後遺障害等級の解説

下肢

足の切断(事故)(弁護士法人小杉法律事務所監修)

こちらの記事では、交通事故等で足(下肢)を切断した場合の後遺障害や慰謝料等について整理しています。

足の切断についてはこちらの記事でも整理しております。

足の構造

全身骨格

「足」と聞いたときにどこを思いうかべるかは人それぞれですが、一般的には人体の下肢は、大腿、下腿、足に区分されます。

大腿は股関節から膝関節までを指し、骨格としては大腿骨があります。

下腿は膝関節から足関節(足首)までを指し、骨格としては脛骨と腓骨があります。

足は足関節から先を指し、足根骨、中足骨、趾節骨から構成され、リスフラン関節を含みます。

リスフラン関節は前足部の中足骨と中足部の楔状骨、立方骨で構成され、足根中足関節ともいいます。

リスフラン関節の詳細はこちらの記事で整理しております。

足の切断

交通事故や労災事故等で下肢を切断してしまった場合、切断部位がどこかで後遺障害としての評価が変わってきます。

大きく分ければ、下肢の欠損又は機能障害足指の欠損又は機能障害の2種です。

認定されうる後遺障害等級

自賠責保険に関する法令である自動車損害賠償保障法施行令の別表に示される後遺障害として「欠損又は機能障害」に該当し、以下のようなものが予想されます。

下肢(股関節~足首+リスフラン関節)

下肢をひざ関節以上で失ったもの」とは、股関節からひざ関節までの間で切断し失ったものをいい、股関節またはひざ関節において離断したものも含まれます。両下肢をひざ関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第1級5号、1下肢をひざ関節以上で失ったものは別表第二第4級5号です。

下肢を足関節以上で失ったもの」とは、ひざ関節を残し、足関節までの間で切断し失ったものをいい、足関節において離断したものも含まれます。
両下肢を足関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第2級4号、1下肢を足関節以上で失ったものは別表第二第5級5号です。

下肢をリスフラン関節以上で失ったもの」とは、足関節を残し、リスフラン関節までの間で切断し失ったものをいい、リスフラン関節において離断したものも含まれます。両下肢をリスフラン関節以上で失ったものは組み合せ等級で別表第二第4級7号、1下肢をリスフラン関節以上で失ったものは別表第二第7級8号です。

別表第二第1級5号 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
別表第二第2級4号 両下肢を足関節以上で失ったもの
別表第二第4級5号 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
別表第二第4級7号 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
別表第二第5級5号 1下肢を足関節以上で失ったもの
別表第二第7級8号 1足をリスフラン関節以上で失ったもの

足指

足指を失ったもの」とは、原則として中足指節関節(MTP関節)以上を失ったものをいいます。ただし、基節骨の一部を残したとしても、足指を基部(足指の付け根)から失った場合には、「足指を失ったもの」として取り扱います。

足指の用を廃したもの」とは、つぎのうちのいずれかに該当するもののことです。まず、第1指では末節骨の長さの1/2以上、その他の四本の指では、遠位指節間関節(PIP関節(母趾はIP関節))以上を失った場合です。

※上の図では、MTP関節のことをMP関節と記載しています。

別表第二第5級8号 両足の足指の全部を失ったもの
別表第二第7級11号 両足の足指の全部の用を廃したもの
別表第二第8級10号 1足の足指の全部を失ったもの
別表第二第9級14号 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
別表第二第9級15号 1足の足指の全部の用を廃したもの
別表第二第10級9号 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
別表第二第11級9号 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
別表第二第12級11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
別表第二第12級12号 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
別表第二第13級9号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
別表第二第13級10号 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
別表第二第14級8号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

損害賠償請求時の留意点(義足)

下肢を受傷して切断してしまった場合、義足の作成が必要になることがあります。

作成費用はもちろん、義足の耐用年数を考慮したうえで将来の買い替え費用等を忘れずに請求していく必要があります。

慰謝料について

被害者が加害者に請求すべき損害としては、治療費や休業損害、通院交通費や雑費等様々ありますが、慰謝料については計算について一定の目安があります。

増額要因にしても減額要因にしても、事案に応じて修正される可能性がありますので、詳細は弁護士にお問い合わせください。

入通院慰謝料

入院期間と通院期間に応じて、俗にいう赤本の別表Ⅰを基準にして算定されます。

例えば入院2月で通院4月なら165万円、入院4月で通院2月なら210万円、といった計算になります。

(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)2003(令和5年)、208頁)

後遺障害慰謝料

こちらについては後遺障害の認定等級によって目安があります。

(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)2003(令和5年)、212頁)

認定等級 金額
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

弁護士に相談を

交通事故や労災事故等の外傷で足(下肢)を切断してしまうことがあり得ます。慰謝料等の損害賠償請求を加害者側に対し適切に行うために、受傷の態様を把握し、残存した後遺障害についての立証資料を適切に収集していく必要があります。弁護士法人小杉法律事務所の所属弁護士による無料相談を是非ご活用ください。

弁護士法人小杉法律事務所の弁護士による解決事例

【右膝下切断・右手機能障害等】約1億円での示談解決に加え、将来の義足費用の支払いを確約

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。