靭帯損傷/断裂 下肢 神経症状
後十字靭帯損傷について(弁護士法人小杉法律事務所監修)
膝の構造
このイラストは右ひざを正面からみたときのものです。腓骨が向かって左側、脛骨が右側にあります。
膝関節は、大腿骨、脛骨(けいこつ)、および膝蓋骨(しつがいこつ)からなる関節で、人体で最も大きな関節です。
膝関節の安定性は、関節面形状自体ではなく、半月板、靱帯を中心とした軟部組織に頼っています。
膝の靱帯の主なものは、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)、後十字靭帯(こうじゅうじじんたい)、内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)、外側側副靱帯(がいそくそくふくじんたい)の4つです。
この記事では後十字靭帯の損傷についての説明をしています。
後十字靭帯とは
後十字靭帯は大腿骨内側顆の顆間窩面前方部及び脛骨後縁中央部に付着します。大腿骨に対する脛骨の後方制動を担っています。
後十字靭帯損傷を受傷する原因とは
交通事故やスポーツ外傷などで、膝関節屈曲位で脛骨前方に強い直達外力が加わった際に受傷することが多いです。
車の追突事故では膝屈曲位で膝前下方を打撲して受傷することがあります(ダッシュボード損傷)。
懸念される合併症
高エネルギー外傷の場合は、他の靱帯損傷や神経血管損傷、軟骨・半月板損傷、骨折などを合併することがあります。
後十字靭帯損傷の症状
疼痛等の症状が考えられます。
症状は前十字靭帯損傷に比べると軽度であることが多いです。後方不安定性が強い症例では、階段昇降やしゃがみ込み時に不安定感などの訴えが見られます。
後十字靭帯損傷の診断・検査
後方引き出しテスト
膝90°屈曲位で足部を検者の臀部で軽く固定し、脛骨近位部を後方に押して後方移動量を評価します。
単純X線像
靱帯付着部の剥離骨折の診断には有利です。
ストレスX線像
後方移動量の評価に有用です。屈曲90度において脛骨を後方に押し込む力を加えて側面像を撮影します。
MRI検査
靱帯実質部および付着部での損傷の診断に有用です。
脂肪抑制を併用したT2強調像、T2*強調像、プロトン強調像が有用です。
後十字靭帯損傷の治療
後十字靭帯損傷の機能的予後は比較的良好なことにより、大腿四頭筋訓練、装具などによる保存療法が第一選択となります。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、688頁)
後十字靭帯損傷の手術
保存療法を行っても高度の後方不安定性が残存する場合、または不安定感のためにスポーツ活動や日常生活が障害される場合などには再建術の適応となります。
(標準整形外科学第15版(医学書院)、688頁)
後十字靭帯損傷後に認定されうる後遺障害等級
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
受傷部位に痛み等が残存する場合に認定可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
後十字靱帯損傷の影響で膝関節の可動域に制限が出た場合、8級、10級、12級の等級が認定される可能性があります。
靱帯損傷により動揺関節になった場合、8級、10級、12級での認定可能性があります。
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→以下の2つのうちいずれか。 ・関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの ・常に硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの ・時々硬性補装具を必要とするもの(動揺関節の場合) |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→以下の2つのうちいずれか ・患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの ・重激な労働などの際以外には硬性補装具を必要としないもの(動揺関節の場合) |
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交通事故等の外傷で後十字靭帯断裂を受傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、靱帯断裂の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。