靭帯損傷/断裂 上肢 神経症状
指の腱の断裂と後遺症(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事ではでは手指の腱の断裂・損傷について整理しています。
手指の腱断裂・損傷について
指屈筋腱損傷
手指を握る動作(屈曲)に関連する腱(指屈筋腱)の損傷です。指の屈曲運動に障害がでます。
鋭利な刃物などによる開放性損傷と、開放創のない状態での閉鎖性損傷(皮下断裂)があります。
閉鎖性損傷のうち外傷性のものとしては、ドアなどに挟むことによる圧座や骨折後などに生じるものなどがあります。
指伸筋腱損傷
手指を伸ばす動作(伸展)に関連する腱(指伸筋腱)の損傷です。指の伸展運動に障害が出ます。
手指を伸展した状態で過屈曲が強制される等の原因で生じます。
→伸筋腱損傷の1つであるマレットフィンガー(槌指)についてはこちらの記事をご覧ください。
検査
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、518頁)
単純X線
開放性損傷の場合は、骨折の有無を確認します。
閉鎖性損傷の場合は、断裂を想定する部位の骨棘の有無などを確認します。
エコー(超音波診断装置)
腱の描出に優れていますので、まず行われるべき検査です。
開放性損傷では腱断裂の近位・遠位断端の位置を確認します。
MRI、CT
エコー検査で確定できない場合に補助検査として選択します。
MRI検査で断端が不明瞭な場合、3D-CTで腱を描出させると腱の断裂部位、近位・遠位断端が描出されることもあります。
認定されうる後遺障害は
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
損傷部位に痛み等の症状が残存した場合、認定される可能性があります。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
腱の損傷が原因で指の関節に動きにくさが残存した場合、認定される可能性があります。
どの関節に動きにくさが出ているかが等級を予測するうえで重要です。
別表第二第4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
別表第二第7級7号 | 1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの |
別表第二第8級4号 | 1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの |
別表第二第9級13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの |
別表第二第10級7号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの |
別表第二第12級10号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの |
別表第二第13級6号 | 1手のこ指の用を廃したもの |
別表第二第14級7号 | 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
「手指の用を廃したもの」とは、おや指では中手指節関節(MP関節)または指節間関節(IP関節)、他の四本の指では、中手指節関節(MP関節)または近位指節間関節(PIP関節)に著しい運動障害を残すものも、「手指の用を廃したもの」として取り扱います。著しい運動障害を残すものとは、患側の関節可動域が健側の1/2以下になったものをいいます。
おや指では、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下になったものも「著しい運動障害を残すもの」として取り扱います。
「遠位指節間関節を屈伸することができないもの」とは、遠位指節間関節(DIP関節)が強直したものをいいます。また、屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるものもこれに該当します。
弁護士に相談を
交通事故等の外傷で手指の腱に受傷して後遺症が残った場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、損傷態様や残存した後遺症についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。