を広げる方向)で手をついて受傷することが多いと言われています。
→橈骨の骨折(一般)についてはこちらの記事で整理しております。
肘部の骨折で生じる症状はどのようなものか
骨折部位に痛み等の神経症状が生じる場合や、可動域制限等の機能障害が生じる場合があります。
肘関節骨折後に可動域測定を行う場合、肘関節だけではなく、前腕の回内・回外運動についても検査することをお勧めします。
靱帯損傷が生じた場合等、動揺関節(正常では存在しない異常な関節運動が生じている関節)になる可能性があります。
肘部の骨折後に認定されうる後遺障害等級
認定される可能性のある後遺障害
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のものが認定されることがあります。
神経症状
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
別表第二第8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
別表第二第10級10号 | ・1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第12級6号 | ・1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの ・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
なお、回内・回外の機能障害の認定にあたっては、健側の1/4以下に制限されているものを著しい機能障害に準じて別表第二第10級相当、健側の1/2以下に制限されているものを単なる機能障害に準じて別表第二第12級相当が認定されます。
※「関節の用を廃したもの」とは、関節が完全強直または完全強直に近い状態となったもの、関節の完全弛緩性麻痺または完全弛緩性麻痺に近い状態になったものを言います。
「完全強直」したものとは、関節の可動域が全くないものをいい、「完全強直に近い状態」になったものとは、原則として、健側の関節可動域の10%程度以下に制限されているものをいいます。
この「10%程度」とは、健側の関節可動域の10%に相当する角度を5度単位で切り上げて計算されます。
なお、関節可動域が10度以下に制限されている場合は全て「これに近い状態」として取り扱われます。
検査方法
骨折について
単純X線検査により可能です。骨折型や関節面の評価のためCT検査を行うこともあります。
肘部の靱帯損傷について
肘部の靱帯損傷の画像検査では、MRI検査や超音波検査が有用だと言われています。
徒手検査としては内外反ストレステスト等の検査があります。
弁護士に法律相談を
交通事故等で肘部の骨折を受傷した場合、加害者に対しての損害賠償請求を適切に行うために、肘部の骨折の受傷態様や残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集する必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士に是非ご相談ください。