下肢 神経症状
脛骨神経(弁護士法人小杉法律事務所監修)
本記事では、末梢神経のうち脛骨神経の障害について整理しています。
脛骨神経とは
抹消神経のうち、腰神経L4~5、仙骨神経S1~4は仙骨神経叢を構成します。
仙骨神経叢のうちL4~S3で構成されるのが坐骨神経です。
坐骨神経が膝裏の少し上で総腓骨神経と分岐し、脛骨神経になります。
脛骨神経麻痺とは
脛骨神経は、下腿三頭筋、後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋に分枝を出し、足関節後内方の足根管で踵骨枝を出して最後に内側足底神経と外側足底神経に分岐し、足底の感覚を司ります。足根管とは、足首の内果下方で屈筋支帯と距骨および踵骨で囲まれたトンネルのことを言いますが、脛骨神経が足根管で障害されると足根管症候群が発生します(標準整形外科学第15版(医学書院)、729頁)。
足底のしびれ・疼痛、手根管の圧痛などがみられ、起立や歩行により症状が増悪します。
脛骨神経麻痺の原因は
外傷による腫脹、ギプス固定による圧迫などが原因になりえます。
他方で、ガングリオン、距踵骨癒合症、腱鞘滑膜炎などでも発生し、原因が明らかでない突発性のものもあります(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、884頁)。
認定されうる後遺障害等級は
自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として、以下のようなものが予想されます。
神経症状
疼痛やしびれ等の症状が残存した場合です。
別表第二第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
別表第二第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害
脛骨神経麻痺の場合、足首と足指の機能障害で認定可能性があると考えられます。
抹梢神経麻痺に係る等級の認定は、原則として、損傷を受けた神経の支配する身体各部の器官における機能障害に係る等級を適用し、審査時に参照される可動域は自動値になります(とはいえ、事案にもよりますが、末梢神経損傷の発生を立証しにくいケースも多くありますので、念のため他動時での測定結果も残しておくべきだと考えます。)。
下肢の機能障害
別表第二第8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
→関節が強直したもの、関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの |
別表第二第10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の1/2以下に制限されたもの |
別表第二第12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
→患側の関節可動域が健側の3/4以下に制限されたもの |
足指の機能障害
別表第二第7級11号 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
別表第二第9級15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの |
別表第二第11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
別表第二第12級12号 | 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
別表第二第13級10号 | 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
別表第二第14級8号 | 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
※「足指の用を廃したもの」
足指骨折の場合で整理すると、第1指では中足指節関節(MTP関節)か指節間関節(IP関節)に、第2指~第5指では中足指節関節(MTP関節)か近位指節間関節(PIP関節)に著しい運動障害を残す場合です。「著しい運動障害」とは、患側の運動可動域が健側の1/2以下になったものをいいます。
↓のイラストでは、MTP関節をMP関節と表記しています。
診断・検査
(今日の整形外科治療方針第8版(医学書院)、885頁)
足底、足指に症状がある例では足根管症候群を疑い、足根管部の腫脹・圧痛・腫瘤の有無を調べます。
圧迫部にTinel徴候がみられます。
単純X線検査、超音波、CT、MRIでガングリオンなどの腫瘤性病変、腱鞘の肥厚、骨の異常などを調べます。
まずは保存療法を試みますが、症状の改善が得られない場合は手術を行います。
弁護士に相談を
交通事故や労災事故等で受傷し、脛骨神経を損傷した場合、損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、損傷の部位や態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。